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5章【外交編・モットー国】

6 戦闘準備

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「全速前進ーーーー!振り落とされんじゃねぇぞ!拾い上げられねぇからな!!!」

ガガガガガガ……っ!

船長の声と共に船が大きく軋む。先程よりも波は高くなり、船の揺れも比例するように大きくなっていく。

私達は必死に船から投げ出されないよう、船体にしがみつくので精一杯だった。

「リーシェ、無事か!?」
「大丈夫ですよ。ヒューベルトさんは!??」
「俺も大丈夫です!」

ゴウンゴウンと小高い山を登ったり降りたりするように船が何度も大きく揺れ、風もまだ自力で支えられるほどだが、強くなっていく。

まだ雷は鳴っていないが、それでも強風と荒波は以前の嵐に匹敵するほどになっていた。

(これはマズいな)

海賊からは逃げられる可能性は上がるが、このままいけば激しい海流の部分まで運ばれていく可能性だってある。

船長の操舵を信用するしかないが、このまま警戒しながらの操舵ではミスを誘発してもおかしくはない。

「ヤバい、くるぞーーーーー!!」

え、何が!?と思って声のする方向を見れば、いつの間にか海賊船が横を並走し、くっついている状態だった。

天候や状況に気を取られ、さらに視界不良だったせいで、気づくのに遅れてしまったようだ。

さすがこの辺りを縄張りにしているだけはある。波の読みも風の読みも、こちらよりもはるかに上回っているようだ。

しかも、恐らく船を捨ててこちらの船を乗っ取る気なのだろう。そのため、だいぶ無茶をした操舵で、ぴったりと横づけされていた。

「くそっ!あっちのが何枚も上手だったか!しゃあねぇ!動けるやつは迎撃に迎え!!」
「あいあいさー!!!行くぞ、てめぇら!!!!」

慌ただしく動き始める船員達。

「我々も迎撃に向かいましょう!」
「いや、リーシェは大人しく操舵に専念しろ」
「そんなこと言ってる状況ではないです。下手すると船もろとも沈む可能性までありますから」

実際、海流に飲まれるのもそうだが、海賊に乗っ取られてもアウトだ。であれば、ここは出し惜しみせずに戦力は全てぶつけておくに越したことない。

クエリーシェルももちろん軍の総司令官として場数を踏んでいるのだからそれくらいはわかっているが、それでも私のことを想ってこそ提案してくれているのだろう。

「ヴァンデッダ卿!いざとなれば俺がリーシェさんの盾になるつもりでいますから、ここは……っ」
「…………っ!仕方あるまい!もちろん私もリーシェに何かある前に防ぐつもりではあるが、とにかく、無茶だけはするな。これは絶対だからな!」
「もちろん!ただで死ぬような女ではありませんから」
「全く、困った姫だな」
「ケリー様の前ではただのメイドですよ」

お互いに笑い合うと、一気に気持ちを切り替える。

(さぁ、戦闘の準備だ)

「来たぞ、乗り込んできた!!!!」
「あちこちから飛んでくるぞ!総員、操舵手を守りつつ、蹴散らせぇぇぇぇ!!!!」

頭上から、ロープの勢いと共に次々に飛び込んでくる海賊。さすがは慣れた様子で、この荒波と天候にも臆することなく乗り込んできた。

「ケリー様、ヒューベルトさん、ご武運を」
「あぁ、行くぞ!」
「遅れをとらぬように頑張ります!!」

私は背中に背負っていた棍を勢いよく取り出すと、海賊に向かって駆け出した。
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