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42話

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さて、廊下で変なものを見たけど私は自分の用事を済ませないといけないわね。

そう思いながら、皇帝の隣の部屋の扉を開けて

「お邪魔するわね」

と入ると

「こ、皇妃様っ!?」

あら、やっぱり驚いているわね。

まぁ、無理もないですわ。

私がここに来ることなんてありませんもの。

私が向かった先は、宰相と宰相補佐達が仕事をしている部屋ですの。

今日の書類のことについて話さないと、と思ったのよね。

なんて思いながら、部屋を眺めていると

「どうされましたか?まさか書類に何か......」

顔色を悪くさせながらフェルマー様が私に尋ねてきたので

「いえ、違うわ」

と答えると、フェルマー様は首を傾げて不思議そうな顔をしていますわね。

なんか面白いですわ。

なんて思いながら

「お礼を言いに来たの」

そう言うと、フェルマー様はキョトンとした顔をしながら

「お礼、ですか?」

と言って固まっています。

「えぇ。貴方達が書類を見やすくしてくれたおかげで、仕事がしやすくなったわ。ありがとう」

なるべく補佐の人達にも聞こえるように、はっきりとした口調でそう言うと

「あ、い、いえっ!今までやってなかったのにお礼を言われるほどでは.......」

フェルマー様は手を横にブンブン振りながら言っていますが、補佐の人達は目を大きく見開いて私のことを見つめていますわ。

そんなに見つめられたら穴が開いちゃいますわよ。

そう思いながら

「でも大切なことよ。本当に助かるわ」

そう言った後に

「疲れたと思って甘いものを持ってきたの。皆で食べて頂戴」

持ってきていたクッキーを差し出すとフェルマー様は戸惑いながらも

「あ、ありがとうございますっ!」

そう言って頭を深く下げましたわ。

もしかしてなんですが、私って怖がられているんでしょうか?





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

部屋に戻ってから、今起こったことをカーラに教えて

「皆して私のことを何だと思っているのかしら?」

と愚痴っていると、

「まぁ、ここに来てからのお嬢様は色々とやってますからねぇ」

確かに、私が原因で降格させた家もありますからね。

そう言われると何も言い返せませんわ。

「でもお礼を言っただけであんなに驚かれるのは初めてだわ」

あの場では出しませんでしたが、私だってあんな反応をされたら傷つきますのよ?

それをわかっててやってるのかしら。

なんて思っていると、カーラは苦笑しながら

「それほど驚いたんですよ」

そう言ったときでした。

「お嬢様、食事を持ってきましたーっ!」

食事をとりに行ってもらっていたユリが戻ってきましたわ。

さて、今日の食事はどうなったんでしょうね?

なんて思いながら

「ありがとう」

とお礼を言うと

「皇妃様っ!美味しい食事を作ってきましたっ!」

そう言って、ユリの後に昨日会った料理長がいるではありませんか。

驚きましたわ。

どうりでユリの機嫌も良いはずですわね。

そう思いながら

「わざわざ持ってきてくれたの?」

と尋ねると

「はい!またメイド長に嫌がらせされたら堪ったもんじゃないですし!」

まぁ、確かにその通りね。

私だって、せっかく食べるのなら美味しいものを食べたいですし。

ニッコリと歯を見せて笑う料理長に

「ありがとう。やっと美味しい食事が食べられるわ」

そう言って受け取ると、まだ部屋から出ていく気配はありませんね。

感想が聞きたい、ということでしょうか?

そう思って先にスープを一口飲むと

「どうでしょう?」

と料理長が不安そうな顔をしながら尋ねてきましたわ。

やっぱり気になっていたのね。

なので私は出来るだけ優しく微笑みながら

「美味しいわ。これを今まで食べられなかったのがとっても惜しくなるわね」

と返事をすると

「ありがとうございます!」

と頭を下げてきました。

なんでしょう?

今日はお礼を言われる日なんでしょうか?

あぁ、でも本当にスープは美味しいですわよ。

お昼だから重たいものは、と思っていましたが、それもしっかりと考えられていて食べやすいですわ。

うーん......これを不味くして出していた料理長はある意味で凄いですわね。

その後、料理長は私がオーブンを使わなかったことに対してお礼を言って仕事に戻りました。

私が思っていた通り、オーブンは使った後の片付けが面倒ならしく、とても喜んでいましたわ。
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