聖女のわたしを隣国に売っておいて、いまさら「母国が滅んでもよいのか」と言われましても。

ふまさ

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「アーリン。よく頑張ったね。疲れたんじゃない?」

「……いえ、大丈夫です」

「そっか。もし疲れたんなら、抱っこしてあげようと思ったんだけど」

「…………」

 アーリンは、ぴたっと足を止めた。ルーファスが「ん?」と顔を傾け、アーリンの顔を覗き込む。しばらくして。

「つ、疲れました……」

 絞り出すように吐露された言葉に、ルーファスは頬を緩めた。

「そう? じゃあ」

 ルーファスは軽々とアーリンを持ち上げると、再び歩き出した。アーリンは恥ずかしそうに、ルーファスの肩に顔を埋めている。

「どうする? アーリンの部屋に行く? それともわたしの部屋に来る?」

「……ルーファス様の部屋に行きたいです」

「はは。今日は素直だね。いつもこんな風に甘えてくれたら嬉しいのにな」

 アーリンは答えず、決して離すまいとするように、ルーファスの首にまわした腕に力を込めた。



 ──そのころ。

 テンサンド王国では、国で唯一の聖女を他国に大金で売ったとの噂が広まり、国民が王都へと押し寄せ、暴動を起こしはじめていた。聖女アーリンへの暴言、暴力、死刑という脅迫まで行っていたことによって聖女が怒り、国を見捨てたと知った国民の怒りは、爆発した。

 どのような言い訳をしようと、国民の怒りは収まるはずもなく。国王は、国民の目の前で、処刑されることになる。

 聖女アーリンを怒らせた他の王族、貴族も例外ではなく、断罪は免れなかったという。


 テンサンド王国の国民のほとんどはクリーシャー王国に助けを求め、移住した。

 ──そして。


 国王も国民もいなくなったテンサンド王国は、滅んだ。

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