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第二章
大切な想い出(2)
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踏み込むたびにギィギィと鳴き声をあげる階段を一歩一歩上っていく。
中一階まで来ると踊り場があり、壁には小さなランプに火が燈されている。そのランプの灯りを頼りに二階まで上がっていくと、短い廊下の先に扉があった。ケルビムはそこを素通りし、踊り場を経由すると三階まで上っていく。
「二階には客室はないの?」
二階で立ち止まり、奥に見える閉ざされた扉を見ながら、上にいるケルビムに声をかけた。
「ええ、今日入れる客室は三階でございます」
「なんだかよくわからないルールね……」
三階へと上がる。奥にある扉は開かれ、ケルビムがアケルを背負い歩いているのが見える。ふと上を見上げると、さらに上に続く階段があった。体を乗り出し上を見上げるがやはり同じような造り。ホテルエデンの北館は四階建てのようだ。
「千里様、こちらですよ」
奥からケルビムが私を呼ぶ。階段踊り場から三階の廊下に入ると、壁一面が本棚になっている。そこに本が並べられ、壁のように見えたのだった。
「すごい量の本ね! オーナーの趣味なの?」
私が訊くと、背中で寝てしまったアケルをゆっくりとベッドに寝かせて、掛け布団を掛けながらケルビムが言った。
「ここは記憶の図書館です。どれでも一冊手に取って開いてみてください。貴女の現在の記憶に関するページが出てくるはずです」
ケルビムに言われ、適当に本を一冊手に取り開いてみる。開かれたページには、私がホテルエデンに来たことが書き記されていた。他のページをめくるとアケルと言う名の少女に出会ったこと。さらに他のページにはアケルと一緒に料理をしたこと。
「すごい! どうなってるの?」
「本の開き手に応じて経験したこと、培った記憶などが読めるものなんです。二階は『過去』の書物、四階は『未来』、そして三階は『現在』の記憶の書物が置いてあるのです」
はぁ! 本当にここは不思議だらけなのね。私は感心して溜め息を漏らす。
「でも、未来の記憶なんてどうやって見るの?」
「なので、四階には入れません。たとえ入れても、おそらく本は真っ白のままでしょう」
ケルビムが笑って答えた。
私はアケルの眠るベッドに体を滑りこませてアケルと一緒に眠った。
「なにかありましたら、わたくし外におりますので、遠慮なくお呼びください」
そう言うとケルビムは部屋を後にした。
中一階まで来ると踊り場があり、壁には小さなランプに火が燈されている。そのランプの灯りを頼りに二階まで上がっていくと、短い廊下の先に扉があった。ケルビムはそこを素通りし、踊り場を経由すると三階まで上っていく。
「二階には客室はないの?」
二階で立ち止まり、奥に見える閉ざされた扉を見ながら、上にいるケルビムに声をかけた。
「ええ、今日入れる客室は三階でございます」
「なんだかよくわからないルールね……」
三階へと上がる。奥にある扉は開かれ、ケルビムがアケルを背負い歩いているのが見える。ふと上を見上げると、さらに上に続く階段があった。体を乗り出し上を見上げるがやはり同じような造り。ホテルエデンの北館は四階建てのようだ。
「千里様、こちらですよ」
奥からケルビムが私を呼ぶ。階段踊り場から三階の廊下に入ると、壁一面が本棚になっている。そこに本が並べられ、壁のように見えたのだった。
「すごい量の本ね! オーナーの趣味なの?」
私が訊くと、背中で寝てしまったアケルをゆっくりとベッドに寝かせて、掛け布団を掛けながらケルビムが言った。
「ここは記憶の図書館です。どれでも一冊手に取って開いてみてください。貴女の現在の記憶に関するページが出てくるはずです」
ケルビムに言われ、適当に本を一冊手に取り開いてみる。開かれたページには、私がホテルエデンに来たことが書き記されていた。他のページをめくるとアケルと言う名の少女に出会ったこと。さらに他のページにはアケルと一緒に料理をしたこと。
「すごい! どうなってるの?」
「本の開き手に応じて経験したこと、培った記憶などが読めるものなんです。二階は『過去』の書物、四階は『未来』、そして三階は『現在』の記憶の書物が置いてあるのです」
はぁ! 本当にここは不思議だらけなのね。私は感心して溜め息を漏らす。
「でも、未来の記憶なんてどうやって見るの?」
「なので、四階には入れません。たとえ入れても、おそらく本は真っ白のままでしょう」
ケルビムが笑って答えた。
私はアケルの眠るベッドに体を滑りこませてアケルと一緒に眠った。
「なにかありましたら、わたくし外におりますので、遠慮なくお呼びください」
そう言うとケルビムは部屋を後にした。
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