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第二章
ライオン公園のタイムカプセル(2)
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「紅葉まだかな?」
公園に到着すると、中央付近にある大きな時計台の前で紅葉が来るのを待つ。敷地内には、お母さんに連れられた幼い子どもたちが楽しそうに走り回っていた。
ライオン公園はとても大きい。野球場やサッカー場、気ままに散歩できる遊歩道もあって、もちろん遊具も充実。丘の上から一気にすべりおりる長距離ローラーコースターや、黄道区が見渡せるジャングルジム。シーソーやブランコなど、子どもが喜びそうな遊具が目白押しだ。ちょっとしたハイキングコースもあって、小高い丘の上には展望台もあり、黄道区の先の海まで見渡せる。でもこの公園でやるには一つだけ不向きなことがある。かくれんぼだけは絶対やっちゃダメだ。広すぎて鬼の一人イジメになっちゃうから。
なかなか現れない紅葉にしびれを切らしたのか、ジョージは何度も近くのトイレに入っては鏡でヘアスタイルを整えている。ミチルは手さげカバンからデジタルカメラを取り出すと、空を撮ったり公園で遊ぶ子どもたちや花を撮ったりとウロウロし始めた。
初めはおとなしく待っていたマルコも、「おなかが空いた」とつぶやくとミチルの後を追っていった。みんな本当に自由すぎる。自由奔放なDグループのメンバーに少し呆れつつも、僕はひとりで紅葉を待った。
どのくらいそこで待ってただろうか?
目の前を一匹の黒い猫が通り過ぎたとき、ふと不思議な感覚に襲われた。デジャブって言うのかな? 自分では体験したことはないはずのに、まるでその状況を過去に見て、すっかり知っている気分になるってやつ。
もちろん猫なんてあちこちにいるし、今目の前を通ったこいつだって、どこかで見たことがあってもおかしくない。でも猫がどうこうじゃなくて、今のこの状態に、過去にも覚えがあるような……そんな変な気分だった。
「千斗? 大丈夫か?」
声をかけられて我に返ると、いつの間にか全員が勢揃いしている。
「あれ、いつの間に? みんな……紅葉も」
ジョージが僕を見て、またニヤニヤとささやく。
「おまえまた、この陽気のせいで、縁側のおじいちゃんになってたろ?」
「あんたって器用なんだね。立ったまま寝れるなんて、まるで鳥みたい」
状況がわからないまま挙動のおかしい僕を見て、みんながクスクス笑う。
「寝てなんかないよ! ここで君たちを待ってたんだ!」
カチンときてムキになると、今度は全員がおなかを抱えて笑い始めた。
「そうなんだ! ゴメン、ゴメン!」
「千斗君、気にすることないよ。ボクだってお腹いっぱいになったらいつも眠いもの」
笑いながら謝る紅葉の隣で、マルコが同情の視線を僕に向ける。花園でのミチルとジョージのやり取りを思い出し、僕は急に恥ずかしくなった。紅葉がいつ来たかも、いつみんなが戻ってきたかも覚えてないんだ。みんなの反応を見る限り、本当に立ったまま眠ってしまってたのかも。だとしたらジョージを責められない。
「ごめん、やっぱり僕も寝てたのかも。みんなが来てたのに全然気がつかなかったから」
素直に謝ると、みんなはさらに笑ったけど誰もバカにはしなかった。
「ううん千斗、あたしこそごめんね。部活の引継ぎが長引いて遅くなっちゃったからさ」
紅葉が僕にそう言うと、隣でジョージが「わかるッ!」と腕を組んで大きくうなずいた。
「俺も、鏡の前でクレイジーに決まった髪型を見てると、時間が経つのを忘れるぜ」
聞き覚えのある「わかるッ!」におかしくなる。この状況はデジャブなんかじゃない。実際にやり取りした今朝の状況だ。だから、あえて僕もつっこませてもらうよ。ごめんジョージ、それはわからないし一緒にしてほしくない。
公園に到着すると、中央付近にある大きな時計台の前で紅葉が来るのを待つ。敷地内には、お母さんに連れられた幼い子どもたちが楽しそうに走り回っていた。
ライオン公園はとても大きい。野球場やサッカー場、気ままに散歩できる遊歩道もあって、もちろん遊具も充実。丘の上から一気にすべりおりる長距離ローラーコースターや、黄道区が見渡せるジャングルジム。シーソーやブランコなど、子どもが喜びそうな遊具が目白押しだ。ちょっとしたハイキングコースもあって、小高い丘の上には展望台もあり、黄道区の先の海まで見渡せる。でもこの公園でやるには一つだけ不向きなことがある。かくれんぼだけは絶対やっちゃダメだ。広すぎて鬼の一人イジメになっちゃうから。
なかなか現れない紅葉にしびれを切らしたのか、ジョージは何度も近くのトイレに入っては鏡でヘアスタイルを整えている。ミチルは手さげカバンからデジタルカメラを取り出すと、空を撮ったり公園で遊ぶ子どもたちや花を撮ったりとウロウロし始めた。
初めはおとなしく待っていたマルコも、「おなかが空いた」とつぶやくとミチルの後を追っていった。みんな本当に自由すぎる。自由奔放なDグループのメンバーに少し呆れつつも、僕はひとりで紅葉を待った。
どのくらいそこで待ってただろうか?
目の前を一匹の黒い猫が通り過ぎたとき、ふと不思議な感覚に襲われた。デジャブって言うのかな? 自分では体験したことはないはずのに、まるでその状況を過去に見て、すっかり知っている気分になるってやつ。
もちろん猫なんてあちこちにいるし、今目の前を通ったこいつだって、どこかで見たことがあってもおかしくない。でも猫がどうこうじゃなくて、今のこの状態に、過去にも覚えがあるような……そんな変な気分だった。
「千斗? 大丈夫か?」
声をかけられて我に返ると、いつの間にか全員が勢揃いしている。
「あれ、いつの間に? みんな……紅葉も」
ジョージが僕を見て、またニヤニヤとささやく。
「おまえまた、この陽気のせいで、縁側のおじいちゃんになってたろ?」
「あんたって器用なんだね。立ったまま寝れるなんて、まるで鳥みたい」
状況がわからないまま挙動のおかしい僕を見て、みんながクスクス笑う。
「寝てなんかないよ! ここで君たちを待ってたんだ!」
カチンときてムキになると、今度は全員がおなかを抱えて笑い始めた。
「そうなんだ! ゴメン、ゴメン!」
「千斗君、気にすることないよ。ボクだってお腹いっぱいになったらいつも眠いもの」
笑いながら謝る紅葉の隣で、マルコが同情の視線を僕に向ける。花園でのミチルとジョージのやり取りを思い出し、僕は急に恥ずかしくなった。紅葉がいつ来たかも、いつみんなが戻ってきたかも覚えてないんだ。みんなの反応を見る限り、本当に立ったまま眠ってしまってたのかも。だとしたらジョージを責められない。
「ごめん、やっぱり僕も寝てたのかも。みんなが来てたのに全然気がつかなかったから」
素直に謝ると、みんなはさらに笑ったけど誰もバカにはしなかった。
「ううん千斗、あたしこそごめんね。部活の引継ぎが長引いて遅くなっちゃったからさ」
紅葉が僕にそう言うと、隣でジョージが「わかるッ!」と腕を組んで大きくうなずいた。
「俺も、鏡の前でクレイジーに決まった髪型を見てると、時間が経つのを忘れるぜ」
聞き覚えのある「わかるッ!」におかしくなる。この状況はデジャブなんかじゃない。実際にやり取りした今朝の状況だ。だから、あえて僕もつっこませてもらうよ。ごめんジョージ、それはわからないし一緒にしてほしくない。
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