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第67話 滋賀県② 忍者屋敷、近江神宮、彦根城
しおりを挟む「どうじゃ、似合っておるかのう?」
「はい! とてもよくお似合いですよ!」
「……とてもよく似合っているよ」
午後は滋賀県にある甲賀の里忍術村へとやってきている。ここでは日本の忍者の資料が多く展示されており、忍者の歴史などを学ぶことができる。
そして子供忍者体験といった形で、忍者の装束を着て手裏剣投げや綱渡り、からくり屋敷などを楽しめるのだが、子供向けに忍者の衣装の貸し出しなどをしている。
その忍者装束がミルネさんにものすごく似合っているのだ。う~ん、外国人の美少女に忍び装束って意外と合うんだな……
ミルネさんの翻訳魔法による日本語の口調もなんとなく忍者っぽいし、良く似合っている。忍び装束のおかげでそのエルフの耳も隠れているし、普通に隠密魔法を使わずに楽しめそうだ。
「さっきの資料館で見たが、忍者とはとても格好いいのじゃな。自らを忍びつつも悪党どもを成敗する、まさに隠れた勇者のような存在じゃ!」
「……まあ忍んではいるけれど、善行をするわけじゃないから微妙なところかな」
なぜか外国人からの忍者に対する評価って謎に高いよな。実際にやっていることは諜報と暗殺だけれど、世を忍ぶというところが刺さるのかもしれない。もちろん俺も忍者とかは大好きだぞ。忍者と言えば三重県の伊賀とここ滋賀県の甲賀が有名だ。
そしてこの甲賀という漢字だが、正確には『こうが』ではなく『こうか』と読むのだ。事実ここの地名は甲賀市と読む。なぜか誤読されたまま『こうが』として伝わって、今では誤読の方が正しい読みとして認識されてしまっているからな。
ぶっちゃけ俺もこうがと呼んでいた。漫画とかでも普通にこうがとして読むから、こっちが正しいと思っちゃうよね。
「とても面白かったのじゃ! 特にあのからくり扉というものが面白かったのう! 城に戻ったら、妾の部屋にも作ってもらうのじゃ!」
「……まあほどほどにね」
なんだかんだで、ミルネさんも年相応の女の子のように楽しんでくれたみたいで良かった。確かにああいった仕掛けって厨二心をくすぐるよね。でも西洋のお城にはあわない気がするけれどな。
「ここが有名な近江神宮ですか。美しい朱色ですね。一度は来たいと思っておりました」
「百人一首の聖地として有名だもんね。百人一首をたしなんだことのある人は行きたい場所だよ」
ここ近江神宮は百人一首の第一首として選ばれた天智天皇を祀った神社である。まあ、実際には天智天皇が詠んだ歌ではないという説が有力らしいけれどな。
ただの朱色の美しい神社というだけでなく、競技かるたのチャンピオンを決める名人位とクイーン位決定戦や高校選手権大会が開かれたりと、かるたの聖地としても有名だ。
最近ではかるたの漫画の舞台にもなっていたし、神社というよりもそちらの方が有名になっているかもしれない。今では滋賀県の立派な観光スポットの一つとなっている。
「百人一首とは何なのじゃ?」
「昔の有名な100人が詠んだ歌だよ。歌を詠みながら、どちらが速くこれくらいの札をとれるかを競う競技になっているんだ。あとで実物を見せるね」
「なるほど、札を使った遊戯というわけじゃな」
「まあ、そんなところかな」
「いえ、かるたは遊戯ではなくスポーツ競技と言った方が正しいですね。あれは遊戯とは別物です」
「「………………」」
良く分からないが、かるたをやっていた喜屋武さんには譲れないものがあるようだ。確かに少しだけ動画を見たことはあるが、あれは激しいスポーツと言っても過言ではなかったし、訂正しておこう。
「おお、あの可愛らしい生き物はなんなのじゃ!」
「あれはひこにゃんだよ。この彦根のマスコットキャラクターとしてとても有名だね」
近江神宮に続けて彦根城へとやってきた。
ここ彦根では地名や彦根城よりもこのゆるキャラの方が有名になってしまった気もする。彦根城では毎日数回、ひこにゃんによるショーが行われている。その愛くるしい顔で可愛らしく踊るので、子供たちや女性には大人気だ。
彦根藩の第二代目藩主である井伊直孝が大きな樹の下で雨宿りをしている際に白い猫が手招きをしており、近付いたところ元いた大木に雷が落ちて、白い猫のおかげで助かったことが元となっているらしい。
「ひこにゃんも有名だけれど、あの白くて大きな城も有名だよ」
ひこにゃんの陰に隠れがちだが、彦根城の天守は国宝として指定されている有名なお城だ。それに彦根城から見える琵琶湖の景色もとても美しい。
他にも滋賀県には比叡山延暦寺や安土城などといった織田信長ゆかりの地がいくつかある。安土城の天守は焼失して跡地となってしまっているが、歴史上とても有名な城でもある。
今回は日本の歴史にそれほど詳しくないミルネさんを案内するということで省いたが、滋賀県を観光するならぜひ比叡山延暦寺や安土城も一緒に訪れていきたいところである。
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