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第二部

飛び出せ!黒ひげ君

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「これは驚きましたな。わしの知らない魔法がまだあったとは。一体何をされたのですかな? ぜひ、ご教授願いたいものです」

 あら。
 首から下が砂に埋まっているというのに意外と余裕ですね。
 それになんだか興奮していらっしゃる様子。
 失礼かもしれませんが少し気持ち悪いと思ってしまいました。

「なんて顔しているんですか。気持ち悪すぎてびっくりです。全部埋めてしまえばよかったですね」

 ミシェルが嫌悪感を隠すことなく、思うままに言葉にしています。
 どうしてこういうときだけ思ったことを言うのでしょうか。

「これは手厳しい。そこまで素直に言われると、さすがの老体でも傷つくというものです」

「別にあなたを労わる気なんてありませんからね。私は常にお嬢様のみを愛でているのです」

 余計なことは言わなくていいですよー。
 そういうところは自重してください。

「そんなことより、あなたに聞きたいことがあるんです」

「そう言われてわしが答えるとお思いで?」

「いえ、まったく。とりあえず聞くだけです。答えてくださいとは言っていませんからね」

「そんなことって……」と横で嘆いているミシェルを放置し、私はおじいさんとの会話を続けます。
 私の返しに怪訝な表情を浮かべ、何やら考え込んでいるみたいです。

「これは不思議なことをおっしゃるお嬢さんですな。質問するのに解答を求めないとは。それでは魔導士失格ですよ」

「私は魔導士ではないので問題ありません」

「それでもです。知りたいと欲するのは人間の性です。その知識欲を失くしてしまっては人としての成長は叶わないと知りなさい」

「どうしていきなりお説教されているのかわかりませんが、まあ肝に銘じておきましょう。そんな恰好で言われても説得力はありませんが」

「確かにそうですな。そろそろここから出るとしましょう」

 そう言うとおじいさんが砂から飛び出してきた。
 その様子にどこか既視感が。
 一体どこで………………そうです。ミシェルが作った「飛び出せ!黒ひげ君」ですね。
 ミシェルの記憶にあったおもちゃを改良したものです。
 あれの飛び出てくる黒ひげ君そっくりです。
 最近あれやってないですね。今はアリアたちがいるので帰ったらやりましょう。
 きっと楽しいですよ。

「砂に埋まる経験はなかったものですからな。貴重な体験をさせていただきました。そこのメイドさんには感謝をしましょう。それで、わしに聞きたいこととは一体?」

「ああ、そうですね。すっかり忘れてました」

「……お嬢様、さっきのが黒ひげ君に似てるからって思い出していたのだと思いますが、今はそんな場合ではありませんよ。しゃんとしてくださいね」

「わ、わかってますって。だから人の心を読まないでくださいっ」

「ふ、不思議なお嬢さんですな。さすがのわしも長生きですが、お嬢さんのような方は会ったことないですよ」

 そんな私が変な子みたいに言わないでください。
 ただの普通の淑女ですから。
 …………すこーし、動物さんや魔物さんと仲良くなれる、ふつーの淑女なんですからっ!

「あなたに聞きたいのは――――アリアにかけた呪いについてです」







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