わたしにはもうこの子がいるので、いまさら愛してもらわなくても結構です。

ふまさ

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「ハワード様。さきほど、屋敷の主はぼくだとおっしゃっていましたが、この屋敷の持ち主はファネル伯爵ですよ? 理解してます?」

 マドリンが淡々と問いかける。馬鹿にされたと感じたのか、ハワードは「……うるさい! 黙れ!」と叫んだ。

「さらに申し上げれば、この屋敷で働く使用人のお給金を支払ってくださっているのも、ファネル伯爵です。つまりこの場において、私どもが優先すべき命はあなたのものではなく、リネットお嬢様のものなんですよ」

「……それが間違った命令でもか?!」

「間違ってはいないから、なおさらみんな、あなたの命に従わないのです」

「ぼくはいずれ、領主になるんだ! そうなれば、お前たちの正当な雇い主となるんだぞ!?」

「ハワード様はあくまで婿養子で、ファネル伯爵家の血筋の者ではありません。ゆえに爵位も継げませんし──リネットお嬢様と離縁なされば、あなたはその瞬間から、平民となんら変わらない身分となります。それは理解しておいでで?」

 ハワードが、はっと鼻で笑った。

「たかだか使用人の分際で、ぼくにそんな口を聞くとは愚かだな。リネットが本気でぼくと離縁すると思ったのか? 正気に戻ったリネットに、すぐに解雇されるだろうな」

 まるで話が通じない。というより、自分に都合のいい解釈しかしないハワードに、らちがあかないと判断したリネットは、馬車の用意を命じた。

「ベイル子爵も交えてお話したかったけど、待ってられないわ。先に、お父様たちと話し合いをします。縄はそのままで、ハワードを馬車に詰め込んで」

 護衛の男が、承知しました、とハワードを肩に担ぎ上げた。ハワードはここにきてもまだ、リネットの本気が信じられなくて、キョトンとしていた。

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