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彼女と俺の可愛い甘え
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「昨夜……大魔王になったんだぞ俺は。これを飲んだら夏実に何をしてしまうか……」
「私、褒められる事はあっても湊人に叱られるような行動一切してないもん。『このお酒をちょっと飲んでみて』って言ってるだけだもん」
「いいか夏実。未成年が成年に酒を飲ませるなんて褒められた行動じゃないんだぞ?」
「そうだけど……じゃあ、湊人は今後一切お酒は飲まないつもり? 一滴も?
私が20歳になったらあのペアの冷酒グラスで乾杯しようって気にはならないの?」
夏実が食器棚を指差しながら俺に言った「冷酒グラス」でハッとする。
(冷酒グラスって、菜央ちゃんの義母さんから頂いた桜の形の……)
ここに引っ越しを決めた時、菜央ちゃんから未使用かつ大量の食器類を貰った。菜央ちゃんの義母さんがわざわざ俺らの為にと使いやすくセンスの良い食器を選んでプレゼントして下さったのだ。
照明の光の反射でテーブルに綺麗な桜の残像が浮かぶ綺麗な冷酒グラスもその中の一つで、「夏実ちゃんが20歳になったら使ってみてね」と、箱の上に義母さんからの直筆メッセージが添えられていた。
「具体的にまだ約束しなかったのは、10年前の事で湊人が『今後一切アルコールは摂取しない』って豪語したからだよ。でも昨日結局飲んじゃったじゃん! ちょっと悔しかったよぅ……」
「夏実、それは本当にごめん」
「イライラムカムカがMAXになった状態でお酒飲むのやめてよ本当に」
「ごめんなさい……そうだよな、夏実は桜の冷酒グラスを大切にしたいんだもんな。それで、夏実が20歳になったら使ってみたいんだもんな。
そんな憧れとも言える酒に対して申し訳ない飲み方をしたよな昨夜の俺は」
さっきまで俺は自分都合で物事を考えていた。
アルコールは悪酔いをする為の道具ではない。本来は成熟した肉体の緊張を緩和し朗らかな気持ちになって楽しむ飲み物なのだ。
「10年前も昨夜も大魔王になったから俺は酒を飲まない」という俺の言葉は、数年後には飲酒喫煙以外は成人とほぼ同等の権利が得られんとする18歳の前ではただの醜い言い訳にしかならないのだ。
現法律では未成年の夏実だがある意味成人と同等の考えを持っているのだから、ここは俺がひたすら謝るしかない。
「いい? 湊人は真面目な人なんだから、『悪酔いした自分がダメ』って反省は既にしてる人なの。だから、昨夜の事を謝るとしたら全てのお酒を作ってる人達に向けてごめんなさいして! 『悪い飲み方をしてごめんなさい』『次は誰よりもかっこよくお酒と向き合い楽しみます』って宣言して!!」
「はい……酒造関係者の皆さん、悪い飲み方をして申し訳ありません。次からはきちんと酒と向き合い楽しむ事を心掛けます」
夏実と俺の会話や突然の謝罪行為は一見すると不思議で異様ではあるが、聡明な18歳の彼女から諭されると素直にスルッと言葉に出来てしまう。
それだけ夏実に恋しているが故なのだろうけれどそれ以上に「夏実は頼もしい」「夏実には敵わない」という感情が湧く。
「夏実の20歳の誕生日に、とびきり良い日本酒を買って2人で飲もう。あの冷酒グラスで乾杯だ」
俺は目を細めて18歳の彼女にそう宣言し、夏実によって酌されたアルコール飲料を唇に含ませた。
「本当?! 本当に一緒に飲んでくれるの??!!!」
俺の宣言に夏実は想像以上に喜んでいて、唇に染み込ませ始めた桃の酒を一旦テーブルにコトンと置き直す。
「勿論だよ、夏実が望むのなら俺はそれを叶えてやりたいし俺もそれまでにはちゃんとした飲み方を身に付けるから」
「良かったぁ♪ すっごく嬉しい♪ じゃあ湊人は今日からまたお酒解禁だねっ! 少しずつではあるけど」
「ああ……少しずつだな」
「静華さんのかっこよさを超えてね! 世界一かっこよくお酒飲める人になってね!」
「それは無理だろ。しかも飲酒暦10年の静華と俺じゃ到底敵いっこないよ」
「努力して!」
「まぁ……努力、します」
これもある種夏実に甘えた行動なのかと思う。
そのくらい、夏実の前ではこの桃の味のように俺は甘く蕩けてしまうのだ。
「これ美味いな。すごく飲みやすい」
「普通のチューハイよりアルコール低めなんだって」
「なんで桃味なんだ?」
「静華さんも私も『桃ならきっと飲むんじゃないか』って予想立てたの。静華さんも知ってたんだね、湊人が桃好きだって」
「………………そっか」
(静華の家で桃を食べた事があったんだよなぁ確か高2の頃か。
静華はそれをまだ覚えていてくれたんだな…………)
俺は過去の記憶を手繰らせながら先程の夏実のセリフをゆっくりと呑み込む。
「あっ! そうそうメンチカツ食べてよ!!」
「ああそうだった! 酒よりもこっちがメインだった!」
「私も食べようっと♪ いただきまーす!」
「俺も。ソースいっぱいかけても良い?」
「勿論! 私もたっぷりかける~♡」
「メンチカツ、おいしー!!」
「うまいな! 偉いぞ夏実!!」
「えへへ♡」
「私の桃ジュース、濃くて甘っ!!」
「へ~どれどれ飲ませて?」
「湊人はお酒の方を飲んでよぅ」
2人でメンチカツを頬張り、桃入りの飲料を飲み笑い合う時間は最高に楽しかった。
「私、褒められる事はあっても湊人に叱られるような行動一切してないもん。『このお酒をちょっと飲んでみて』って言ってるだけだもん」
「いいか夏実。未成年が成年に酒を飲ませるなんて褒められた行動じゃないんだぞ?」
「そうだけど……じゃあ、湊人は今後一切お酒は飲まないつもり? 一滴も?
私が20歳になったらあのペアの冷酒グラスで乾杯しようって気にはならないの?」
夏実が食器棚を指差しながら俺に言った「冷酒グラス」でハッとする。
(冷酒グラスって、菜央ちゃんの義母さんから頂いた桜の形の……)
ここに引っ越しを決めた時、菜央ちゃんから未使用かつ大量の食器類を貰った。菜央ちゃんの義母さんがわざわざ俺らの為にと使いやすくセンスの良い食器を選んでプレゼントして下さったのだ。
照明の光の反射でテーブルに綺麗な桜の残像が浮かぶ綺麗な冷酒グラスもその中の一つで、「夏実ちゃんが20歳になったら使ってみてね」と、箱の上に義母さんからの直筆メッセージが添えられていた。
「具体的にまだ約束しなかったのは、10年前の事で湊人が『今後一切アルコールは摂取しない』って豪語したからだよ。でも昨日結局飲んじゃったじゃん! ちょっと悔しかったよぅ……」
「夏実、それは本当にごめん」
「イライラムカムカがMAXになった状態でお酒飲むのやめてよ本当に」
「ごめんなさい……そうだよな、夏実は桜の冷酒グラスを大切にしたいんだもんな。それで、夏実が20歳になったら使ってみたいんだもんな。
そんな憧れとも言える酒に対して申し訳ない飲み方をしたよな昨夜の俺は」
さっきまで俺は自分都合で物事を考えていた。
アルコールは悪酔いをする為の道具ではない。本来は成熟した肉体の緊張を緩和し朗らかな気持ちになって楽しむ飲み物なのだ。
「10年前も昨夜も大魔王になったから俺は酒を飲まない」という俺の言葉は、数年後には飲酒喫煙以外は成人とほぼ同等の権利が得られんとする18歳の前ではただの醜い言い訳にしかならないのだ。
現法律では未成年の夏実だがある意味成人と同等の考えを持っているのだから、ここは俺がひたすら謝るしかない。
「いい? 湊人は真面目な人なんだから、『悪酔いした自分がダメ』って反省は既にしてる人なの。だから、昨夜の事を謝るとしたら全てのお酒を作ってる人達に向けてごめんなさいして! 『悪い飲み方をしてごめんなさい』『次は誰よりもかっこよくお酒と向き合い楽しみます』って宣言して!!」
「はい……酒造関係者の皆さん、悪い飲み方をして申し訳ありません。次からはきちんと酒と向き合い楽しむ事を心掛けます」
夏実と俺の会話や突然の謝罪行為は一見すると不思議で異様ではあるが、聡明な18歳の彼女から諭されると素直にスルッと言葉に出来てしまう。
それだけ夏実に恋しているが故なのだろうけれどそれ以上に「夏実は頼もしい」「夏実には敵わない」という感情が湧く。
「夏実の20歳の誕生日に、とびきり良い日本酒を買って2人で飲もう。あの冷酒グラスで乾杯だ」
俺は目を細めて18歳の彼女にそう宣言し、夏実によって酌されたアルコール飲料を唇に含ませた。
「本当?! 本当に一緒に飲んでくれるの??!!!」
俺の宣言に夏実は想像以上に喜んでいて、唇に染み込ませ始めた桃の酒を一旦テーブルにコトンと置き直す。
「勿論だよ、夏実が望むのなら俺はそれを叶えてやりたいし俺もそれまでにはちゃんとした飲み方を身に付けるから」
「良かったぁ♪ すっごく嬉しい♪ じゃあ湊人は今日からまたお酒解禁だねっ! 少しずつではあるけど」
「ああ……少しずつだな」
「静華さんのかっこよさを超えてね! 世界一かっこよくお酒飲める人になってね!」
「それは無理だろ。しかも飲酒暦10年の静華と俺じゃ到底敵いっこないよ」
「努力して!」
「まぁ……努力、します」
これもある種夏実に甘えた行動なのかと思う。
そのくらい、夏実の前ではこの桃の味のように俺は甘く蕩けてしまうのだ。
「これ美味いな。すごく飲みやすい」
「普通のチューハイよりアルコール低めなんだって」
「なんで桃味なんだ?」
「静華さんも私も『桃ならきっと飲むんじゃないか』って予想立てたの。静華さんも知ってたんだね、湊人が桃好きだって」
「………………そっか」
(静華の家で桃を食べた事があったんだよなぁ確か高2の頃か。
静華はそれをまだ覚えていてくれたんだな…………)
俺は過去の記憶を手繰らせながら先程の夏実のセリフをゆっくりと呑み込む。
「あっ! そうそうメンチカツ食べてよ!!」
「ああそうだった! 酒よりもこっちがメインだった!」
「私も食べようっと♪ いただきまーす!」
「俺も。ソースいっぱいかけても良い?」
「勿論! 私もたっぷりかける~♡」
「メンチカツ、おいしー!!」
「うまいな! 偉いぞ夏実!!」
「えへへ♡」
「私の桃ジュース、濃くて甘っ!!」
「へ~どれどれ飲ませて?」
「湊人はお酒の方を飲んでよぅ」
2人でメンチカツを頬張り、桃入りの飲料を飲み笑い合う時間は最高に楽しかった。
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