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可愛い彼女と俺の恋
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「そうだよー。だって2人の為の新居なのに私達の事も頭に入れてくれたって事でしょ? やるじゃん!」
「俺は単に夏実が喜ぶかと思って提案しただけだし」
「しかもなつこからじゃなくておっさんから提案したの? 神じゃん!」
「神…………」
それも褒められてるって意味か?……と、俺はほぼ無言でいる滉の方を向いた。
「俺らは助かるけど。おっさんは本当にそれでいいのか?」
静かにジンジャーエールを飲み、軽く息を吐いてから滉は冷静に俺に訊いてくる。
「この家には取られて困るようなものはないし、部屋を荒らさなけりゃ学校帰りに来ても別に構わないよ」
「んな事しねぇし」
「知ってる。夏実がお前らを信用してるって事はそういう意味だよ」
一応進学校と評される高校に通ってるコイツらだ。親友が彼氏と同棲してるマンションの一室でそんな行動とる筈が無いと、高校OBの俺としてもそう願いたい。
「信用といえばさぁ、おっさんの信頼度って高くない?
さっき滉の家へ迎えに行った時に滉のお母さんから『広瀬さんにくれぐれもよろしく』ってめちゃくちゃ言われたよ。広瀬さんっておっさんの事でしょ?」
「そりゃまぁ、俺の名字広瀬だし滉の両親とは面識あるから」
「そう、親父が『広瀬さんに手土産渡した方がいいんじゃないか』ってめちゃくちゃ気を遣おうとしたから止めといたよ。俺と姉ちゃんで」
「そっか……そりゃどうも」
別に野崎家からの手土産は要らないが、滉だけじゃなく野崎さんまで拒否ったとみると「俺は野崎さんにとっては会社の先輩なのに塩対応過ぎる」と軽いショックを受ける。
夏実が滉の実家手伝いを始めた時に保護者面して「夏実をよろしくお願いします」と言うのも烏滸がましいと思ったのだが、結局仕事帰りに電器店に寄ってそれなりの挨拶を両親としている。滉の両親も俺がその時に娘の上司でもあると知ったようで逆に恐縮されてしまった。
盆休みの連休後にも手伝いに行くと言った夏実を野崎夫婦は好意的に評価してくれており、俺も俺で「無償の手伝いの間に色々厳しく経験させてやって下さい」と話したものだから、「夏実ちゃんも良い子だけど広瀬さんもいい人だ」と30と18の同棲カップルという一見異様な俺らを温かく見守ってくれるようだ。
「相手に対してなるべく誠意ある対応や行動を示して、信用や信頼を勝ち取って円滑に物事を進めていくのが得なんだよ。人間関係においてそれが一番重要だと俺は思うから」
まだ高校生のこいつらにこんな話、おっさん臭いと思われるだろうが、茉莉の言葉の返答としてそれを言ってみたつもりだった。
「ふぅん」
だが俺の言葉に対して滉が菓子に手を伸ばしながら短い返事をしたのが少し気になる。
(コイツ、ずっと無言でこの空間に居続けるのかと思ってたけど一応俺の話は聞いているしちょいちょい会話入ってくるんだよな)
夏実や茉莉のやり取りを見ていて悪いヤツじゃないとは分かっていても、俺に対してはどういうつもりで無言や苦虫をしてくるのかはまだ掴めない。
かといって喋りかけてくる茉莉とだけ会話するのもおかしいし、どうすりゃいいんだろうか?
「じゃあ、なつこのお父さんやお母さんとも仲良いんだ? おっさんと良い関係だから信頼されて、なつこと住む事も許されてるんだよね?」
茉莉の次なる質問に、俺は頷く。
「そうだな、夏実の家族とは27年の付き合いだから家族ぐるみで仲が良いよ。夏実の姉や兄とはきょうだい関係のように毎日遊んだり勉強したりしてたし、その後に生まれた夏実とはそれこそ赤ん坊の時からの仲だから夏実の両親とも毎日のように顔合わせて仲良くしているよ」
すると滉が横から
「でもなつこは、おっさんがいつもなつこの親から怒られてるって聞いたけど。昨日もめちゃくちゃ怒られたんだろ?」
と、夏実から早速聞いたであろう昨夜の晴美さんと俺とのやり取りを持ちだしてきた。
「えっ? おっさん、30歳なのになつこの親から怒られてんの? 引くわー!」
逆に茉莉は聞かされてなかったらしく、夏実とこいつらとの情報交換はどうなってるんだ?と頭が混乱する。
(なんだよ、2人とも知ってるなら「俺の情報全部筒抜けかよ!」とツッコミを入れられたのに中途半端な……)
「怒られるっていうのはアレだから。夏実の母親は本気で責めてる訳でも俺が常識無い事してる訳でもないから」
「じゃ何で怒られるんだよ?おっさんが情けない男だからなんじゃねーの?」
「情けない男ってのは否定しないけど、本当にそういうんじゃないんだよ。特に昨日のは毎年恒例のやり取りみたいなもんで……」
と、ここで俺は仕方なく毎年この時期にイライラする晴美さんと俺とのエピソードを聞かせてみた。
「…………という訳なんだが、夕飯の支度しないのは俺に対する虐めでもなんでもなくて本当に心の余裕がないからなんだよ。親戚の家へ行く準備って結構大変みたいでさ」
「えー? でも、なつこやお父さんはその日のご飯どうするのよ? なんか買ってくるの?」
「それは俺も分からない。多分夏実の父親がどっか連れてくんじゃないか?父親も手がつけられないくらいピリピリしてるから。……まぁ俺も父親がもっと母親フォローしてやれよとは思うけど」
「へぇ……もしかしてなつこの家って特殊な家族関係?」
「違う違う、至って普通だよ。さっきの話に戻すけど母親も母親で娘の夏実にはそこまで当たらないし俺がサンドバッグになれているんであれば俺はそれでいいんだよ。
してくる行動が飯作らない程度だから俺は夏実の勉強見た後でなんかしら食えば済む話だ。だからささやかな仕打ちだと思ってるよ、元々仲が良いからな」
「俺は単に夏実が喜ぶかと思って提案しただけだし」
「しかもなつこからじゃなくておっさんから提案したの? 神じゃん!」
「神…………」
それも褒められてるって意味か?……と、俺はほぼ無言でいる滉の方を向いた。
「俺らは助かるけど。おっさんは本当にそれでいいのか?」
静かにジンジャーエールを飲み、軽く息を吐いてから滉は冷静に俺に訊いてくる。
「この家には取られて困るようなものはないし、部屋を荒らさなけりゃ学校帰りに来ても別に構わないよ」
「んな事しねぇし」
「知ってる。夏実がお前らを信用してるって事はそういう意味だよ」
一応進学校と評される高校に通ってるコイツらだ。親友が彼氏と同棲してるマンションの一室でそんな行動とる筈が無いと、高校OBの俺としてもそう願いたい。
「信用といえばさぁ、おっさんの信頼度って高くない?
さっき滉の家へ迎えに行った時に滉のお母さんから『広瀬さんにくれぐれもよろしく』ってめちゃくちゃ言われたよ。広瀬さんっておっさんの事でしょ?」
「そりゃまぁ、俺の名字広瀬だし滉の両親とは面識あるから」
「そう、親父が『広瀬さんに手土産渡した方がいいんじゃないか』ってめちゃくちゃ気を遣おうとしたから止めといたよ。俺と姉ちゃんで」
「そっか……そりゃどうも」
別に野崎家からの手土産は要らないが、滉だけじゃなく野崎さんまで拒否ったとみると「俺は野崎さんにとっては会社の先輩なのに塩対応過ぎる」と軽いショックを受ける。
夏実が滉の実家手伝いを始めた時に保護者面して「夏実をよろしくお願いします」と言うのも烏滸がましいと思ったのだが、結局仕事帰りに電器店に寄ってそれなりの挨拶を両親としている。滉の両親も俺がその時に娘の上司でもあると知ったようで逆に恐縮されてしまった。
盆休みの連休後にも手伝いに行くと言った夏実を野崎夫婦は好意的に評価してくれており、俺も俺で「無償の手伝いの間に色々厳しく経験させてやって下さい」と話したものだから、「夏実ちゃんも良い子だけど広瀬さんもいい人だ」と30と18の同棲カップルという一見異様な俺らを温かく見守ってくれるようだ。
「相手に対してなるべく誠意ある対応や行動を示して、信用や信頼を勝ち取って円滑に物事を進めていくのが得なんだよ。人間関係においてそれが一番重要だと俺は思うから」
まだ高校生のこいつらにこんな話、おっさん臭いと思われるだろうが、茉莉の言葉の返答としてそれを言ってみたつもりだった。
「ふぅん」
だが俺の言葉に対して滉が菓子に手を伸ばしながら短い返事をしたのが少し気になる。
(コイツ、ずっと無言でこの空間に居続けるのかと思ってたけど一応俺の話は聞いているしちょいちょい会話入ってくるんだよな)
夏実や茉莉のやり取りを見ていて悪いヤツじゃないとは分かっていても、俺に対してはどういうつもりで無言や苦虫をしてくるのかはまだ掴めない。
かといって喋りかけてくる茉莉とだけ会話するのもおかしいし、どうすりゃいいんだろうか?
「じゃあ、なつこのお父さんやお母さんとも仲良いんだ? おっさんと良い関係だから信頼されて、なつこと住む事も許されてるんだよね?」
茉莉の次なる質問に、俺は頷く。
「そうだな、夏実の家族とは27年の付き合いだから家族ぐるみで仲が良いよ。夏実の姉や兄とはきょうだい関係のように毎日遊んだり勉強したりしてたし、その後に生まれた夏実とはそれこそ赤ん坊の時からの仲だから夏実の両親とも毎日のように顔合わせて仲良くしているよ」
すると滉が横から
「でもなつこは、おっさんがいつもなつこの親から怒られてるって聞いたけど。昨日もめちゃくちゃ怒られたんだろ?」
と、夏実から早速聞いたであろう昨夜の晴美さんと俺とのやり取りを持ちだしてきた。
「えっ? おっさん、30歳なのになつこの親から怒られてんの? 引くわー!」
逆に茉莉は聞かされてなかったらしく、夏実とこいつらとの情報交換はどうなってるんだ?と頭が混乱する。
(なんだよ、2人とも知ってるなら「俺の情報全部筒抜けかよ!」とツッコミを入れられたのに中途半端な……)
「怒られるっていうのはアレだから。夏実の母親は本気で責めてる訳でも俺が常識無い事してる訳でもないから」
「じゃ何で怒られるんだよ?おっさんが情けない男だからなんじゃねーの?」
「情けない男ってのは否定しないけど、本当にそういうんじゃないんだよ。特に昨日のは毎年恒例のやり取りみたいなもんで……」
と、ここで俺は仕方なく毎年この時期にイライラする晴美さんと俺とのエピソードを聞かせてみた。
「…………という訳なんだが、夕飯の支度しないのは俺に対する虐めでもなんでもなくて本当に心の余裕がないからなんだよ。親戚の家へ行く準備って結構大変みたいでさ」
「えー? でも、なつこやお父さんはその日のご飯どうするのよ? なんか買ってくるの?」
「それは俺も分からない。多分夏実の父親がどっか連れてくんじゃないか?父親も手がつけられないくらいピリピリしてるから。……まぁ俺も父親がもっと母親フォローしてやれよとは思うけど」
「へぇ……もしかしてなつこの家って特殊な家族関係?」
「違う違う、至って普通だよ。さっきの話に戻すけど母親も母親で娘の夏実にはそこまで当たらないし俺がサンドバッグになれているんであれば俺はそれでいいんだよ。
してくる行動が飯作らない程度だから俺は夏実の勉強見た後でなんかしら食えば済む話だ。だからささやかな仕打ちだと思ってるよ、元々仲が良いからな」
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