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最終話 それから……
しおりを挟む「忙しすぎる……」
「ジ、ジンおじさん、大丈夫!?」
「ジ、ジンさん、大丈夫ですか!?」
今日は本当に久しぶりの休日だ。確か前回の休みはひと月前くらいだったかな……
この魔王軍、元の世界も真っ青な超ブラック企業であった……
「おい、おっさん。こんなところで倒れていたら邪魔だぞ」
「ちょっとアレク! ジンさん、よかったらお布団で寝てはどうですか?」
「ジンおじさん、お布団しくからちょっとだけ待っててね!」
「ああ、もう大丈夫。あとで少し寝るから布団は出さなくていいぞ。ルトラもビーネも本当に優しくて良い子だな。ほら、2人にお土産だ。甘いお菓子を持ってきたから、2人で仲良く食べるんだぞ」
ああ~のんびりとこうやって子供達と過ごすと日々の疲れが癒されていくなあ~
どこぞの日曜日のお父さんみたいなのはほっとけ!
「おい、おっさん! 俺の分は!」
「ちゃんとアレクの分もあるから安心しろ。そういや、いつも遅くまで訓練しているって聞いたぞ。人族と魔族の戦争は停戦したんだし、そこまでして訓練する意味はないからな」
「いいんだよ! 人族との戦争がなくなったからって関係ない。何かあった時は今度こそ俺が2人を守るんだからな!」
「そうか……いい心がけだな。応援しているぞ」
「ふんっ……」
なんだかんだで俺がこの世界に召喚されてから1年が過ぎた。
勇者を倒して、帝国の影の一族を拘束してから、戦争が終結するまでは本当に早かった。黒幕である影の一族とその協力者をすべて捕らえて、証拠付きの映像を添えつつ、人族の各国のお偉いさんのもとに転移魔法で無理やり届けたら、話はすぐにまとまった。
……まあ、帝国の中心にある巨大な城を白昼堂々派手にぶっ壊したことも関係しているのだろう。
影の一族とが帝国の国王ともつながっていることが分かって、ちょっとイラついたから力を見せる意味で派手にやっちゃたんだよね……まあ後悔はしていない。もちろん城の中にいた人はちゃんと避難させたぞ!
人族の中でも一番大きく、この戦争でも影響力のある帝国の中心にいきなり表れて、王城をぶっ壊した魔王……まあそんなやつが停戦を求めていたら従うしかないよね。下手をしたら自分の国の城に突然現れていきなり城をぶっ壊せるんだから……
まあそんな感じで人族側と魔族側で停戦協定がすぐに結ばれたわけだ。
『魔王様、お休みのところ大変申し訳ございません。実は魔王様にご相談したい出来事がございまして!』
『なんだ、緊急事態か!』
『すみません、またジルベのやつが勝手に開拓地のほうで計画とはまったく別の方向に進んでおりまして……』
『……もうあいつの好きにさせておこう』
そう、最近になって魔王という俺の仕事が忙しいのは新しい開拓地のことについてだ。人族と魔族で停戦協定を結んだのはいいが、これまでに人族に土地を奪われたこともあって、魔族側は土地や畑が足りていない。
多少は人族のほうから返還された村はあるが、それでもまだ土地や畑が足りていないので、魔族領のほうで新しい土地を開拓し始めた。
ジルベは今まで人族へ復讐しようとしていたエネルギーが人族との停戦協定によって行き場をなくしていたので、それを開拓に向けて発散してもらおうと思っていたのだが、俺やデブラーの想像以上に向いていたようで、ジルベの部隊と一緒に想像以上のスピードで開拓を進めていった。
……しかし、たびたび開拓計画と全然違う場所へ進んでいくから注意が必要なんだよな。
『い、いえ。さすがにそういうわけには……』
『わかった、わかった。あとでジルベには念話で連絡を入れておく』
『はい、ありがとうございます!』
ジルベのやつは一応魔王である俺の言うことには従っている。たまに強制的に訓練をさせられるが、それはオッサンにも良い運動になるからな。
勇者のやつは勇者を拘束した一月ほど後に勇者返還の儀によって、元の世界へと返還した。勇者召喚の儀と返還の儀の方法については、あのあと影の一族より強制的に聞き出したが、基本的には魔王召喚の儀と同じようなものであった。
返還の儀に必要な魔鋼結晶は帝国側で大量に隠し持っていたが、いろいろと情報を集めたり、本当に問題ないかを確認していたため多少は時間がかかってしまった。
ちなみに返還の儀をおこなう時には、勇者は半分くらい精神的に病んでいた。そりゃ運動とかもまったくせずに、同じ場所に拘束されて日々食事と排泄をするだけだったら精神的にもおかしくなって当然だ。
彼がこの世界の戦争で必要以上の魔族を自分のために虐殺してきたことやジルベ達の気持ちを考えると完全に許すことは難しいが、彼も無理やりこの世界に召喚されて戦争をさせられた被害者といえば被害者だからな。せめて元の世界では社会復帰できることくらいは祈っておこう。
『魔王様、お休みのところ申し訳ございません』
『どうした、ルガロ』
『例の交渉は無事に成立しました。サンドル殿が私と魔王様と明日か明後日の夜にでも一緒に食事はどうかと……』
『おお、よくやってくれたな。それでは明日の夜にそちらの屋敷に行くと伝えておいてくれ』
『かしこまりました』
よしよし、これはいいお誘いだ。国のお偉いさんと食事をするのは正直仕事で面倒だが、サンドルとルガロと飲みに行くのは普通に楽しいからな。うまい酒でも用意しておくとしよう。
停戦協定が成立したあとは人族との取引も始まっている。基本的な交渉は他の者に任せているのだが、要所では俺が直接赴くことも多々あるわけだ。国のお偉いさんと話すのマジめんどい……こちとら中身はただのオッサンなのにな。
ルガロは人族を恨んではいたが、あの戦争は影の一族が原因でいろいろと思うこともあったようで、今は進んで人族との交渉に関わるようになった。意外なことにある街の領主のサンドルと気が合うようで、たまに俺がいない時にも2人で酒を交わすこともあるらしいから驚きだ。
結局影の一族のやつらや黒幕どもは人族の他の連合国によって処刑されたらしい。実際にこの戦争を始めたやつらはすでに死んでおり、その子孫が代々その役割を継いでいたようだが、それを止めようとせずに自分達の利益のために戦争を利用していたので自業自得だ。
『ジ、ジン様! お休みのところ申し訳ございません!』
『リーベラか。どうした?』
『い、いえ。魔王様は今日お休みと聞いております。わ、妾も休みですので、もし魔王様がよろしければ妾とデ、デートなどはいかがと!』
『……ああ、リーベラ。本当に悪いんだけど今日は本当に疲れているからちょっと休もうと思っているんだ』
『し、失礼しました! 忘れてください!』
『悪いな。でも誘いはとても嬉しかったよ。今度時間ができたらデ、デートでもしような』
『は、はい! 楽しみにしております!』
そう、なぜかリーベラとサキュバスのマドレからは猛烈なアプローチを受けている。本当にこんなオッサンのどこがいいのか、自分ではまったくわからないんだけどな……
しかしながら、今のところは2人のアプローチにどう答えていいかよくわかっていないオッサンがいる。とにかく今はやることが多すぎるんだよな。
俺もそろそろ2人のことやこの先のことをちゃんと考えなければならない。魔鋼結晶は十分にあるので、元の世界に帰ることも含めてな。
だがまあ今は……
「ちょっと、アレク! ビーネの分のお菓子を食べたでしょ!」
「うわ~ん! アレクお兄ちゃんのバカアアア!」
「わ、わりい! ほら、ビーネ、こっちのやつを一個多くやるからな!」
今は子供達とのささやかな日常を楽しむとしよう!
そしていつかはこの魔族の子供達と人族の子供達が手を取りあって一緒に遊べる、そんな世界を作っていきたい。
1年前まで争いあっていた人族と魔族がすぐに手を取りあえるとは思っていないが、300年前には人族と魔族で共存できる国があったのだ。少しずつだが、それを目指していくとしよう。
今はめちゃくちゃ忙しいが、そのためにもオッサンは頑張るとしよう!
オッサンはやる時にはやるオッサンだからな!
応援ありがとうございます!
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みんなの感想(7件)
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連載お疲れ様でした!他の連載作品も楽しみに読ませていただいております!
最後までお付き合いいただきありがとうございます(*´꒳`*)
他の作品も含めてまだまだ書いていきますので、どうぞよろしくお願いしますm(_ _)m
主人公は、大魔法を連射しまくっていたが、その狙いは勇者本人ではなく周辺の〇〇〇であった。魔法の影響で〇〇〇の状態が変化し、やがてそれは、絶大な威力を持ちながらも魔力を伴わない単なる自然現象or物理現象として勇者に襲いかかる・・・・!
さて、この予想、当たっているでしょうか(笑)?決着を楽しみにしています!
コメントありがとうございます(о´∀`о)
さてはてどうなることでしょう!
続きをお楽しみに!
これはマジモンの戦争。卑怯も汚いも無い。主人公の言うとおりだと思います。ならば、相手も卑怯な事・・・人質作戦や見せしめ虐殺を行う可能性があることを考慮しておくべき、と考えますが、主人公はその辺の対策をしているのでしょうか?
勇者は性悪らしいので、何か悪い予感が・・・・・。
コメントありがとうございます(^人^)
リアルな戦争だと何でもありですからね…
人質あたりは余裕でとってきそうなので気をつけねば…