【完結】彼女が18になった

チャフ

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俺と彼女と彼女の事情

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 扉がドアクローザーによって再び閉まる音を聞き、室内がシーンと静まり返ったのを確認した上で

「なんだ今の」

 と、俺はポツリと呟く。

(えっと……多分滉は第一に、俺にノートの件で御礼が言いたかったんだよな? 
でもそれだけを夏実も居る前で俺に言うのは照れ臭いから、テストが落ち着いて予備校も終わったこの時間に訪ねてきた、と)

 それでも素直に礼を言うのはまだ恥ずかしいから、ここ数日で聞き齧った森田さんの一件やら姉の過去やらを交え、「おっさんが知らない話だから教えてやる」みたいな体で一つ一つ……もう姉は俺を嫌悪してないと確認する上で話をしたと。……どうやらそういう事のようだ。

「っ! クククッ……滉、やっぱり頭悪いなぁ。本当に大丈夫なのか大学受験……ッ、フフッ」

 そうと知ると、途端に笑いが込み上げてきた。

 一回りも年齢が離れている上に、未だ女子高生という夏実に好意を寄せてる時点で、俺は「気色悪いロリコン」というレッテルが貼られたままとなり今の段階ではまだそれを剥がせる状態にない。
 会社の人間から、それと仕事の取り組み方とを分けて考えてくれている状況には感謝してそれにこたる態度を俺は取らなきゃいけないと思う反面、それでも俺を「気持ち悪い」と口に出してまで嫌悪する人間の存在も理解しているし、ある程度そこは仕方ないと俺も自覚して生きているつもりだ。

「夏実の言う通り素直じゃねぇんだなぁあいつ……あと、あいつの姉もそうか」

 俺に嫌悪を抱いていると感じていた人間らの内2人もが軟化してくれていると知るのは、お腹を抱えるくらい笑えて嬉しい事なのだと今夜俺は知った。

「あーあ、笑った笑った……」

 ひとしきり笑って気の済んだ俺は、スマホを取り出して途中になってた夏実とのメールを再開した。

 メッセージアプリのトーク画面には、夏実からの

[じゃあ夜ご飯はどうしよっか? 湊人は食べたいものある?]

 の文面で止まっている。

 俺はそこに以下の文を打ち込んで送信マークをタップした。

[明日の夜は茉莉と滉、それから夏実が世話になってる滉の姉ちゃん呼んで焼肉でも食べに行こう。俺が全部奢るから]

 それから数秒もしない内に大量に送られてきた、喜びを表すスタンプ群にまた腹がよじれるほど可笑しくなり、腹を押さえながらその場にしゃがみ込んで30のおっさん1人部屋の中で馬鹿笑いをする羽目になってしまった。



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