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にじゅうきゅう。

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最後に寮を出る時に、おばちゃんに、いつでも帰ってくるんだよ。と言われてまた涙した私は、迎えに来たメリル様と一緒に魔術協会に来た。

やはり、誰にも会うことなく研究室の前に着けば、こっち。と手を引かれる。

メリル様⁉︎手が!手が!と叫ぶ私に、うるさい。と一言言うメリル様。

そんな私は、クールなメリル様素敵!そこに痺れる!憧れるー!状態だった。

研究室から三つ離れた扉の前で立ち止まると、ここが君の部屋だよ。と扉を開ける。

騎士団の寮は木を使っていて、落ち着く雰囲気だったが、ここは白を基調としていて、汚してはいけない気がするほど綺麗な場所だった。

部屋の広さは、騎士団の寮と比べると狭いが、それでも結構な広さがある。

部屋の中に一つある扉を開ければ、そこはトイレやシャワー室、洗面台があった。

一通り部屋を見渡した私は、後でまた来る。と言って出て行ったメリル様を待っている間、持ってきた荷物を片付ける。

10分ほどで終わり、暇だなーと思って窓の外を見れば、あれ…?、と違和感を覚える。

「リウ、研究室に……どうしたの?」

「め、メリル様!あの木!木が!」

そう言って部屋に入ってきたメリル様を窓の方に連れてこれば、あぁ。と頷く。

「なんで消えたはずの木があんなに大きく生えているんですか⁉︎前より小さい気がしなくもないですけど!」

「なんでって…地属性の魔術師の人にしてもらったから。」

何言ってるの?と言うメリル様。

当然と言うような態度のメリル様に私は、この間無くなったはずの場所にある、新しい木を見る。

そうか、ここは異世界だった。と納得するしかなかった。





「じゃあ、まずはこの薬草を粉になるまですり潰して。」

魔術師の見習い服を着て過ごしている私は、メリル様に言われるがまま乾燥した薬草をすり鉢にいれ、すりこぎで潰していく。

ここに来て4日。

まだここでの生活は慣れないが、メリル様以外には誰にも会うことなく、こうしてポーション作りのお手伝いをしている。

ポーションは、魔術で浄化した水を使い、薬草やハーブなどを鍋に入れ作る。

ただ、火加減や薬草などの量は難しく、今はまだメリル様が作るのを見ているだけだ。

薬草をすり潰しながらメリル様の横に立つと、ちょうど、鍋の中のものが青色に変わっていく所だった。

「いつ見てもやっぱり不思議です。」

「そう?もう見慣れすぎてよくわかんないや。」

「だって、水とすり潰した枯れ草を入れて十数分かき混ぜるだけで一瞬にしてこんな鮮やかな色になるんですよ?」

「それがむずかしいんだよ。」

そう言って、出来上がったばかりのポーションを容器に入れていく。

鍋一杯に作ったはずのポーションは、出来上がる頃には半分もない。

煮詰め過ぎているわけでもないのに、不思議だなーと思う。

それを眺めていると、次はこの薬草ね。と3種類の薬草が置かれる。

はい。と返事をした私は、頑張ってすりこぎを動かした。





「頑張っているね。」

もう少しで擦り終わるという頃に、私とメリル様以外の声がした。

びくりと体を揺らし、声の主を確認すると、セシル王子だった。

「あ…こんにちは。」

「こんにちは。…ここでの生活は順調?」

まぁ、僕が聞くのもなんだけど。

そう言って、私の向かいの席に座る。

まぁ、それなりに…。と答えると、あれ、もっとメリルといれて喜んでいるかと思ってた。と笑われた。

そんな私は、薬草を擦りながら、そりゃあ嬉しいですよ!毎日神に感謝しておりますよ⁉︎それが何か⁉︎と王子にキレる。

そんな私に、目を見開き驚く王子に、でも…。と続ける。

「ゼノさん…第1騎士団の人達が元気かなぁって、考えちゃいます。」

貰うだけで、何も返せなかったし…。

と言うと、セシル王子が意味深に笑った。

「じゃあ、返せばいいんじゃない?」

そう言って、私に白い箱を渡す。

なんとなく見覚えのある高級感を前に、これは?と問うと、開けてみて。と言われた。

なんか前も似たようなやりとりしたな…。と思いながら開ければ、そこには沢山の魔石が入っていた。

「こ、んなに…どうしたんですか…?」

「君にお詫びのつもり。」

今までのと、後は、そうだね。…この前は強引に進めた分でどう?というセシル王子に、お詫びされるようなことはない。と箱を返せば、良いから、受け取って。と言われる。

それをどうしようかと悩んでいると、近くに来たメリル様に、貴重なんだから貰っておきなよ。と言われる。

メリル様に言われてしまえば仕方ない。とそれを受け取れば、セシル王子に苦笑いを返された。

改めて箱の中を見ると、何十と入っている大小様々な魔石が入っている。

それを一つ手に取り眺めていれば、それでアクセサリーでも作りなよ。とメリル様が言った。

「アクセサリー、ですか?」

「うん。さっき、第1騎士団のみんなに何か返したいって言ってたじゃん。」

それにリウの魔力を込めれば、戦うことが多い騎士団にはとても良いと思うけど。

そう言うメリル様に私は目を瞬かせ、見開いた。

「メリル様!それ良いですね!すごい!さすがメリル様!」

「……君のそのメリルへの態度はなんなの。」

こうして私は、この日から仕事の合間に魔法石を作り、アクセサリーを作ることになったのである。
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