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決意

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「フィリアも、ちゃんと付けているんだよ。アルフェンス国の王族だって分かる物を付けているよね。ペンダントがあるね。」
そうだった。私は、小さな頃からこれを持っていた。何かある時に、握りしめて苦しい時や淋しい時をを乗り越え、楽しいと言えるように何度だって心掛けたわ。

「フィリア様。どうか…この機会を逃さないようお願いします!」
私が、ユリエルおじさまと話していると、一人の男性が進み出てきて、私にそう言ってきた。その人は、孤児院に来て手伝いをしてくれた人だった。

「え?」
機会?どういう事かしら。

「バルグェン国が、あと数日のうちに攻め入って来ます。その時に打ちのめしてやりましょう!国王陛下や正妃様、犠牲になった人々の敵を討つのです!」

「ベイスン!まだ、フィリア様はお心が決まってない!迂闊な事を申すな!」
ユリエルおじさまが、ベイスンに向かって大きな声を出した。

「しかし、我らは皆家族や親しい者を亡くしているのです!バルベルト様だってそうでしょう!悔しくはないのですか!」
「悔しいに決まっておる!だが…お決めになるのはフィリア様だ!我々がどうこう言える立場ではない!」
ベイスンと、ユリエルおじさまが言い合っている。
そうか…ここにいる人達はみんな、そんな思いなのね。国を追われ、こんな風に隠れ住んでいて。本当は、元あったアルフェンス国で暮らしたいって事なのかな。

なんか、言い合いしていて、怖いけれど、私の意見を言おうと思って口を挟んだ。
「あの!私はその、アルフェンス国が無くなった時の事を知りません。だから、私に教えてくれませんか?どういう状況だったのか、皆さんのお気持ちも。」
私は、そう言って他の人達の顔を順番に見た。

すると、
「申し訳ありません…。フィリア。いえ、これからは本来の敬称で呼ばせていただきます。フィリア様。皆の者にまで気遣いをしていただいてありがとうございます。では、座って話しましょう。」
そう言って促してくれた。
フィリア様ってなんかくすぐったい。呼ばれなれないからちょっと嫌だけど…。




☆★☆★☆★☆★

ユリエルおじさまが、だいたいをかいつまんで話してくれた。
バルグェン国が、アルフェンス国にいきなり宝石が取れる山が欲しいと言ってきた事。
断ったら、大勢で攻め込んできたこと。
国王陛下のお父様とお母様が、当時側近であったユリエルおじさまに私を託して城から逃がしてくれた事。
ここの森に、アルフェンス国の城へと通じる隠し通路がある事。
ユリエルおじさまだけで育てようか迷ったけれど結局、国境の教会にある孤児院に預け、自分は森で野宿をしていた事。
隠し通路でこっそり城へと戻り、状況を確認したり、生き残りを森へ連れて来たりした事。
そして、ここにいる人達は、多かれ少なかれバルグェン国に憎しみを抱いている事。
私にバルグェン国を潰して欲しいと思っている人達だという事。


私は、バルグェン国を身近に感じない。だからか、潰して欲しいと言われてもピンとこない。それどころか、したくないとさえ思う。
確か、バルグェン国は、貧しい国だったわよね。だから、他国から物を奪おうと戦争をしかけるって。
んー…私は、私の思うようにしましょうか!
だってユリエルおじさまはいつも言っていた。『自分で物事を見極め、自分で決めなさい。人の意見に左右されないよ。』って。ね?そうでしょ?
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