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5. 子離れ
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「…落ち着いて下さい、お義母様。僕達はもう家族です。お義母様もですよね?変な言いがかりはよしましょう。まずは、アスラーの顔を見ませんか?」
「もう見たわ!ダリア、帰りますよ!」
「お母様、何を言ってらっしゃるの?今私が帰っても、弟のセインの邪魔にしかならないわ。それに私はあの家に帰りたいなんて思ってないわ。」
「あの家には帰らないわよ!今は…私ヨーゼフからずっと北の別荘で暮らせって言われて一人なのよ。だから気兼ねなんてしなくていいのよ、ダリア。さぁ!」
「お母様、何であんな寒い所…?ずっと?」
「本当に!意味が分からないわよね!!ダリアが結婚すると言って屋敷を出て行ってからよ!でもダリア。あなたの子と三人で暮らしましょ。そうすれば、何も心配する事はないのよ。」
「待って下さい!ダリアは僕の妻です。アスラーも僕と愛するダリアとの大切な子どもです。そんな家族を引き離して、それで幸せだと言えますか?」
「アドルフ様…!」
「まぁ…!」
「な、何を言っているの?それじゃあ私の幸せは!?愛するヨーゼフとの子供が結婚して二人とも離れたわ。残りのセインは私をいないものとしてみているし。男の子は反抗期があるかもしれないけれど、娘はかわいいわ!ダリアなんて、小さい頃は病弱だったの!私がいなければ生きていけない子だったのよ!」
「お母様…それはないわ。」
「え!?」
「お母様が『病弱だ』って言うから、私もそうかと思ったのよ!だけれど、子どもは生まれてきて間もないから病気になるのが当然なのですって。それに打ち勝って、どんどん強く丈夫になるらしいのです。それをお母様が『病弱』の一言で片付けるから私はそれを逃げ道としてしまっていたのよ!お母様も、一旦冷静になって考えてちょうだい。なぜお父様がお母様を北の別荘にずっと住まわせていたの?何か理由があるはずよ!」
「も、もう!理由なんて考えても分からなかったわ!だからこうやってヨーゼフには内緒でダリアに会いに来たのよ!でもこれでようやく分かったわ。あなたをあの別荘に気兼ねなく連れていく為だったのね!」
「お義母様、義父様はご存知ですよ。あなたがここに手紙を送ってきている事も、ここに今日来ている事も。」
「な、なんで…?」
「今いらっしゃる別荘は、誰の持ち物ですか?義父様であるクレムフィス伯爵のものですよね。そこにいる使用人も、現当主であるクレムフィス伯爵から雇われた人達です。それに手紙を受け取った僕達だっています。お義母様、あなたは生かされている事を忘れてはいけません。今日帰る途中でたまたま事故に遭われるかもしれませんよ。それは、あなたの行動、言動次第です。ダリアは、シンシアに酷い事をしましたが別の形で償っています。今、ダリアが中心となってやっている事業は、シンシアが元々は考えた事。クレムフィス伯爵の領地で新しく見つかった鉱山から買い付けた宝石を、罪を犯した人達が償う為に宝飾品にしているんだ。」
「そ、そうでしたの…。」
「それ以外にも、ダリアは僕の予想を遥かに上回って現在猛勉強中です。素晴らしい次期侯爵夫人になってくれると信じているよ。」
「アドルフ様…。」
「いつまでも子どもは子ども。心配するのは当たり前よ、分かるわ。でも子どもだって意思があり、正しい道へと導くのが親の役目。自分の気持ちを押し付けるのは違うわよ。子離れ、しないとあなたもその工房で働いてもらうことになるわね。もしくは、今日の帰りの事故で谷に落ちる?そうだわ!あなたの今いらっしゃる北の別荘の近くに、修道院があるわね。そこに行かれるのもいいんじゃないかしら?」
お母様が膝から崩れ落ち泣いていたのを、お義母様が近寄って立ち上がらせ、共に部屋から出ていった。
「もう見たわ!ダリア、帰りますよ!」
「お母様、何を言ってらっしゃるの?今私が帰っても、弟のセインの邪魔にしかならないわ。それに私はあの家に帰りたいなんて思ってないわ。」
「あの家には帰らないわよ!今は…私ヨーゼフからずっと北の別荘で暮らせって言われて一人なのよ。だから気兼ねなんてしなくていいのよ、ダリア。さぁ!」
「お母様、何であんな寒い所…?ずっと?」
「本当に!意味が分からないわよね!!ダリアが結婚すると言って屋敷を出て行ってからよ!でもダリア。あなたの子と三人で暮らしましょ。そうすれば、何も心配する事はないのよ。」
「待って下さい!ダリアは僕の妻です。アスラーも僕と愛するダリアとの大切な子どもです。そんな家族を引き離して、それで幸せだと言えますか?」
「アドルフ様…!」
「まぁ…!」
「な、何を言っているの?それじゃあ私の幸せは!?愛するヨーゼフとの子供が結婚して二人とも離れたわ。残りのセインは私をいないものとしてみているし。男の子は反抗期があるかもしれないけれど、娘はかわいいわ!ダリアなんて、小さい頃は病弱だったの!私がいなければ生きていけない子だったのよ!」
「お母様…それはないわ。」
「え!?」
「お母様が『病弱だ』って言うから、私もそうかと思ったのよ!だけれど、子どもは生まれてきて間もないから病気になるのが当然なのですって。それに打ち勝って、どんどん強く丈夫になるらしいのです。それをお母様が『病弱』の一言で片付けるから私はそれを逃げ道としてしまっていたのよ!お母様も、一旦冷静になって考えてちょうだい。なぜお父様がお母様を北の別荘にずっと住まわせていたの?何か理由があるはずよ!」
「も、もう!理由なんて考えても分からなかったわ!だからこうやってヨーゼフには内緒でダリアに会いに来たのよ!でもこれでようやく分かったわ。あなたをあの別荘に気兼ねなく連れていく為だったのね!」
「お義母様、義父様はご存知ですよ。あなたがここに手紙を送ってきている事も、ここに今日来ている事も。」
「な、なんで…?」
「今いらっしゃる別荘は、誰の持ち物ですか?義父様であるクレムフィス伯爵のものですよね。そこにいる使用人も、現当主であるクレムフィス伯爵から雇われた人達です。それに手紙を受け取った僕達だっています。お義母様、あなたは生かされている事を忘れてはいけません。今日帰る途中でたまたま事故に遭われるかもしれませんよ。それは、あなたの行動、言動次第です。ダリアは、シンシアに酷い事をしましたが別の形で償っています。今、ダリアが中心となってやっている事業は、シンシアが元々は考えた事。クレムフィス伯爵の領地で新しく見つかった鉱山から買い付けた宝石を、罪を犯した人達が償う為に宝飾品にしているんだ。」
「そ、そうでしたの…。」
「それ以外にも、ダリアは僕の予想を遥かに上回って現在猛勉強中です。素晴らしい次期侯爵夫人になってくれると信じているよ。」
「アドルフ様…。」
「いつまでも子どもは子ども。心配するのは当たり前よ、分かるわ。でも子どもだって意思があり、正しい道へと導くのが親の役目。自分の気持ちを押し付けるのは違うわよ。子離れ、しないとあなたもその工房で働いてもらうことになるわね。もしくは、今日の帰りの事故で谷に落ちる?そうだわ!あなたの今いらっしゃる北の別荘の近くに、修道院があるわね。そこに行かれるのもいいんじゃないかしら?」
お母様が膝から崩れ落ち泣いていたのを、お義母様が近寄って立ち上がらせ、共に部屋から出ていった。
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