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深淵の森ダンジョンのマスター
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アルミネアからメールが届いた。ダンジョンの事は自分で試行錯誤してみて。だって。
それと、和三盆糖として送るから、色々試してみて。
メタルの収納庫から和三盆を受け取った。
和菓子…作れるかな?綺麗には出来なくても、味は一緒だよね。
とはいえ、和三盆を使った和菓子は初挑戦だ。
失敗しても、農園の道具屋和三盆は売っている。
とりあえず白あんは作れるし、食紅はないけど味は変わらないからいいよね。
時間はかかったけど、干菓子と練り切りは出来た?
まあ…鮭とばを作りながらだから、時間は有効活用している。
鮭とばは、オージェの分と、ランス達のおやつだ。
この為に、深淵の森ダンジョンでキラーシャケを集めて貰った。
おやつを作る為っていうと、みんな喜んで採ってきてくれる。季節に関係なく、食べ物が手に入る事は嬉しい。
さて、今日は気力があるうちに戻ろう。昨日みたいに1日無駄にしたくないからね。まあ…色々発見もあったし、全く無駄ではなかったけどね。
今日は、深淵の森ダンジョンの先に進むつもりだ。
翼を使って、自分で飛んで倒すつもり…まあ、最初から上手くいくとは思っていない。
手助けはされたけど、どうにか倒す事が出来た。
スキルの飛翔がいい仕事をしている。魔道具の羽根だけでは、飛ぶという感覚がなかったし、以前にスキルと魔法の力で飛んだ時も低空飛行しか出来なかった。
でも、飛翔の感覚と連動するのか、あまり気を向けずに飛ぶ事が出来る。
高い所とジェットコースターは苦手でも、この羽根を使ってなら大丈夫?
立体起動も空間起動に進化したから、位置の把握も容易だ。
よし…いざ22階層へ!
スマホから戻って、朝食の片付けをする。
「もう、おやつを作ってきたのか?」
「後でね!」
亜空間の扉を開けると、深淵の森ダンジョンの近く。曲がり道になっていて、ダンジョンからは死角になっている。
サクッと階層転移して、ワイバーンも倒す。
22階層は、デススパイダー。黒くて大きい、紅い目が八つ付いている。
10階層に出た奴よりかなり強いだろう。
飛んでくる糸を、感覚に従って避ける。フレイムのブレスが糸を焼き、縦横無尽に向かってくる蜘蛛に当てようとするけど、ブレスには溜めが必要。僅かな時間差がある。
「っつ!」
予見もフルに使って避けるけど、私が一番与し易いと見られたのか、集中攻撃される。
糸が皮膚の柔らかい所を掠めると、あっさりと皮膚が切れる。
あっという間に治ってしまうけど、痛みはあるから鬱陶しい。
血が地面に落ちると、ダンジョンが震えた。私の血、そんなに美味しいの?私が狙われてるのは、ダンジョンにとって美味しいから?
分からない。でも思い当たる節はある。
「ね…何で私の魔力は美味しいのかな?」
「集中しないとダメにゃ…でも、メイの魔力は特別にゃ」
魔力の質は魂に直結している。自分では分からないけど、きっとそれが大切にしてもらえる理由…
糸で燃え尽きる炎じゃ駄目…より高温で、広範囲の火力。
「ヤブラン!みんなに結界を!」
最強の竜鱗結界に囲まれた所で全てを焼き尽くす青白い炎の魔術が、蜘蛛を飲み込んだ。
抗い切れず、蜘蛛は塵すら残さず消滅した。
ボス戦後の宝箱。ワイバーンも考えてみたらボス扱いだったんだよね。
中身は、オリハルコンの双剣。次元魔法が付与されている。空間を切り裂く双剣だ。
「かなりの業物のようだ。双剣の使い手は主しかいない」
「うーん…重いけど、扱えなくはないかな」
レベルが低い頃ならともかく、今の私にはこの重さが頼もしく感じる。手数が重要な戦いの時は、今のミスリルの双剣を使えばいい。
「練習は必要そうだけど、使いこなせたら強くなれそう」
「メイ、階段があるけどどうするの?」
ボスの三連戦になるのか…ワイバーンは余裕になったけど、あの蜘蛛は凄く強かった。
「ヤブランはどう思う?」
「我に任せてもらえれば、突破は可能だが、主も戦うのだろう?」
勿論、この双剣の威力も試してみたいし。
それに、終わりが見えてきたのだ。
23階層。一段高い舞台にいるのは浅黒い肌のミノタウロス…の上位種、ミノタウロスキングだ。
舞台に上がると、戦闘が始まる。…強い!ミノタウロスも強いけど、上位種だけあって、力もスピードも段違いだ。加えて再生のスキル持ちらしく、射られた矢を引き抜くと、傷はすぐに再生した。
「厄介だな…主、任せて頂けるか?」
振り下ろされる斧を避けつつ、少し迷う。
「もう少しだけ…頑張らせて」
魔法への耐性も高く、思ったようなダメージが与えられない。
防御力も半端ないな…いや、これは私がこの双剣を使いこなせていないからだろう。
魔力を込めて剣で足を分断する。時空断裂の効果で、差程の力を入れなくともキングの右足首から下が落とされた。
シュガーに視線を送ると、空間支配の力で足を時空の狭間に消した。
バランスを崩したミノタウロスキングが、手をつく。魔力が足に込められ、再生していく…そうはさせない!
ついた手に同じ力で切りつけ、肘を砕くと窮地からの底力を発揮して、痛みなど感じていないかのような動きで、狂暴化して暴れる。
大きく後退して、呪いをかける。狂暴化の影響か、魔法への耐性が下がっている。
「ランス!」
「承知!」
牽制に動いていたランスだが、最高のタイミングでとどめを指した。
「や…やった」
ドロップアイテムの肉塊をヤブランが拾い、私は床にお尻をついた。
「にゃっ?!」
舞台に広がる魔法陣は、完全に油断していた私に作動して、別の場所へ転移させた。
「メイ!またなの!」
漆黒の闇の中心に、巨大なコアが浮かんでいる。
『ようやく来られたか。最初に魔力を感じてから四年…我がダンジョンは魅力的でしたでしょう?』
「数々の罠で進ませまいとし、更には米で農家魂に火をつけられ、通わざるを得なくされた。ある意味、最強のダンジョンだと思うよ」
何たって、主食が只で手に入るのだ。私にとっては夢のダンジョンだ。
『光栄です。では契約を』
浮いていたコアが、目の前に降りてくる。
「その前に…契約に使う魔力は通常の物ではだめなの?」
『今更、何を…これは神との契約。なれば要求する力も神力でないと。幸い、深淵の森の魔物や、近年増えた挑戦者達の力を得て、我の力は満たされています』
それなら、大きなダンジョンとはいえ、謎の力を多く持って行かれたりはしないかな。
慣れてきてはいるんだよね。この力も。増えてるみたいだし、回復も速くなってる。
『3ヵ所契約された事で、権能が増えたようです』
森羅万象で、契約した全てのダンジョンを離れていても把握可能になった。
そして、3ヵ所のコアが私に従属された。
それにより、ドロップアイテムを搾取する事も可能。
でも、それでは冒険者としての楽しみも失くすようなものだ。
大人気のウナドンの切り身がトラブルなく手に入るのは嬉しいけど、それだけかな。
マスタールーム間の移動も可能になった。海の世界、山の世界、深淵の森で採れる山菜も採取可能なここのマスタールーム。
早速眷属達を呼び寄せて、色々便利になった事も話した。
「さすが、我らが主。深淵の森を自由に出来るなら、世界樹も主の物となるのですか?」
「いや、さすがにそれは…山菜と一緒にしちゃだめでしょ…権限の一部はあるみたいだから、必要ならエルドさんに要求は出来るみたいだけど」
凄い事だよね…神獣が管理する物を分けて貰える権限なんて。
「栽培出来るなら、カシオブツにゃー!」
「それは、スマホで栽培してるし、いつも切らさないようにしてるでしょ?」
シュガーのマイペースさが今は少し有難かったりもするけど。
私の、ちょっとおかしいステータス。…神の、力…
「にゃ?どうしたにゃ?」
「そういえば、シュガーは眷属神なんだよね…それって、普通に人の眷属である事もあるのかな?」
「…にゃー?難しい事は分からないにゃー?でもメイは、にゃーの種族は関係なしに大好きって言ってくれるにゃ?」
「うん…大好きだよ。シュガーも、みんなもね!」
尊いもふもふ達が私を大好きでいてくれる。そんな最高の環境にいるのに、他に不満なんてない。今の生活が続けられるように、私は頑張るだけ。
それと、和三盆糖として送るから、色々試してみて。
メタルの収納庫から和三盆を受け取った。
和菓子…作れるかな?綺麗には出来なくても、味は一緒だよね。
とはいえ、和三盆を使った和菓子は初挑戦だ。
失敗しても、農園の道具屋和三盆は売っている。
とりあえず白あんは作れるし、食紅はないけど味は変わらないからいいよね。
時間はかかったけど、干菓子と練り切りは出来た?
まあ…鮭とばを作りながらだから、時間は有効活用している。
鮭とばは、オージェの分と、ランス達のおやつだ。
この為に、深淵の森ダンジョンでキラーシャケを集めて貰った。
おやつを作る為っていうと、みんな喜んで採ってきてくれる。季節に関係なく、食べ物が手に入る事は嬉しい。
さて、今日は気力があるうちに戻ろう。昨日みたいに1日無駄にしたくないからね。まあ…色々発見もあったし、全く無駄ではなかったけどね。
今日は、深淵の森ダンジョンの先に進むつもりだ。
翼を使って、自分で飛んで倒すつもり…まあ、最初から上手くいくとは思っていない。
手助けはされたけど、どうにか倒す事が出来た。
スキルの飛翔がいい仕事をしている。魔道具の羽根だけでは、飛ぶという感覚がなかったし、以前にスキルと魔法の力で飛んだ時も低空飛行しか出来なかった。
でも、飛翔の感覚と連動するのか、あまり気を向けずに飛ぶ事が出来る。
高い所とジェットコースターは苦手でも、この羽根を使ってなら大丈夫?
立体起動も空間起動に進化したから、位置の把握も容易だ。
よし…いざ22階層へ!
スマホから戻って、朝食の片付けをする。
「もう、おやつを作ってきたのか?」
「後でね!」
亜空間の扉を開けると、深淵の森ダンジョンの近く。曲がり道になっていて、ダンジョンからは死角になっている。
サクッと階層転移して、ワイバーンも倒す。
22階層は、デススパイダー。黒くて大きい、紅い目が八つ付いている。
10階層に出た奴よりかなり強いだろう。
飛んでくる糸を、感覚に従って避ける。フレイムのブレスが糸を焼き、縦横無尽に向かってくる蜘蛛に当てようとするけど、ブレスには溜めが必要。僅かな時間差がある。
「っつ!」
予見もフルに使って避けるけど、私が一番与し易いと見られたのか、集中攻撃される。
糸が皮膚の柔らかい所を掠めると、あっさりと皮膚が切れる。
あっという間に治ってしまうけど、痛みはあるから鬱陶しい。
血が地面に落ちると、ダンジョンが震えた。私の血、そんなに美味しいの?私が狙われてるのは、ダンジョンにとって美味しいから?
分からない。でも思い当たる節はある。
「ね…何で私の魔力は美味しいのかな?」
「集中しないとダメにゃ…でも、メイの魔力は特別にゃ」
魔力の質は魂に直結している。自分では分からないけど、きっとそれが大切にしてもらえる理由…
糸で燃え尽きる炎じゃ駄目…より高温で、広範囲の火力。
「ヤブラン!みんなに結界を!」
最強の竜鱗結界に囲まれた所で全てを焼き尽くす青白い炎の魔術が、蜘蛛を飲み込んだ。
抗い切れず、蜘蛛は塵すら残さず消滅した。
ボス戦後の宝箱。ワイバーンも考えてみたらボス扱いだったんだよね。
中身は、オリハルコンの双剣。次元魔法が付与されている。空間を切り裂く双剣だ。
「かなりの業物のようだ。双剣の使い手は主しかいない」
「うーん…重いけど、扱えなくはないかな」
レベルが低い頃ならともかく、今の私にはこの重さが頼もしく感じる。手数が重要な戦いの時は、今のミスリルの双剣を使えばいい。
「練習は必要そうだけど、使いこなせたら強くなれそう」
「メイ、階段があるけどどうするの?」
ボスの三連戦になるのか…ワイバーンは余裕になったけど、あの蜘蛛は凄く強かった。
「ヤブランはどう思う?」
「我に任せてもらえれば、突破は可能だが、主も戦うのだろう?」
勿論、この双剣の威力も試してみたいし。
それに、終わりが見えてきたのだ。
23階層。一段高い舞台にいるのは浅黒い肌のミノタウロス…の上位種、ミノタウロスキングだ。
舞台に上がると、戦闘が始まる。…強い!ミノタウロスも強いけど、上位種だけあって、力もスピードも段違いだ。加えて再生のスキル持ちらしく、射られた矢を引き抜くと、傷はすぐに再生した。
「厄介だな…主、任せて頂けるか?」
振り下ろされる斧を避けつつ、少し迷う。
「もう少しだけ…頑張らせて」
魔法への耐性も高く、思ったようなダメージが与えられない。
防御力も半端ないな…いや、これは私がこの双剣を使いこなせていないからだろう。
魔力を込めて剣で足を分断する。時空断裂の効果で、差程の力を入れなくともキングの右足首から下が落とされた。
シュガーに視線を送ると、空間支配の力で足を時空の狭間に消した。
バランスを崩したミノタウロスキングが、手をつく。魔力が足に込められ、再生していく…そうはさせない!
ついた手に同じ力で切りつけ、肘を砕くと窮地からの底力を発揮して、痛みなど感じていないかのような動きで、狂暴化して暴れる。
大きく後退して、呪いをかける。狂暴化の影響か、魔法への耐性が下がっている。
「ランス!」
「承知!」
牽制に動いていたランスだが、最高のタイミングでとどめを指した。
「や…やった」
ドロップアイテムの肉塊をヤブランが拾い、私は床にお尻をついた。
「にゃっ?!」
舞台に広がる魔法陣は、完全に油断していた私に作動して、別の場所へ転移させた。
「メイ!またなの!」
漆黒の闇の中心に、巨大なコアが浮かんでいる。
『ようやく来られたか。最初に魔力を感じてから四年…我がダンジョンは魅力的でしたでしょう?』
「数々の罠で進ませまいとし、更には米で農家魂に火をつけられ、通わざるを得なくされた。ある意味、最強のダンジョンだと思うよ」
何たって、主食が只で手に入るのだ。私にとっては夢のダンジョンだ。
『光栄です。では契約を』
浮いていたコアが、目の前に降りてくる。
「その前に…契約に使う魔力は通常の物ではだめなの?」
『今更、何を…これは神との契約。なれば要求する力も神力でないと。幸い、深淵の森の魔物や、近年増えた挑戦者達の力を得て、我の力は満たされています』
それなら、大きなダンジョンとはいえ、謎の力を多く持って行かれたりはしないかな。
慣れてきてはいるんだよね。この力も。増えてるみたいだし、回復も速くなってる。
『3ヵ所契約された事で、権能が増えたようです』
森羅万象で、契約した全てのダンジョンを離れていても把握可能になった。
そして、3ヵ所のコアが私に従属された。
それにより、ドロップアイテムを搾取する事も可能。
でも、それでは冒険者としての楽しみも失くすようなものだ。
大人気のウナドンの切り身がトラブルなく手に入るのは嬉しいけど、それだけかな。
マスタールーム間の移動も可能になった。海の世界、山の世界、深淵の森で採れる山菜も採取可能なここのマスタールーム。
早速眷属達を呼び寄せて、色々便利になった事も話した。
「さすが、我らが主。深淵の森を自由に出来るなら、世界樹も主の物となるのですか?」
「いや、さすがにそれは…山菜と一緒にしちゃだめでしょ…権限の一部はあるみたいだから、必要ならエルドさんに要求は出来るみたいだけど」
凄い事だよね…神獣が管理する物を分けて貰える権限なんて。
「栽培出来るなら、カシオブツにゃー!」
「それは、スマホで栽培してるし、いつも切らさないようにしてるでしょ?」
シュガーのマイペースさが今は少し有難かったりもするけど。
私の、ちょっとおかしいステータス。…神の、力…
「にゃ?どうしたにゃ?」
「そういえば、シュガーは眷属神なんだよね…それって、普通に人の眷属である事もあるのかな?」
「…にゃー?難しい事は分からないにゃー?でもメイは、にゃーの種族は関係なしに大好きって言ってくれるにゃ?」
「うん…大好きだよ。シュガーも、みんなもね!」
尊いもふもふ達が私を大好きでいてくれる。そんな最高の環境にいるのに、他に不満なんてない。今の生活が続けられるように、私は頑張るだけ。
応援ありがとうございます!
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