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「わたし、知ってるの。二人が愛し合っていること。でも、証拠はなにもないから、慰謝料なんて請求しないわ。安心して」

「……っ!!!」

 どうでる。どう答える。認める。認めない。アデルが僅かに息を呑む。

「なにを言っているの? そんなことあるはずないじゃない!」

「そうだよ。きみも知っているだろう? ダーラ嬢とは、数えるほどしか顔を合わせことがない。誰からそんなでたらめを聞いたんだ!」

 アデルは落胆した。それから幾度となくやり取りをしたが、二人は一向に認めようとしない。

 ──だから。

「わたしね。事故に遭ってから、いわゆる植物人間状態だったでしょう? でもね、耳だけは機能していたのか、みんなの声が、わたしに語りかけてくれる声は、聞こえていたの」

 その台詞に、はじめて二人は黙り込んだ。静寂が庭を包んだが、破るようにアデルは続けた。

「ねえ、全部。全部、聞いていたの。この意味がわかる? 疑うなら、二人の会話の再現、ここでしましょうか?」

 セドリックが「う、嘘だ!」と叫んだ。

「そ、そんなこと、ありえない!」

「疑っているのね。なら、言ったとおりに、覚えている限りの二人の会話を再現してみるわ。間違っていたら、遠慮なく指摘して」

「な、なにを……っ」

 アデルはセドリックを真っ直ぐに見据えたまま、口を開いた。

「あなたは、ダーラにこう言っていたわ。このままアデルが死ねば、きっとなんの障害もなく、きみと一緒になれるのにと」

 二人が大きく目を見開いた。それはアデルにとって、追い風となった。

 やっぱり、あれは現実だったと。

 自信を持ったアデルは、ダーラに視線を移した。

「セドリックに軽蔑したかと聞かれたあなたは、同じことを思っていたと答えたわよね。このままアデルが生きていたら、セドリックがずっと縛られたままなんじゃないかって」

「ち、違っ……」

 ダーラが、血の気の引いた顔を左右にふる。

「なにか違った? そのあと、セドリックがわたしが死んでくれた方が世間体もいいのにって台詞もあったと思うのだけれど、わたし、記憶違いをしているのかしら。でも、大まかにはあっていると思うから、それでいいわよね」

 押し黙る二人を、交互に見る。良かった、これでまともに話し合いができると、アデルはつい先ほど述べた言葉を口にした。

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