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第三章 異世界の馬車窓から

トモ家の書

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翌日、再びトモ家へ。
今日は書を見せてもらう事になっている。

流石にずっと正座はキツイので、ことわって胡座をかき、じっくり読む事にした。

表紙には【伴 長信】と記名されている。
えー、本名じゃないでしょう、コレって、などと思いつつ中を読んでいく。


*****


【天正十年六月早朝

常宿としている本能寺で賊の襲撃に遭う。

賊の旗印は桔梗紋、日向守。

迎撃するも多勢に無勢、当方の手勢は客人も含み少数。
上様をお護りすべく、敵を倒しつつ探すも、やがて火の手が上がる。

女中に尋ね、上様の行く先を検討するも、向かう先は種子島を収める小部屋。
急ぎ駆け付けるも爆風に煽られ気を失う。

意識が戻り、所在を確認しようにも身体が動かず、床に留まり辺りを見回す。
異装の伴天連に取り囲まれ動くに能(あた)わず………】


「上様、上様は何処に……」
視線を彷徨わせ姿を探すと、隣で倒れている若い男から応えがあった。

「その声、伴か」
元服前程の若い男だ。

「我らは今どこにいるのだ?
かような場所は見た事もないぞ」
若い男に面影を見、もしやと尋ねてみる。

「……上様?…上様なのでしょうか?」
「何たわけた事を申しておる、うぬは我がわからぬのか」
その答えに伴は我が目うたがった。

確かに見た目は若者だが、身から漂うモノがその若者を、自分の主君だと言っているように感じる。

「しかし何故我は石の床に転がっておる?
周りの者は何者ぞ?」
問いかけられるが、伴はその答えを持ってはいない。

「周りの者共は何を言っておる?
伴天連供の言葉とはまた違って聞こえるが」
そもそも伴天連の言葉は一切わからないので、違って聞こえると言われても、答えようがない。

「それにこの周りに浮いている小さき者は何ぞ?」
小さき者…言われて何とか頭を動かし、主君の周りを見てみると、いくつかの光が倒れる主君を取り囲んでいる。

「ふむ……この妖供………」


【遠きこの国と妖供の和合の為、主君共々この地へ喚ばれる。
外つ国の言の葉を操り、武力を用い争いを収め、会合にて和平を結ぶ。

我等と別に喚ばれし者二名。
共に国許に戻る事能わず。
領地を拝領し、主君が町づくりを始める。
名を【尾張】とす。

吾の務めを全うする為、地の者と交わるが、この地独自の【運命の人】と言うのに阻まれる。

故に我が一族への家訓としていくつかの取り決めをす……】

うん、何だろう、こちらの世界の言葉で書いているからか、微妙な言い回しになっているけれど、おかげで完全な古語じゃないから、わかりやすい……かな?
ガチな古語で、しかも日本語…戦国時代の巻物みたいに書かれていたら、絶対に読めなかったと思う。
便利だねぇ、異世界って。

しかし、運命の人に阻まれるって何だろう?
そもそも運命の人って、僕の中では一目惚れした相手に言う言葉ってイメージがあるんだけど、多分違うんだろうな。
しかも家訓ってのが…


・運命人と結ばれるの仕方ないけど、出会う前、先立たれた後などに、一人でも多くの子を残すこと
・運命の人は仕方ないとして、必ず人との子供を作ること
・ハーフの子供は主の下働き、もしくは町の発展に尽くすこと
・人の子は必ず家業を継ぎ、他国の情報収集で国益を増やすこと
・たとえ捕らえられても、自国の情報を漏らすべからず


……何があるんだろう?
これは読むだけではわからないな。
ハルさんに聞いてみても大丈夫かなぁ。
思いっきりプライベートな事だろうから、聞くだけ聞いて、無理なら諦めよう。

ちょっともやっとするけどね。





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