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ロドリオット

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 ファルゼンベルク公爵家の娘である私とレンバート殿下は、幼い頃から婚約していた。

 うちの領地は鉄鉱石の産出がさかんで、この国の軍事力・経済力の基盤となっている。

 前国王の放蕩のツケを支払うため、今の国王はファルゼンベルク領とつながりを強めようと考えた。

 そうして実現したのが私とレンバート殿下の政略結婚というわけだ。

 つまり簡単に言うと、王家はうちのお金をアテしていたわけである。

 今回の婚約破棄によってうちと王家は縁が切れたため、当然ながらお金の貸し借りは一気に難しくなる。
 まあ一応相手は王族だし、完全拒否はしないにしても……利子のかけ方が大きく変わってくる。

 レンバート殿下はそのことを多分忘れている。

 ……というか、まさか知らないとか?
 いや、さすがにレンバート殿下は第一王子なんだし、そのくらいのことは知っていると思うけど……

 でも、わかっていたらあんなに大勢の人の前で婚約破棄なんて言い出さないだろう。

 忘れているにしても、知らないにしても、残念なことには変わりないけれど。

「なあ、さっきの見たかよ」
「リオナ様、振られちゃったわね。……いい気味よ、公爵令嬢だからって調子に乗っているからこうなるんだわ」

 校舎を移動していると、生徒たちがヒソヒソと囁き合っている。

 さっきのやり取りを見ていたようだ。

 ……まあ、仕方ないだろう。

 あんなに大々的に婚約破棄を叫ばれてしまっては、誰だって話のネタにしたくなる。

「ちょっと、リオナ様!」

 私の行く手を遮るように、数人の令嬢が立ちはだかった。

「何か用ですか?」
「あなた、レンバート殿下に婚約破棄されたそうね!」
「耳が早いですね」
「なにを平然としているんですか!? 第一王子に婚約破棄されるだなんて、両家に泥を塗る最悪の行為ですよ! 今すぐにレンバート殿下にもう一度婚約を結んでもらえるよう頼むべきではありませんか!?」

 令嬢の一人が言うと、残りの数人も「そうだそうだ」と喚きたてる。

 ああ……
 なんとなく何が言いたいかわかった。

 この人たちは、入学当初から私に付きまとってきた令嬢たちだ。男爵、子爵の家柄の娘が多い。
 おそらくレンバート殿下と婚約を結んでいた私の取り巻きになって、おこぼれをもらおうとしていたんだろう。

 レンバート殿下が立太子すれば私は王太子妃だ。

 そうなれば彼女たちの家も派閥のより内側に潜り込むことができ、甘い汁をすすることができる。

 しかし、その目論見は今回の婚約破棄で破綻した。

 だからもう一度私をレンバート殿下と婚約させて、なんとか美味しいポジションを保ちたいわけだ。
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