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アーリンはルーファスの自室の窓から一人、晴れ渡る空を見上げていた。正確には、結界を。城内にいるとき、アーリンはたいてい、自分の部屋か、ルーファスの部屋に居た。
ルーファスはいま、学園で勉学に励んでいる最中だろう。
ルーファスの部屋は、ルーファスの匂いがして、ひどく落ち着く。いつでも居ていいよ。そう言われたから、甘えることにした。最近、どんどんと自分が我が儘になっているのを感じる。でも、止められなかった。
「……早く逢いたいなあ」
ぽつりと呟く。朝に逢ったばかりだというのに、もう恋しくてたまらなかった。
もしブリアナがあんな事件を犯さなければ、ルーファスの恋人になど、なれなかっただろう。いまこうしてルーファスの部屋に居ることなど、できなかった。もっと言えば、ベリンダが聖女だと偽らなければ、こうしてクリーシャー王国に来ることすら叶わなかっただろう。
二人の女性の顔を脳裏に描く。決して礼など言わないが、それでも少しだけ、感謝したくなった。
「──そろそろ、教会に戻ろうかな」
昼休憩は終わりだとばかりに、アーリンが伸びをする。最近は、聖女であるアーリンに懺悔や相談をする者が増えてきた。頼られることは素直に嬉しいが、本当に自身が役に立てているのか。疑問ではあるが、やりがいはある。
部屋の扉に向かい、取っ手に手をかける。
左手の薬指にある指輪が、一瞬、日の光に反射し、きらっと光った。
アーリンはそれに愛おしそうに口付けをすると、軽い足取りで、部屋を後にした。
─おわり─
ルーファスはいま、学園で勉学に励んでいる最中だろう。
ルーファスの部屋は、ルーファスの匂いがして、ひどく落ち着く。いつでも居ていいよ。そう言われたから、甘えることにした。最近、どんどんと自分が我が儘になっているのを感じる。でも、止められなかった。
「……早く逢いたいなあ」
ぽつりと呟く。朝に逢ったばかりだというのに、もう恋しくてたまらなかった。
もしブリアナがあんな事件を犯さなければ、ルーファスの恋人になど、なれなかっただろう。いまこうしてルーファスの部屋に居ることなど、できなかった。もっと言えば、ベリンダが聖女だと偽らなければ、こうしてクリーシャー王国に来ることすら叶わなかっただろう。
二人の女性の顔を脳裏に描く。決して礼など言わないが、それでも少しだけ、感謝したくなった。
「──そろそろ、教会に戻ろうかな」
昼休憩は終わりだとばかりに、アーリンが伸びをする。最近は、聖女であるアーリンに懺悔や相談をする者が増えてきた。頼られることは素直に嬉しいが、本当に自身が役に立てているのか。疑問ではあるが、やりがいはある。
部屋の扉に向かい、取っ手に手をかける。
左手の薬指にある指輪が、一瞬、日の光に反射し、きらっと光った。
アーリンはそれに愛おしそうに口付けをすると、軽い足取りで、部屋を後にした。
─おわり─
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