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第四部
10章 農場
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「あ、ブ、ブライ……」
俺の姿に気付くと気まずそうにセラが視線を逸らした。
彼女はペレアスに洗脳されて、俺に対して冷たい態度をとってきた。その時の記憶はしっかりあるようで、ペレアスの件が明らかになっても、彼女とはこんな感じだ。
「あなたが二人を見付けてくれたのね。ありがとう。それじゃ、もう行くから……」
そそくさと二人を連れて去ろうとする。すると……
「ま、待って、ブライさんに話が」
「そう。さっき、見付けたものの話してない」
シェリーたちがセラを引き留める。
さっき、見付けたものとはなんだろう?
「セラ、とりあえず逃げるようにどっかに行かなくてもいいんじゃないか? 二人との話も終わってないし、セラも聞いていくといい」
「は、はい……」
ぎこちない様子でセラが応じる。
以前の態度は全て、ペレアスの仕業だったのだ。元通りとはいかなくても、もう少し普通に接したいものだが。
「実はね、ダンジョンの奥にドラゴンみたいなのが居たからエル様と一緒に倒したんです。そうしたら、すごいものが出てきて」
「ダンジョンの報酬か。そういえば俺のスキルに反応して、珍しいものが出るんだよな」
ダンジョンの奥には扉があって、俺のスキルに反応して開く仕組みになっている。
直接俺が行かなくても、俺と縁のある人間なら開けるらしく、シェリーもあの扉の奥にいったのだろう。
それにしてもエルディーナが居たとは言え、この若さでドラゴンを倒すなんて末恐ろしいな。
「え、待って? シェリー、ダンジョンってどういうこと? ブライたちを助けに行っただけじゃないのかしら? ねえ、説明して」
随分と困惑した様子でセラが尋ねる。
俺は一度これまでの事情を説明することにする。
シェリー達がエルディーナに付いていってダンジョン探索に向かったこと、ルドラ達がそれに協力していたこと。
先ほどの戦闘で助けられたことなどを話すと、セラは怒ったような安堵したような複雑な表情で、二人に危険なことをしないよう諭す。
二人もセラに謝罪をして、ひとまずこの話は収まった。
「それで、すごいものってなんなんだ? ダンジョンで見つかったんなら、珍しいものなんだろうけど」
俺の疑問にシェリーが答える。
「農場です」
「の、農場? ダンジョンから農場が見つかるってどういう状況なんだ?」
どうにも想像が付かない。
それに、仮に農場がダンジョンの中にあったとして、すごいというのはどういうことなんだろう?
「とりあえず、一度目にしてもらった方がいいですわね」
それから俺はエルディーナの案内で、例の農場に向かう。
それは、ライトが捜索を終えたエリアの次にあるダンジョンの奥地にあるようだ。
「な、なんだこれ……地面が光ってる?」
ダンジョンにある巨大な石扉の向こうには、目映く光り輝く不思議な農場が広がっていた。
土はとても柔らかく、どこからか流れる小川の水面はまるで星を写したようにキラキラと輝いていて、農場全体はホタルのように明滅する魔力の光で溢れていた。
危険なダンジョンには似つかわしくないほどに幻想的で神秘的な光景だ。
「よく分からないけど、ただごとじゃないのはよく分かるな……もしかして、ここの土も水も特別なものなのだろうか?」
この農場のことは分からないが、ここで育った野菜や果物は絶品だろうと、そんな予感が頭をよぎった。
「ブライさん、セラ姉、ためしにここのリンゴを食べてみてみて」
「とてもぜっぴんだった」
シェリーとシャロンが木からリンゴをもぎって渡してくる。
俺たちはそれを見てまたもや驚くのだった。
「黄金のリンゴ……? すごい、綺麗に輝いてるわ」
「ああ、こんなリンゴ見たこと無いな」
よく見ると、他の野菜や果物も全て黄金に輝いている。
やはり、ここで育つ作物は特別な逸品に変化するのだろう。
俺たちは試しにリンゴをかじってみる。
「うまあああああああああああああああい!!!!!!!」
思わず絶叫してしまった。
リンゴをかじった瞬間に弾ける果汁はとてもみずみずしく、これまで味わったことがないほどに甘かった。
甘いと言ってもしつこくなく、上品で、風味はとても爽やかだ。一口味わうだけで、まるで全身をに高原に吹くな風味を伴っていた。
その美味しさたるや、一口味わうだけで、全身に一条の風がさぁーっと吹き抜けるような心地がする。
「ふふん。これはかなりの発見でしょう? しかも、ただ美味しいだけじゃありませんのよ」
「どういうことだ? この上、まだなにかあるのか?」
答えはそれから程なくしてやってきた。
「な、なんだ? う、うおおおおおおお!!!! 力が全身に漲ってくる……!!」
突然、身体の奥底から計り知れない力が湧き上がってきたのだ。
圧倒的な力のおかげか全身が軽くなり、圧倒的な解放感が胸に満ちていく。今すぐ、この農場を走り回りたくなるほどだ。
「これは一体、なんなんだ?」
「よくは分かりませんわ。ですが、ここで育った作物には、身体を強化する不思議な力があるようですわ」
「なるほど……それはすごいな……」
身体だけでなく、心も弾むようだ。
体と心が元気になる不思議な野菜と果実。待てよ……これがあれば?
「ブライ! これよ!」
突然、セラが声を張り上げた。
俺の姿に気付くと気まずそうにセラが視線を逸らした。
彼女はペレアスに洗脳されて、俺に対して冷たい態度をとってきた。その時の記憶はしっかりあるようで、ペレアスの件が明らかになっても、彼女とはこんな感じだ。
「あなたが二人を見付けてくれたのね。ありがとう。それじゃ、もう行くから……」
そそくさと二人を連れて去ろうとする。すると……
「ま、待って、ブライさんに話が」
「そう。さっき、見付けたものの話してない」
シェリーたちがセラを引き留める。
さっき、見付けたものとはなんだろう?
「セラ、とりあえず逃げるようにどっかに行かなくてもいいんじゃないか? 二人との話も終わってないし、セラも聞いていくといい」
「は、はい……」
ぎこちない様子でセラが応じる。
以前の態度は全て、ペレアスの仕業だったのだ。元通りとはいかなくても、もう少し普通に接したいものだが。
「実はね、ダンジョンの奥にドラゴンみたいなのが居たからエル様と一緒に倒したんです。そうしたら、すごいものが出てきて」
「ダンジョンの報酬か。そういえば俺のスキルに反応して、珍しいものが出るんだよな」
ダンジョンの奥には扉があって、俺のスキルに反応して開く仕組みになっている。
直接俺が行かなくても、俺と縁のある人間なら開けるらしく、シェリーもあの扉の奥にいったのだろう。
それにしてもエルディーナが居たとは言え、この若さでドラゴンを倒すなんて末恐ろしいな。
「え、待って? シェリー、ダンジョンってどういうこと? ブライたちを助けに行っただけじゃないのかしら? ねえ、説明して」
随分と困惑した様子でセラが尋ねる。
俺は一度これまでの事情を説明することにする。
シェリー達がエルディーナに付いていってダンジョン探索に向かったこと、ルドラ達がそれに協力していたこと。
先ほどの戦闘で助けられたことなどを話すと、セラは怒ったような安堵したような複雑な表情で、二人に危険なことをしないよう諭す。
二人もセラに謝罪をして、ひとまずこの話は収まった。
「それで、すごいものってなんなんだ? ダンジョンで見つかったんなら、珍しいものなんだろうけど」
俺の疑問にシェリーが答える。
「農場です」
「の、農場? ダンジョンから農場が見つかるってどういう状況なんだ?」
どうにも想像が付かない。
それに、仮に農場がダンジョンの中にあったとして、すごいというのはどういうことなんだろう?
「とりあえず、一度目にしてもらった方がいいですわね」
それから俺はエルディーナの案内で、例の農場に向かう。
それは、ライトが捜索を終えたエリアの次にあるダンジョンの奥地にあるようだ。
「な、なんだこれ……地面が光ってる?」
ダンジョンにある巨大な石扉の向こうには、目映く光り輝く不思議な農場が広がっていた。
土はとても柔らかく、どこからか流れる小川の水面はまるで星を写したようにキラキラと輝いていて、農場全体はホタルのように明滅する魔力の光で溢れていた。
危険なダンジョンには似つかわしくないほどに幻想的で神秘的な光景だ。
「よく分からないけど、ただごとじゃないのはよく分かるな……もしかして、ここの土も水も特別なものなのだろうか?」
この農場のことは分からないが、ここで育った野菜や果物は絶品だろうと、そんな予感が頭をよぎった。
「ブライさん、セラ姉、ためしにここのリンゴを食べてみてみて」
「とてもぜっぴんだった」
シェリーとシャロンが木からリンゴをもぎって渡してくる。
俺たちはそれを見てまたもや驚くのだった。
「黄金のリンゴ……? すごい、綺麗に輝いてるわ」
「ああ、こんなリンゴ見たこと無いな」
よく見ると、他の野菜や果物も全て黄金に輝いている。
やはり、ここで育つ作物は特別な逸品に変化するのだろう。
俺たちは試しにリンゴをかじってみる。
「うまあああああああああああああああい!!!!!!!」
思わず絶叫してしまった。
リンゴをかじった瞬間に弾ける果汁はとてもみずみずしく、これまで味わったことがないほどに甘かった。
甘いと言ってもしつこくなく、上品で、風味はとても爽やかだ。一口味わうだけで、まるで全身をに高原に吹くな風味を伴っていた。
その美味しさたるや、一口味わうだけで、全身に一条の風がさぁーっと吹き抜けるような心地がする。
「ふふん。これはかなりの発見でしょう? しかも、ただ美味しいだけじゃありませんのよ」
「どういうことだ? この上、まだなにかあるのか?」
答えはそれから程なくしてやってきた。
「な、なんだ? う、うおおおおおおお!!!! 力が全身に漲ってくる……!!」
突然、身体の奥底から計り知れない力が湧き上がってきたのだ。
圧倒的な力のおかげか全身が軽くなり、圧倒的な解放感が胸に満ちていく。今すぐ、この農場を走り回りたくなるほどだ。
「これは一体、なんなんだ?」
「よくは分かりませんわ。ですが、ここで育った作物には、身体を強化する不思議な力があるようですわ」
「なるほど……それはすごいな……」
身体だけでなく、心も弾むようだ。
体と心が元気になる不思議な野菜と果実。待てよ……これがあれば?
「ブライ! これよ!」
突然、セラが声を張り上げた。
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