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第二章
大切な想い出(5)
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私はケルビムに感謝して、階段を上っていった。
三階の客室のドアを閉めてベッドに転がり目を閉じる。
瞼の裏側では楓との記憶が蘇ってくる。
楓は今ごろどこにいるんだろう。ひとりぼっちで寂しい思いをしているんじゃないだろうか?
現に、私が今こんなに寂しい思いをしてるんだから、楓が平気でいられるはずもない。
ふと、昔、自分の不注意で楓を家出させてしまったことを思い出していた。
あのときはマンションの一階に住んでいて、仕事に出る前に布団をベランダに干していたんだ。
布団を抱えたままベランダの窓を開いたとき、楓が出て行ったことに気がつかず布団を干し、そのまま窓を閉めて仕事に出かけてしまったんだ。
帰ってきてしばらくは楓がいないことに気がつかず、布団を入れたときに楓が部屋にいないことに気がついた。
あのときは大騒動だったな……。
角部屋だった私は片っ端からベランダに猫が来なかったかマンションの住人に訊ねまくったんだ。
動物飼育禁止のマンションだったのに……。
それから何日も楓を探しに外を徘徊しまくったっけ?
懐かしい記憶が蘇り、また少し寂しい思いになった。
ドタドタと廊下を走る音が聞こえて来たと思ったら、突然部屋のドアが開きアケルが飛び込んでくる。
「おねえちゃん! 遊ぼう!」
ニコニコしながらアケルはベッドをピョンピョンと飛び回っている。
「あれ、ケルビムは? かくれんぼしてるんじゃなかったの?」
アケルは不満そうに口を尖らせた。
「だってケルビム見つからないんだもん! つまんないからかくれんぼやめてきた!」
と、言うことはすでにかくれんぼは本人の了承もなしに強制終了してるにも関わらず、ケルビムはドキドキしながらどこかでアケルが探しに来るのを待ってるというわけなのね……。
なんだか切なくなって「じゃあ私も一緒に探すから、もう一度ケルビムを探しましょ」と言うとアケルも喜んでいた。
ベッドから降り、廊下へ出ようとしたとき、下の階からなにか大きな物が倒れるような音がした。
「今のはなに?」
私が言うと、アケルは閃いたかのように「ケルビムだ!」と言って走り出した。
階段の踊り場まで来ると一気に階段を駆け降りていく。
二階の階段踊り場まで来るとケルビムも慌てて一階階段から駆け上って来るのが見えた。
「ケルビム見っけ!」
アケルはケルビムを見つけ喜んでいるが、私はケルビムの慌てぶりに違和感を覚えた。
「さっきの音はケルビム?」
私が訊ねるとケルビムは首を振った。
「と、言うことはおふたりになにかあったわけではないということですね?」
どうやらケルビムも私たち同様、上の階で私たちになにかあったのではと思い、様子を見に来てくれたようだった。
「と、言うことは……」
ケルビムが奥の扉に目を向けた。ケルビムが二階の扉に向かって進んでいく。
ギィィィと木の軋む音とともに扉が開かれていった。
アケルは怯えて私の後ろに引っ込んだ。
再びなにか大きな物を倒す音と振動が響いた。
「ケルビム!? 大丈夫?」
ケルビムは二階の奥へと消えていった。
ガタンガタンと音は激しさを増して扉の方へ近づいてくる。
ここからでもわかるくらいに二階では本棚が倒れまくっていた。
一瞬、青白いなにかが二階の廊下を跳ね回っているのが見える。
ケルビムが外へ出てきて扉を素早く閉めた。ケルビムは扉を閉じたままの体勢で、肩で大きく息をしている。自慢のスーツはあちこちが切り裂かれており、ボロボロになっていた。
「ケルビム! 大丈夫? 怪我は?」
私はアケルの手を繋いだままケルビムに駆け寄った。
「ご心配要りません。自慢のスーツをボロボロにされただけで、怪我はありませんよ」
ケルビムはあっけらかんとしていた。
「あぁ! よかった。少しかじられたのかと思ったわ」
私が心配しながら言うとケルビムは首を傾げながら、「わたくしがそんなヘマをするはずありませんのに」と不満そうだ。
「アレはいったいなんなの?」
「とにかく一旦、三階の客室へ行きましょう。そこでご説明させて頂きます」
三階の客室のドアを閉めてベッドに転がり目を閉じる。
瞼の裏側では楓との記憶が蘇ってくる。
楓は今ごろどこにいるんだろう。ひとりぼっちで寂しい思いをしているんじゃないだろうか?
現に、私が今こんなに寂しい思いをしてるんだから、楓が平気でいられるはずもない。
ふと、昔、自分の不注意で楓を家出させてしまったことを思い出していた。
あのときはマンションの一階に住んでいて、仕事に出る前に布団をベランダに干していたんだ。
布団を抱えたままベランダの窓を開いたとき、楓が出て行ったことに気がつかず布団を干し、そのまま窓を閉めて仕事に出かけてしまったんだ。
帰ってきてしばらくは楓がいないことに気がつかず、布団を入れたときに楓が部屋にいないことに気がついた。
あのときは大騒動だったな……。
角部屋だった私は片っ端からベランダに猫が来なかったかマンションの住人に訊ねまくったんだ。
動物飼育禁止のマンションだったのに……。
それから何日も楓を探しに外を徘徊しまくったっけ?
懐かしい記憶が蘇り、また少し寂しい思いになった。
ドタドタと廊下を走る音が聞こえて来たと思ったら、突然部屋のドアが開きアケルが飛び込んでくる。
「おねえちゃん! 遊ぼう!」
ニコニコしながらアケルはベッドをピョンピョンと飛び回っている。
「あれ、ケルビムは? かくれんぼしてるんじゃなかったの?」
アケルは不満そうに口を尖らせた。
「だってケルビム見つからないんだもん! つまんないからかくれんぼやめてきた!」
と、言うことはすでにかくれんぼは本人の了承もなしに強制終了してるにも関わらず、ケルビムはドキドキしながらどこかでアケルが探しに来るのを待ってるというわけなのね……。
なんだか切なくなって「じゃあ私も一緒に探すから、もう一度ケルビムを探しましょ」と言うとアケルも喜んでいた。
ベッドから降り、廊下へ出ようとしたとき、下の階からなにか大きな物が倒れるような音がした。
「今のはなに?」
私が言うと、アケルは閃いたかのように「ケルビムだ!」と言って走り出した。
階段の踊り場まで来ると一気に階段を駆け降りていく。
二階の階段踊り場まで来るとケルビムも慌てて一階階段から駆け上って来るのが見えた。
「ケルビム見っけ!」
アケルはケルビムを見つけ喜んでいるが、私はケルビムの慌てぶりに違和感を覚えた。
「さっきの音はケルビム?」
私が訊ねるとケルビムは首を振った。
「と、言うことはおふたりになにかあったわけではないということですね?」
どうやらケルビムも私たち同様、上の階で私たちになにかあったのではと思い、様子を見に来てくれたようだった。
「と、言うことは……」
ケルビムが奥の扉に目を向けた。ケルビムが二階の扉に向かって進んでいく。
ギィィィと木の軋む音とともに扉が開かれていった。
アケルは怯えて私の後ろに引っ込んだ。
再びなにか大きな物を倒す音と振動が響いた。
「ケルビム!? 大丈夫?」
ケルビムは二階の奥へと消えていった。
ガタンガタンと音は激しさを増して扉の方へ近づいてくる。
ここからでもわかるくらいに二階では本棚が倒れまくっていた。
一瞬、青白いなにかが二階の廊下を跳ね回っているのが見える。
ケルビムが外へ出てきて扉を素早く閉めた。ケルビムは扉を閉じたままの体勢で、肩で大きく息をしている。自慢のスーツはあちこちが切り裂かれており、ボロボロになっていた。
「ケルビム! 大丈夫? 怪我は?」
私はアケルの手を繋いだままケルビムに駆け寄った。
「ご心配要りません。自慢のスーツをボロボロにされただけで、怪我はありませんよ」
ケルビムはあっけらかんとしていた。
「あぁ! よかった。少しかじられたのかと思ったわ」
私が心配しながら言うとケルビムは首を傾げながら、「わたくしがそんなヘマをするはずありませんのに」と不満そうだ。
「アレはいったいなんなの?」
「とにかく一旦、三階の客室へ行きましょう。そこでご説明させて頂きます」
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