【完結】彼女が18になった

チャフ

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俺の口吸い彼女の甘噛み

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(嵐のようだったなぁ……)

 今やシンと静まりかえった玄関の様子を「嵐が過ぎ去ったがごとく」と心の内でたとえた俺は

「素敵なハロウィンナイトって言われても夏実は明日も学校なんだから、飯食ったらこれ脱いで帰んないといけないし……なぁ?」

 そう、至近距離に立つセクシーな吸血鬼姿の夏実に声を掛けた。
 今年のハロウィンは木曜日というド平日で、週末ではないのだ。よってこの後メイクやカラコンを綺麗に落として私服に着替え、夏実を薗田家へ送ってやらなければならない。

 しかし夏実はカラコンを嵌めた紅い瞳で俺を見つめながら

「今夜は湊人の家に泊まるって、お母さんに連絡しているから大丈夫……だよ?」
「え?」

 まるで付き合いたての高校生カップルが初めて行う性的触れ合いシチュエーションを予感させるような「今日は両親が家に帰って来ないから」のセリフを言うのとほぼ同じテンションで夏実は言い、俺に抱きついてきたのだから思わず動揺の声を出してしまった。

「静華さんとね、その事も相談したの。『滉くんや茉莉ちゃんが私をダシにして2人でお泊まりとかしてるんだから今日くらい同じことやって誤魔化したっていいんじゃない?』って、静華さんは言ってくれて」
「はっ……晴美さんは了承したのか? 滉も茉莉も受験生だしハロウィン当日だからってウチに来てハロウィンパーティーするなんて嘘が通用するかどうか」
「だからお母さんには『お友達の静華さんとパーティーする』って話したの。一昨日から少しずつ準備してたのは本当だから」

 そう言って俺を一層ギュウッと抱きしめてくる夏実に、俺の胸はキュンとする。

「そっか……晴美さんが了承したんなら、まぁ……な」

 こっちも食後の期待感を高めつつも、ゆる巻きの彼女の髪や白くスベスベとした頰に触れ

「それじゃあ、夏実達が作ってくれた料理を食べようか」

 と取り敢えず王子的対応でリビングに誘い、夏実もそれに頷いた。



「うん、美味い! 晴美さんの作るシチューの味だ!」
「ハロウィンの料理ね、お母さんがいつも作ってくれるかぼちゃ入りのクリームシチューは絶対作りたかったんだ♪ ラザニアは静華さんが作ってきてくれたんだけど、こっちも美味しいよ♪」

 牙や手袋を外した状態で、ダイニングテーブルに並べられた料理を口にする。
 まだ吸血鬼の格好のままだしカラコンもダークパープルのルージュもつけたままではあるが、互いの口から出てくる会話はいつもの食事の会話の雰囲気そのままなのがなんか可笑しい。

「ラザニアってどうやって作んの? オーブン?」
「そうなの最後にオーブンで焼くの。静華さんの家にはパンも美味しく焼けちゃうくらいのオーブンレンジがあるんだって」
「へぇ~……やっぱり最初からうちもオーブンレンジ買えば良かったんじゃないか?」
「うん……確かにそれ、ちょっと思うようになってきた。クリスマスの料理でも使うよねぇ、オーブンって。
 今回は静華さんの家で焼いてもらったけど、クリスマスの時はどうしよう……」
「いやいや、クリスマスくらいはどっかで食べに行こうよ。わざわざ作ってもらうの大変だからさぁ」
「えっ? クリスマスはデート出来るの?」
「その代わりイブや当日近くの週末な。12月の平日は早めに帰るの難しいし」
「やったぁ♪」
「あと、オーブンレンジは冬のボーナスで買う」
「やったぁ~♡ それも嬉しい♡」

 外観は大人っぽくセクシーな吸血鬼美女なのに、声や表情はいつも通りの夏実でやはり可笑しくもあるが同時にホッとする。

「俺はオーブン使う事ないけど、静華から料理学ぶならあった方が便利だろ? 今使ってる電子レンジはどうしたら良いかは暇な時に野崎さんに相談してみるよ。レンジ2つあっても困らないとは思うんだけど」

 静華の作ってくれたラザニアの美味さを実感しつつ、「料理を学べばこういうのが夏実にも作れるんだろうなぁ」という期待を抱いた会話のやり取りをする。
 ……互いが身につけてる衣装と会話の中身がズレまくっている気がするのだが、やはり今のこの瞬間の夏実は可愛く、とても癒されるのだった。


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