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俺と彼女と営みの巣
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「……」
また靄がかかったような気持ちに包まれながら、出されたアイスコーヒーとやらに口をつけてみると、これがなかなか美味しくてビックリする。
「!!」
さっき村川くんは「水出しコーヒー」とサラッと言っていたけど、市販されているアイスコーヒーともコーヒーチェーン店で飲むコーヒーとも味や香りが断然違う。
「しかも飲みやすっ!!」
(何これ?! 水でコーヒー作るとこんな味になるのか?っていうか村川くん、普通になんでもない顔して麦茶出す感覚でコレ出してきたって何者?!)
夏実もビックリしてるのかと予想しながら隣を向いてみる。
夏実は村川くんから渡されたミルクを入れてストローで飲んでいたのだが
「わあ! 美味しい!! 私、今コールドブリューハマってるんですよ!」
……どうやらこういう系の飲み物を既に知っていたようだった。
(しかも、水出しコーヒーってそんな呼び方するんだ。へぇ~)
「コールドブリューって今人気だからねー。スッキリした飲み口だし夏向きっていうか、ここ3年くらい夏場は毎日これ作って飲んでるんだ」
村川くんは、本当になんでも無いような表情で夏実の向かいに座り、イケメン笑顔を彼女に見せる。
「コールドブリューって自分で作るんですか?」
「水出し用のピローバッグも売ってるけど、これは専用ボトルに豆を直接入れてるよ。コーヒー豆を俺が挽いて勝手に自分で作ってる」
「ますます凄い!! 村川さんってかっこいいですね!!」
「あはは♪ かっこいいのは妻の方だよ。妻が家で焙煎したものを、俺が勝手に挽いて勝手に水ドバドバーって入れて冷蔵庫にぶち込んどくだけだから」
「素敵♪ 素敵過ぎる!! それは美味しいはずですよぉ~♪ 夫婦愛なんですね~このコーヒーは♡ ミルクなんか入れなきゃ良かったなぁ」
「夫婦愛だなんて大それたものじゃないよ。間違ってはいないけどね♪
ちなみに今日のコーヒーはミルク入りもオススメだから夏実ちゃんは胸を張ってミルク入りを飲んでいいんだよ」
イケメン笑顔の彼と、それに目をキラキラさせながらポーッとなっている夏実との会話に俺は何も挟む事が出来ず
(へぇ~奥さんカフェ店員さんだもんねぇ。そりゃ村川くんも詳しくなるよなぁ)
……なんて事を思いながらチョコレートを1つ摘んで口に入れた
(このチョコレートも美味い! コーヒーとめちゃくちゃ合う!!)
「最近はとにかく甘いチョコよりは妻のコーヒーに合う美味しいチョコレートを探すのが半ば趣味みたいになっちゃって。それで広瀬さんの紙袋のロゴ見て勝手にテンション上がっちゃったんです。すみません」
村川くんはコーヒーの話題から手土産のスイーツショップの話に戻して、「だから変な顔してすみませんでした」と、俺にさっきのガッカリ顔について謝ってきた。
「あぁ、別にいいよそんなの」
(っていうか、俺はチョコレート専門店が二号店として出来た事知らなかったし。たとえ夏実に教えてもらってチョコレート買ったとしても夏場に電車で1時間かけて持ってくるのもどうかと思うし)
「でもいつか食べてみたいなぁそのお店のチョコレート。テレビで観た時もめちゃくちゃ美味しそうだったんです」
ガッカリ顔を謝った癖にやっぱり食べたかったと村川くんは眉を下げている。
(どんだけチョコレート好きなんだ、この後輩……)
「本場で修行したショコラティエのチョコレートってやつですよね? 紹介されてたのって。
私はそのテレビ観てなかったんですけど、地元ではめちゃくちゃ話題上がってますよ!」
夏実は、イケメン笑顔に負けないくらいにこやかな表情を村川くんに見せている。
(ショコラティエって、笑顔で言えるようになってる…………)
どうやら夏実は「ショコラティエのチョコレート」に過剰な反応をしなくなったみたいでそこはホッとした。
「そうそう、今食べてるチョコレートの店のも有名なショコラティエの商品なんだけど郊外エリアに敢えて出してる本格的な店ってなんか気になっちゃって。オープンしたばかりだから俺も行ってみたいけど足が向かないっていうか」
「分かりますぅ~♪ 今もめちゃくちゃ並ぶから」
「やっぱり地元の人もなかなか買えないのかぁ~」
コーヒーに続いてチョコレートの話まで、2人して楽しそうな会話をしていたから、俺もなんか喋らないといけないな。と思い
「本店の焼き菓子はしょっちゅう夏実と買うけど人気だよ。チョコレートのフィナンシェとか」
と応戦してみた。
「あ、そうなんですよ~チョコ好きの村川さんにめっちゃオススメです♪」
夏実も薦めるフィナンシェは、彼女の大好物で昔からよく買ってやっている。
他の焼き菓子も人気で、俺がというよりは薗田家の面々が好きなスイーツショップで、俺は「買わされる側」の人間だったりする。
特に晴美さんのご機嫌取りに利用してるから、俺が何度買いに行っても何個買っても必ず物の見事にサーッとその場から焼き菓子が消え去ってしまい、俺はそれらを一度も口にした事はない。そんなパターンのヤツだ。
「それめちゃくちゃ気になるじゃないですか! あの詰め合わせにフィナンシェ何個入ってるんですか?」
村川くんはガタッと椅子から立ち上がって俺に身を乗り出してきた。
また靄がかかったような気持ちに包まれながら、出されたアイスコーヒーとやらに口をつけてみると、これがなかなか美味しくてビックリする。
「!!」
さっき村川くんは「水出しコーヒー」とサラッと言っていたけど、市販されているアイスコーヒーともコーヒーチェーン店で飲むコーヒーとも味や香りが断然違う。
「しかも飲みやすっ!!」
(何これ?! 水でコーヒー作るとこんな味になるのか?っていうか村川くん、普通になんでもない顔して麦茶出す感覚でコレ出してきたって何者?!)
夏実もビックリしてるのかと予想しながら隣を向いてみる。
夏実は村川くんから渡されたミルクを入れてストローで飲んでいたのだが
「わあ! 美味しい!! 私、今コールドブリューハマってるんですよ!」
……どうやらこういう系の飲み物を既に知っていたようだった。
(しかも、水出しコーヒーってそんな呼び方するんだ。へぇ~)
「コールドブリューって今人気だからねー。スッキリした飲み口だし夏向きっていうか、ここ3年くらい夏場は毎日これ作って飲んでるんだ」
村川くんは、本当になんでも無いような表情で夏実の向かいに座り、イケメン笑顔を彼女に見せる。
「コールドブリューって自分で作るんですか?」
「水出し用のピローバッグも売ってるけど、これは専用ボトルに豆を直接入れてるよ。コーヒー豆を俺が挽いて勝手に自分で作ってる」
「ますます凄い!! 村川さんってかっこいいですね!!」
「あはは♪ かっこいいのは妻の方だよ。妻が家で焙煎したものを、俺が勝手に挽いて勝手に水ドバドバーって入れて冷蔵庫にぶち込んどくだけだから」
「素敵♪ 素敵過ぎる!! それは美味しいはずですよぉ~♪ 夫婦愛なんですね~このコーヒーは♡ ミルクなんか入れなきゃ良かったなぁ」
「夫婦愛だなんて大それたものじゃないよ。間違ってはいないけどね♪
ちなみに今日のコーヒーはミルク入りもオススメだから夏実ちゃんは胸を張ってミルク入りを飲んでいいんだよ」
イケメン笑顔の彼と、それに目をキラキラさせながらポーッとなっている夏実との会話に俺は何も挟む事が出来ず
(へぇ~奥さんカフェ店員さんだもんねぇ。そりゃ村川くんも詳しくなるよなぁ)
……なんて事を思いながらチョコレートを1つ摘んで口に入れた
(このチョコレートも美味い! コーヒーとめちゃくちゃ合う!!)
「最近はとにかく甘いチョコよりは妻のコーヒーに合う美味しいチョコレートを探すのが半ば趣味みたいになっちゃって。それで広瀬さんの紙袋のロゴ見て勝手にテンション上がっちゃったんです。すみません」
村川くんはコーヒーの話題から手土産のスイーツショップの話に戻して、「だから変な顔してすみませんでした」と、俺にさっきのガッカリ顔について謝ってきた。
「あぁ、別にいいよそんなの」
(っていうか、俺はチョコレート専門店が二号店として出来た事知らなかったし。たとえ夏実に教えてもらってチョコレート買ったとしても夏場に電車で1時間かけて持ってくるのもどうかと思うし)
「でもいつか食べてみたいなぁそのお店のチョコレート。テレビで観た時もめちゃくちゃ美味しそうだったんです」
ガッカリ顔を謝った癖にやっぱり食べたかったと村川くんは眉を下げている。
(どんだけチョコレート好きなんだ、この後輩……)
「本場で修行したショコラティエのチョコレートってやつですよね? 紹介されてたのって。
私はそのテレビ観てなかったんですけど、地元ではめちゃくちゃ話題上がってますよ!」
夏実は、イケメン笑顔に負けないくらいにこやかな表情を村川くんに見せている。
(ショコラティエって、笑顔で言えるようになってる…………)
どうやら夏実は「ショコラティエのチョコレート」に過剰な反応をしなくなったみたいでそこはホッとした。
「そうそう、今食べてるチョコレートの店のも有名なショコラティエの商品なんだけど郊外エリアに敢えて出してる本格的な店ってなんか気になっちゃって。オープンしたばかりだから俺も行ってみたいけど足が向かないっていうか」
「分かりますぅ~♪ 今もめちゃくちゃ並ぶから」
「やっぱり地元の人もなかなか買えないのかぁ~」
コーヒーに続いてチョコレートの話まで、2人して楽しそうな会話をしていたから、俺もなんか喋らないといけないな。と思い
「本店の焼き菓子はしょっちゅう夏実と買うけど人気だよ。チョコレートのフィナンシェとか」
と応戦してみた。
「あ、そうなんですよ~チョコ好きの村川さんにめっちゃオススメです♪」
夏実も薦めるフィナンシェは、彼女の大好物で昔からよく買ってやっている。
他の焼き菓子も人気で、俺がというよりは薗田家の面々が好きなスイーツショップで、俺は「買わされる側」の人間だったりする。
特に晴美さんのご機嫌取りに利用してるから、俺が何度買いに行っても何個買っても必ず物の見事にサーッとその場から焼き菓子が消え去ってしまい、俺はそれらを一度も口にした事はない。そんなパターンのヤツだ。
「それめちゃくちゃ気になるじゃないですか! あの詰め合わせにフィナンシェ何個入ってるんですか?」
村川くんはガタッと椅子から立ち上がって俺に身を乗り出してきた。
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