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28. 憧れたお姫様のような幸せ

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  く、苦しいですわ……!
  先程からラファエル様がわたくしを抱きしめたまま離してくれませんの!

「ミュゼット……」

  ぶぉん!

「……分かってる、無事だった事は……姿を見て分かってる。だが……」
「ラファエル様……」
「俺のミュゼットに触れるだけでも許し難いのに!!」

  ぎゅっ!
  更にわたくしを抱きしめる力が強まりました。

「腕を掴まれたくらいでしたわ」

  縦ロールはバンバン攻撃して彼らに触れてましたけど。
  ぶぉん、ぶぉん!
  ……縦ロールはまだまだ元気いっぱいですわね?

「それでもだ。許せない」
「あっ……」

  そう言ってラファエル様は、チュッチュとわたくしの顔にたくさんの口付けを落とし始めました。

  ぶぉ、ぶぉ!!

  (っっ!!  ま、まだ、人が見てますわよ!?)

  と、わたくしと縦ロールが内心で焦っていると、

「ちょっと!  だからぁぁ!  何してるのよーーやめてよぉぉーーラフ様は私のなのにーーー」

  と、連行されて行く途中のアマンダ様の叫び声も聞こえます。

  (はっ!  まさか、ラファエル様、わざと見せつけようとしたのでは……)

  そう思いましたので、わたくしを襲おうとした鼻血男を含めた3人に視線を向けると彼らは呆然とした顔でこちらを見ておりましたわ。
  何か絶対失礼な事を考えてそうな表情ですわね……

  そして、そこで先生から声がかかります。

「オコランド侯爵令嬢、怪我が無いようならあなたにも話が聞きたいので一緒に来てくれますか?」
「は、はい!」
「……コホッ……そういう理由ですから、ラファエル殿下、彼女を愛でるのはもう少し後にして下さい」
「……」

  先生からのその言葉でラファエル様は渋々わたくしへの口付けを止めました。
  そして、「ミュゼット……」とわたくしの名前を優しく呼んだ後、突然わたくしを抱き上げました。

「!?」

  ぶぉ、ぶぉ、ぶぉん、ぶぉん!!

  (何ですのーー?  何故、抱き上げているんですのーー!?)

「疲れてるだろ?  ミュゼット。俺が運ぶ」
「はこはこはこ……?」
「危ないから俺の首に腕を回して?」
「……え、ええ?」
  
  わたくしは何が何だか分からないまま、言われた通りにラファエル様の首に腕を回します。

「っ!」

  ……ぶぉぉん!

  なんて事!!  この体勢はいけませんわ!  み、密着度がかなり高くなりますわーー!

  ぶぉん、ぶぉん、ぶぉんっっ!!

「ははは、ミュゼット。そんなに照れてるのか?  本当に可愛いなぁ。縦ロールのそのペチペチ攻撃すら愛しいよ」
「~~~っ!」

  ラファエル様に抱き抱えられ運ばれながら、わたくしは思い出しておりました。
  かつてのわたくしが、縦ロールに憧れるきっかけになったあのお姫様の話……
  あのお姫様も、王子様にこのように運ばれていたわ……と。  

  (あんなに夢見たお姫様と同じ幸せがわたくしにも訪れているなんて!  やっぱり縦ロールは最高ですわ!)

  ぶぉ……ぶぉ……

「……?  どうした、ミュゼット。急に縦ロールが恥じらいだしたが?」
「うぅ……」

  ぶぉ、ぶぉん、ぶぉーん

「え?  ずっと夢見てきた幸せが訪れた?」
「!」

  また、縦ロールが告げ口しましたのね!?  
  本っ当に何してくれてますの、縦ロールわたくし!!

  もはや、自分が何に文句を言っているのか分からなくなっておりましたら、ラファエル様が笑いながら言います。

「本当に可愛い事を言うなぁ。だが甘いぞ、ミュゼット」
「え?」
「俺の愛はまだまだ、こんなもんじゃない」
「え?」
「これでも手加減している」
「てかげん……」

  手加減?  手加減ですって!?
  この毎回、毎回、わたくしが恥ずか死にそうになっているのこの甘々攻撃が手加減!? 
  ラファエル様って……

「そんなにわたくしの事が好きなんですの?」
「あぁ、大好きだ」
「……縦ロールも?  怖くないんですの?」
「怖い?  縦ロールもミュゼットの一部だからな。全て愛しいよ」

  あぁ、大変ですわ!  胸がきゅんっとしましたわ。
  やっぱりわたくしも、ラファエル様の事が……

「わたくしも、大好き…………………………ですわ」

  わたくしが思わずそう口にしましたら、ラファエル様の足がピタッと止まってしまわれました。

「ラファエル様?」
「…………今、ミュゼットの可愛い口から、好きって聞こえた」
「……っ、く、繰り返さないで下さいませっっ!!」

  ぶぉん、ぶぉん、ぶぉん!!

「それも、大好きだ……と。あぁ、ミュゼットが……俺を……」
「っっ!」

  ぶぉんぶぉんぶぉんぶぉん!

「あぁ、そんなに?  そんなにミュゼットは俺の事を?  ……はぁ、どうして、ここは学園なんだ。どうして俺はまだ学生なんだ……しかも留学生」
「?」
「ここが、ベニテンツの王宮俺の家なら今すぐその辺の空いてる部屋に連れ込んで……」
「!?」

  ラファエル様の目が……目が本気ですわ!?
  そんな風に見つめていたせいでバチッと目が合ってしまいます。
  にっこりとわたくしに向かって微笑んだラファエル様の顔がどんどん近付いて来て───……



「はっ!  ……何をそんな所でイチャイチャしてるんですか!  それは後にして下さい、と言ったでしょう!!」
「「!!」」

  と、何かを察知し振り返って来た先生に怒られてしまいましたわ。





  そんなわたくしに甘々なラファエル様も、わたくしを襲おうと計画したアマンダ様、鼻血男、以下二人に対しては、氷の刃のような鋭さを見せます。
  事情聴取をするのは先生のはずでしたのに、何故かラファエル様がその場を仕切りだしました。

「さてさて、まずはそこの薄汚い男達に問おう。縦ロールも含めて俺の可愛いミュゼットに少しでも触れた死にたい奴は誰だ?」
「「「~~~っ!!」」」

  縦ロールも含まれてしまったせいで全員の顔が真っ青になりました。

  ぶぉん、ぶぉん、ぶぉん……

「……そうか。全員か。そこの鼻血男は腕と縦ロール。他の二人は縦ロールに触れたんだな?」
「「「!?」」」

  ラファエル様の言葉に三人は驚愕の表情を浮かべます。

「だが、お前達を墓場に送る前にそこの女とどういうやり取りをしてこんな事を企んだのか教えてもらわなくてはな」

  アマンダ様が「ひっ!」と小さく悲鳴をあげます。

「あぁ、そうだな……正確に正しく話をしてくれれば墓場行きの手前くらいで俺も思いとどまれる……かもしれないなぁ……」
「「「!!」」」

  ラファエル様の目から“本気”しか感じ取れなかった彼らは、プライドも何もかもを捨ててペラペラと語りだしました。

「ちょっと!  あなた達っっ!?  止めて!  ラフ様、信じないでー!  コイツら嘘つきよ嘘吐きなのよーー!」

  アマンダ様はこの期に及んでまだそんな事を叫んでおりました。

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