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ハワードは口を半開きにしたまま、意味が理解できないといった様子で、しばらく沈黙していた。
「……離縁? ぼくを誰より愛しているきみが? そんなことできるわけないだろ?」
やっと出た台詞が、これだった。心底不思議そうにするハワードに、全員が呆れた双眸を向ける。しかし、すべてはこれまでの自身の行いのせいだと理解していたリネットは、根気強く言葉を重ねることにした。
「わたしはもう、目が覚めたの。僅かに残っていたかもしれないあなたへの愛情も、ルシアンを打たれたことによって、綺麗さっぱり吹き飛んでしまった。いまはただただ、大人のくせに子どものように駄々をこねるあなたが気持ち悪くて、憎くて、仕方ないの。わかる?」
「……? わからない。だってきみは、ぼくに心酔していたじゃないか。突然そんなこと言われても、ぼくの気を引きたいとしか思えない」
「普通に考えて、気を引きたい相手を、手が損傷するぐらいの力で殴ると思う?」
「それぐらい、ぼくに相手にされていなかったことに対して怒っていたってことだろう? 愛情の裏返しってやつで……まあ、この暴行にかんしては、後で慰謝料を請求させてもらうけど──」
「あのね。あなたが先に、ルシアンに暴行したのよ? それは理解してる?」
「ちょっと叩いただけじゃないか。ぼくなんか、口の中が切れてしまったんだよ? 程度がまるで違う」
リネットの眉が、ぴくりと動いた。
「……ちょっと? あなた、本当に欠片も反省してないのね。口の中に、大量に塩を詰め込んであげましょうか?」
低い声色に、ハワードは、ひいっと悲鳴を上げた。
「誰か! この狂った女を押さえ付けろ!」
しかし。
命に従う者は、一人もいなかった。
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「……? わからない。だってきみは、ぼくに心酔していたじゃないか。突然そんなこと言われても、ぼくの気を引きたいとしか思えない」
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「ちょっと叩いただけじゃないか。ぼくなんか、口の中が切れてしまったんだよ? 程度がまるで違う」
リネットの眉が、ぴくりと動いた。
「……ちょっと? あなた、本当に欠片も反省してないのね。口の中に、大量に塩を詰め込んであげましょうか?」
低い声色に、ハワードは、ひいっと悲鳴を上げた。
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