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「先に失礼しまーす!」

私、三野 莉愛。

会社からいち早く抜け出し、向かう先は・・・・ケーキ屋さん!

今日、新作スイーツが出るんだよねえ。るん!

軽い足取りでケーキ屋さんへ走る。

はあっ、楽しみ。

にやにやしながら走っていると、突然めまいに襲われた。

思わず立ち止まり、電柱につかまる。

「あ・・・れ・・・」

貧血?

私は睡魔のような、そうでないような圧に負けて、目を閉じ、意識を手放してしまった。


「ここ、は・・・」

さきほどのめまいも収まった。

けれど、ここがどこなのかは分からない。

緑の草原が、どこまでも広がっていて、風がそわあそわあと、吹いている。

「やあ」

「!」

草原に現れたのは、男の人。

すらりとしていて、にこりとほほ笑んでいる。

「これはずいぶんとビビるね。まあいいや」

だ、誰・・・

後ずさることはできずに、ただ茫然とその人を見る。

「僕はねー。転生取り扱い責任者」

「はい?」

つい、かぶせるように言う私。

転生、取り扱い、責任者・・・聞いたこともない。

「君は、死んだんだ」

「え?」

「出血死で」

「ええ?」

出血死・・・死んだ?!嘘?!

じ、実感ない・・・

それに・・・新作スイーツ、食べられなかった・・・!!

思いっきり落ち込む。

今回のスイーツ、いつも以上に楽しみにしていたんだ。

クリスマスが近かったこともあり、サンタさんがテーマとなった、赤と緑のデコレーション・・・

食べたかった。すごく食べたかった。

すると、目の前にスッと何かが差し出される。

「それは・・・っ!」

し、し、し・・・新作スイーツー!!!

目をキラキラさせて見ていると、男はにこりと笑う。

「食べたい?」

「はいっ!」

飛びつく勢いで言うと、男はこう言う。

「じゃ、転生してくれるよね?」

「もちろん!」

それで、私は新作スイーツゲットぉぉ!!

うひゃー。たまんない!最高!

そんな私の前に男は座り、形のいい唇からは予想だにしない言葉が漏れる。

「君、めまいがしたでしょ?」

「ふむっ」

ケーキをぱくっとしつつ、うなずく。

「そのあとに、意識を失って」

・・・ふむむ?

「倒れて、頭から出血」

ひいっ!!

そ、それ、今言うことじゃない!!私食べてますよ?!

「で、死んだんだ」

・・・。

「君にはね、頼みたいことがあるんだよ」

「頼みたい・・・こと?」

ケーキを食べる手を、思わず止める。

その拍子に、つかんでいたサンタさんのチョコが皿に落ちた。ごめん。サンタ。

「君は、転生してもらうって言ったでしょ?」

まあ・・・はい。

「悪役に、なってほしいんだ」
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