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救世主
しおりを挟むラメイラが1週間の休暇を終え帰ってきた。
皇女宮からは出ているが、ラメイラはアリシアとアニースに挨拶に来てくれたのだ。
「ただいま!アリシア!アニース!」
「お姉様~!寂しかったです!」
アリシアは思わず抱きつきた。
「お帰り、ラメイラ。」
「…………アニース、元気無い?」
ラメイラとトーマスの結婚式前と後では明らかに違うアニースにラメイラは気にした。
「ボルゾイから、義姉が来たんだ。産まれた日も数カ月しか違わない、ボルゾイの正妃を母に持つ義姉がな。」
「ラメイラお姉様!本当に本当に失礼な人なんですよ!お姉様も会えば分かります!」
「何しに来たんだ?」
「妃候補だって言い張って、皇太子殿下の妃になるんだ、て息巻いてます!」
アリシアが力説して、ラメイラに話す。
しかし、それがラメイラに火を着けた。
「は?ナターシャは!何て言ってるんだ!」
「最近会えていないので分かりません。」
「ラメイラの結婚式後の夜会では、セシルがナターシャ妃を見て、怒ってるな、とは言っていた。」
「……………ナターシャに会いに行こ!」
「は!?」
「急に?………それは無理だろ!皇太子妃は忙しくしている筈だ!」
ラメイラは善は急げとばかりに、皇女宮を出て行ってしまい、アリシアとアニースは追い掛けた。
「ラメイラ!!約束も無いのに!」
「大丈夫だ!私には用事がある!」
「よく分からん理屈を言うな!」
アニースも引き止めるが、ラメイラは聞く耳を持たない。
見ていた侍女達は、『これがラメイラだから』と諦めに近いものを見るかのようだった。
皇太子邸に3人が着くと、皇太子邸の衛兵達はラメイラ達に挨拶をする。
「ラメイラ妃、お帰りなさいませ。」
「うん、ただいま。ナターシャは今こちらに居る?」
「はい、おみえですよ。」
「今日は公務はありませんので、ヴィオ様と過ごされております。」
「入っていい?」
「セリナに確認して参りますね。」
「お願い。」
「しかし、ラメイラ妃、アリシア様、アニース様、衛兵を付けて下さいね………あ、走って来た。」
ラメイラの足が早く、慌てて数人の衛兵と侍女が追い掛けてきた。
「今迄自由だったじゃないか。」
「………それがですね………。」
皇太子邸の衛兵がアニースをチラ見する。
「まさか、ヘルンがここにも来るのか?」
「…………ここに、と言うより、王族居住地で見かけた者がおりまして、彼方此方探索されてる様です。」
「ヘルン?」
「義姉だ。ラメイラとトーマス殿下の結婚式にも参列している。」
「ボルゾイの王族と知り合いではないからなぁ……国交があるなら参列はするか……。」
「あら?アニース…………ここに居たの。」
「!!…………ヘルン。」
3人が、皇太子邸前で話をしていると、どうやらそのヘルンに見つけられたようだった。
数人の派手な侍女を連れ、自らも派手に着飾ったヘルン。
(へぇ~、アレが。)
(…………そうですわ!)
ラメイラとアリシアが小声で話す。
衛兵と話していたラメイラの後ろに居たアニースがヘルンに振り向いていたので、ラメイラはアニースの影にはなっていたが、アニースと然程変わらない高身長のラメイラが顔を出す。
ヘルンがラメイラに気付くと、その姿に爆笑した。
「何!?その格好!ドレスでもない、ボルゾイの様な衣装でもない中途半端な格好!!」
侍女も主と一緒に共に爆笑する。
「ヘルン!!彼女も皇子妃だ!失礼だろ!」
「あぁ、あの式の………私の方が似合いそうなドレス着てたわね。いちいち女の顔なんて覚えてないけど!」
「ヘルン!!」
「…………………。」
バチン!!
アニースがヘルンの失言を止めようとしたのだが、誰かに押しやられ、気が付くとヘルンをひっぱたく女が居た。
「王族居住地から即刻立ち退きなさい!」
「私も王族よ!!」
「…………だから?」
アリシアとアニースの前に居たのは、ラメイラ。
「ここはレングストンだ。郷に入れば郷に従え、風習も習慣も違う他国に来て、さぞ鬱憤が溜まっるんだろう。私もトリスタンの公女だ。習慣の違いに戸惑ったし、言葉使いも服もコレだ。だから笑われるのは仕方ない。私の事を知らなかったんだからな。だが、私が居なかった1週間の間、雰囲気を変えた原因があなただと分かるぞ!」
「だから何よ!私はレングストンの皇妃になるんだから、私に跪くのは当たり前でしょ!今から練習よ!」
「あんた…………馬鹿?リュカがナターシャを離す訳ないじゃないか。」
「リュカ!!何であんたが名前呼べるのよ!!」
「それは、ラメイラだからだが?…………皇太子邸で何をしている。ヘルン姫に王族居住地に足を踏み入れる許可は出してないが?」
騒ぎを聞き付け、リュカリオンとトーマス、セシルが駆け付けた。
「リュカ殿下!!酷いですわ!こんな女にお名前呼ばせるなら私にも!」
「触るな!…………と言った筈だが?」
「ヘルン姫、直ちに荷物をまとめ、ボルゾイへお帰りを。サマーン王と皇帝陛下の密約は、破棄をさせて頂きます。ボルゾイへはまたこちらから詫びを用意致しますので。」
これにより、リュカリオン達が連れて来た衛兵達により、ヘルンは王城の客間に押し込まれた。
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