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9章 ネコと和解せよ
12 送り狼
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「レネ、おい大丈夫か?」
「……う~~~ん……」
「ダメだ、完全に酔ってる」
バルトロメイはレネの肩を揺するが、反応が鈍い。
「相変わらず弱いな」
オレクがレネの頭を小突くが、頭がフラフラ揺れるだけだ。
俯いて表情はよく見えない。
「オレクが次から次に勧めるからだろ」
ダニエラが言うように、新しい料理が来るたびにグラスへ酒を注いで勧めるものだから、レネは完全に自分のペースを見失い酔っ払ってしまった。
他の三人は同じ量を飲んでもまったく酔っていないが、果たして三人が強いのかレネが特別酒に弱いのか。
「もういい時間だし、宿に連れて帰ります。今日はご馳走様でした。ほらレネ、宿に帰るぞ」
反応がないレネの脇に身体を入れ、無理矢理立たせる。
「ふん、送り狼になるなよ。帰る場所が一緒だからたちが悪いな」
オレクが思わせぶりに笑いながらバルトロメイの方を見た。
「なんのことです?」
バルトロメイは惚けながら、オレクを見返す。
「顔に書いてあったからな」
「わかりやすいよな。レネは鈍いからまったく気付いてないのが笑える……」
ダニエラが「クククッ」と笑う。
「…………」
(俺って、そんなに顔に出てるか?)
「まあ、仲が良いのは悪いことじゃない。でもそいつの中身は普通に男だからな。扱いを間違えると斬り殺されるぞ」
(扱いを間違えないと、別にいいのか……?)
おおらかな爺さんでよかったかもしれない。
バルトロメイの長所はなんでもよい方に物事をとらえる所だ。
年長者の遠回しな牽制など通用しない。
「がんばれよ」
ダニエラは相変わらず人の悪い笑みを浮かべている。
「…………」
こうなったら、最後までしらを切り通すしかない。
「ああ、明日出発するのなら朝食だけでも一緒に食べよう。ここにいるから来いよ」
いい忘れたとばかりにオレクが付け加える。
「わかりました。ではおやすみなさい」
本当は横抱きにして運んだ方が手っ取り早かったのだが、オレクたちにまたなにか言われるのも嫌だし、肩を貸す形で宿の部屋へと戻って来た。
「お~~い、レネ~~~」
「……う…………ん……」
ベッドに寝かせて呼びかけるが、反応は薄い。
時折、瞼の奥から若草色の瞳が顔を見せるが、視線が定まらない。
「このまま寝るだろ? 服脱がすぞ?」
レネはいつも寝る時には下着だけになって眠っていた。
別にそこまでする必要はない。
ただ服を脱がせる口実が欲しかった。
半開きになった薄桃色の唇を見ているともうたまらなくなり、覆いかぶさるようにレネの唇を啄み、シャツのボタンを外していた。
「お前が悪いんだぞ、お前……爺さんが禿げてたことワザと黙ってて、俺の反応見て笑ってただろ。知ってるんだからな」
(自分は血が繋がらないからって、いい気になりやがって……)
こいつは案外いい性格をしているのかもしれない……。
だから嘲笑われた仕返しくらいしてもいいだろう。
首筋に顔を埋めるとレネの匂いがした。
レオポルトに囚われている時から嗅いでいたレネの匂いは、初夏にどこから香って来る甘い花の香りにそっくりだ。
甘い蜜に誘われる虫のように首筋を舐める。汗をかいているのか少ししょっぱい。
一度顔を上げてレネの様子を確かめるが、どうやら寝てしまったようだ。スースーと寝息が聞こえる。
(気付かないよな……)
もう一度触れてしまったら、止めることはできない。
シャツを取り去ると、薄い生地の袖なしの肌着から薄っすらと乳首が透けていた。
「——えっろ……」
風呂場で見たその光景を思い出し、バルトロメイの股間に一気に血が集まる。
薄い布一枚隔てて、少し透けて見える乳首に人差し指の先で触れる。
なんの反応もない。
次に乳輪を円を描くようになぞると、ピクリと身体が反応した。
両手で同じように左右の胸を刺激すると、半開きの唇から甘い吐息が漏れる。
「……ッぁ…………」
これが性的な反応なのかはわからないが、バルトロメイはレネの反応を引き出したかったし、もっとこの身体に触れたかった。
爪先で上下に円の真ん中にある小さな粒をこすっていると、段々と凝りが増してくる。
人差し指から親指へと変え、広い指に腹で乳頭を乳輪の中へと押し込むように揉み、うっすらとついた大胸筋の弾力のある感触も楽しむ。
「……ぁっ……ッ……」
レネの顔が横を向き、枕の中に顔を埋める。
「もしかして気持ちいいの?」
早く小刻みな動きを加え、爪での刺激も強める。
「…んっ……っ……ふっ……」
少しレネの息が乱れてきた。
バルトロメイは胸に顔を近づけ、敢えて布越しに、唾液を含ませ力を入れた舌先で、左右の胸の飾りを交互に刺激する。
「うっわ……エロ過ぎだろ……」
唾液に濡れて、そこだけより一層ピンクが透けて見える。
小さな粒の上にべったりと布が張り付いていて、息苦しそうだ。
(——もう我慢できない……)
想像以上に卑猥な光景に、バルトロメイは思わず自分の股間に手を伸ばし自分で慰めながら、空いた片手でレネの肌着の裾に手をかけ首元までまくった。
レネの肌はマシュマロのように白く繊細で、ピンク色の部分だけが、まるで蜂蜜でもたらしたみたいに艶めいていた。
布越しに唾液で濡らされた淫猥な胸の飾りが露わになると、思わずそこにむしゃぶりつく。
目の前にあっても触れることもできなかった存在を自由にできる。
レネの意識がないことをいいことに、バルトロメイの行動は大胆になっていった。
乳暈ごと口に含み唇で優しく摘んで、小さな粒を舌の先で小刻みに刺激し、もう片方も指で粒を摘んで指の腹で転がしてやることも忘れない。
「……ぁっ……ぁ……ぅん……」
「ちゃんと感じてるんだ……」
明らかに色を帯びた息遣いが、悩ましい薄桃色の唇から漏れ出しているのを確認して、バルトロメイはニヤリと笑う。
その顔からは日ころの好青年さは消え、得物を目の前にした狼のように凶暴な欲望の牙を剥き出しにしていた。
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