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 テッドの好意は丸わかりで吹き出しそうだったけど、ここがあの乙女ゲームの世界と知ったときから、デリアは決めていた。

(あたしの相手に相応しいのは、第一王子のクライブ。イケメンなイアンとセオドアも捨てがたいけど、あたしを好きになるだけならせておいて、最後はクライブを選ぼーっと)

 特待生となるための勉強は大変だったけど、その努力に見合う未来を知っているので、デリアはその日を目指し、ひたすら頑張った。

 そして訪れた、王立学園の入学式の日。

 テッドからわざとはぐれ、あのイベントを待ちわびる。クライブの顔をはじめて間近で拝んだとき、あまりの綺麗さに、息を吞んだ。

(……これが、あたしのものになるんだ)

 ぼーっとしていると、クライブは去って行ってしまった。はっとしたとき、クライブが向かっていった先に、イアンがいることに気付いた。

「……イ、イケメンっ」

 並ぶ国宝級の顔面に見惚れていると、二人はどこかへ行ってしまった。追いかけようとしたが、もう一つのイベントがあることを思い出し、はたと足を止めた。

(迷子になって、セオドアに見つけてもらわないとっ)

 人波からわざと外れ、きょろきょろとあたりを見回す。セオドアを探すが、見当たらない。そうこうしているうちに、テッドに見つかってしまった。

「デリア! 良かった……やっと見つけた」

 心底ほっとしたような平凡な顔に、デリアが心の中で舌打ちする。同じ過ちを繰り返さないためにも、この世界では、いい子を演じると決めたから。

「心細かったよ、テッド」

 目を潤ませれば、テッドは頬を赤く染めた。チョロいなあ。デリアは胸中で吐き捨てた。

(ま、当然だけど)

 セオドアには会えなかったが、同じ学園にいることは確かだから、そのうち会えるだろう。とりあえず、本命のクライブとの大事な出会いは果たしたから、よしとしよう。デリアはテッドと手を繋ぎ、入学式が行われる式場へと向かった。




 新入生代表として、壇上の近くに座るクライブ。女子生徒たちが遠くから見惚れているのが伝わってきて、優越感に浸るデリア。

(ふふ、クライブったら。なんか少しそわそわしてる。初恋の人と同じ顔をしているあたしのことが気になって仕方ないのね)

 頭の中はきっと、あたしのことでいっぱいだろう。そう思うと、にやけが止まってくれなかった。

(まあ、それはイアンも同じ……あれ。そういえば、イアンがいないな。いつもクライブの傍にいるのに)

 視線をうろうろさせる。後ろかなと振り向いたとき、式場の扉が開いた。

 そこから現れたのは、三人目のイケメン──セオドアだった。

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