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おまけ
おまけ①航、裕司中学編
しおりを挟む区立中学入学式。
―――たるっ……入学式フケてぇなぁ……
航が、両親より先に3年間通う中学校に、小学生の頃からの友達と登校し、クラスも分かれてしまった為、一気につまらなくなって校舎をフラフラしていた。
―――お、同じ様な奴見っけ
目の前に、雰囲気が似た別学区から入学してきた生徒だろう、前からやって来る。同じ様に学生服を着崩し、校則の違反ギリギリの髪型をした新1年生。その生徒が、航の入るクラスの扉の前でクラス札を見上げている。
ため息を吐き嫌そうに教室に入る足取り。そして黒板に書かれた席順にまたため息を漏らすのを航が見た。
―――何か気になる奴だな……
航も黒板を見て自分の席を確認すると、その生徒の前。
―――小松?……へぇ~……『お』の後『こ』迄居ねぇのか……
「よぉ……俺、小山内 航……俺、○○小だけど、お前、何小から来たんだ?」
「………関係あんの?お前に……別にいいじゃん……」
―――うわっ!態度悪っ!
だが、その生徒は航をじっと見て、ニヤっと笑った。
「俺、小松 裕司………宜しく、航」
「……………へへっ!何か気が合いそうだな、俺達」
「何だよ、お前もそう思ったのか?」
それが、航と裕司の出会いだった。
どことなく雰囲気が似ている航と裕司は、双子ではないのに、やる事なす事同じ事をするので、学内では目立つ存在となる。
見目も良く、女に興味無い素振りをする航と、女好きな裕司で人気を二分する。
「お、航!あの先輩美人じゃね?」
「興味無い………俺は妹の方が美人だと思う」
「………なぁ、じゃぁ紹介しろよ!」
「お前に紹介したら、泣くのは羽美だ!」
「羽美、て名前ね………よし!学校終わったらお前ん家連れて行け!」
「裕司に妹会わせるかぁ!」
航のシスコン振りは小学生時代から有名で、女生徒からの告白は皆玉砕するので、そんなに妹が可愛いのか、と男子生徒は航の家に覗きに行く事も増えたという逸話があったのだ。
それでも、裕司は航の親友特権を翳し、妹に会わせてもらう事に成功する。
「お!可愛いじゃん!航のシスコンは頷けるな」
「羽美!コイツには近付くなよ!好きにもなるな!」
「…………う、うん………」
兄の気迫に押され、羽美はしっかり裕司を恋愛対象から外したのだが、羽美が中学を入学すると、航と裕司は、入れ違いに高校を入学する事になる為、羽美に近付いた男子生徒には航と裕司の威圧的な態度によって、羽美は守られていた。
それが、どう噂がネジ曲がったのか、素行の悪い生徒として捉えられてしまい、航と裕司のストレスは溜まっていき、成績や教師達からの内申も悪くなる一方となる。
「高校、志望校の推薦貰えねぇじゃん、俺」
「俺もだぞ」
「航は将来何になるつもりなんだ?」
「俺?料理人」
「…………あぁ……おじさんの店継ぐのか……」
「なれればな……料理作るの好きだしよ………裕司は?」
「…………無い……」
「無い、なんて無いだろ……」
「夢も無ぇんだよ!俺は!好きな事やって生きる!」
「まぁ、まだ中学だしな………いずれ見つかるさ」
そう、いずれ見つかるのだ、と思い裕司も軽く見ていた。
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