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37話 俺、両手に姉
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歓楽街に出ると相変わらず人々で賑わっている。
でも最後に見た姉ちゃんの強烈パンチは迫力がすごかった。あんなんで殴られたら脳震盪では済まない、最悪命がなくなる。
しかし、セレシアの居場所は掴めないままか。
ものすごく寄り道をした気もするけど、どっかに手がかりがあったりしないかな。
その時だった。
セレシアとよく似た女性とすれ違ったのは。特徴も一致する。というよりほんとにあの時のままだ。
顔つきは父さん譲りでも、その美貌は母さん譲り。もう俺の実姉とは思えないほど逞しくカッコいい。男として惨めだな俺って。
「少し伺っても? このような少年をご存知で?」
「いや~すまねぇな」
「そうですか……ご協力感謝します」
でも言葉遣いが昔と全然違う?
いや、騎士として活動するたびに変わったんだろうな。それだけ成長したってことかセレシアも。
って俺は何様だよ。
けど一人ひとりに手書きの紙を見せ、ずっと聞き回っている。それも俺が赤ん坊の時の顔を見せて。
成長してから顔立ちも変わったというのに、あれじゃ見つかるわけないじゃないか。
でもずっとこんな感じでセレシアが俺のことを探し回ってくれていたと思うと、心が痛くもあり、何だか温かい。
「少しお伺いしても?」
俺がじーっと見ていたことに気づいたセレシアは、一枚の紙を俺に見せてきた。
やっぱり思った通り、赤ん坊の時の顔だった。
ていうか、俺こんな顔してたのか!?
描かれていたのは、何とも憎たらしい目つきに引きずった口、どう見ても人をバカにしている時の顔だ。
こんなにも人相が悪かったとは……。
「えっとこの赤ちゃんの顔を見て想像してみてください。もう学園に通ってる歳になってるはず。この面影が残る少年を見かけたことはないですか?」
「そんなに大切な少年なのか?」
「ええ、私にとっては……実の弟。ですけどわけがあってまだ赤ちゃんの時に……」
「でもそんな似顔絵じゃ見つからないだろ?」
「それもそうですが……ただ少しでも可能性があるなら私は探し続けます。大切な弟ですから」
俺はセレシアの手を握った。
柔らかくて温かい、それにスベスベしてる。
「応援してくれるんですか。ありがとうございます」
「そ、その俺の顔をしっかりと見てくれないか」
とセレシアに言った。
顔を上げ目が合うと、握った手を離した。俺の頬に手を持ってくると「やっと見つけた……」それだけを言って、強く抱きしめてくれたのだ。
「何かお姉ちゃんヤキモチ妬いちゃうな」
いつも通り姉ちゃんは空気を読まず茶々を入れてくる。ほんと変わらずって感じだけど、さすがにこういう時ぐらいは静かにして欲しい。
そんな願いが成就したのか、ユリアナが姉ちゃんの手を掴み、俺とセレシアとの距離を取ってくれた。
「ユリアナちゃん!」
「静かにしてください! やっとネオがお姉さんと再会したんですから」
「えぇ~でも……」
まだ駄々をこねてるみたいだ。
頼むユリアナ、姉ちゃんをそのまま抑え込んでくれ。
「えっと何て呼べばいいか……?」
「お姉ちゃん、もしくは姉貴」
「へ?」
少し毛色が姉ちゃんと似ているのは気のせいか?
それとも姉というのは、弟に「お姉ちゃん」と呼ばせてたいものなのだろうか。
「ずっと恋焦がれていましたよ。我が弟」
そっかセレシアは俺の名を知らないのか。
だったらまずは自己紹介を。
「今の俺はネオ。あそこにいる姉ちゃんが付けてくれた名前だ」
「ふ~ん……『姉ちゃん』ですか。悪魔のようですね、あの人」
「え、何でわかったの?」
「わたしはこう見えて《鑑定眼》持ちです。魔力が枯渇するから長くは使えないですけど」
姉ちゃんは人族には扱えない、そう言っていたがここに扱える人出てきたんですけど。セレシアも特殊な体質なのかもしれないな。
俺と一緒で、父さんと母さんから産まれた子供だから。
「血は繋がってない? だったらあの女狐を『姉ちゃん』と呼ぶのはやめなさい。代わりに私が――」
「待ちなさいよ! ネオ君はお姉ちゃんの家族。痴女は引っ込んでて!」
ユリアナが抑え込んでくれていたはずだったが、やはり姉ちゃんには力及ばずだったか。
それに女狐やら、痴女やらとんでもない言葉が飛び交っているが、まあこれも平和だからこそなのかもしれない。
「ねえ! ネオ君はどっちがほんとのお姉ちゃんに相応しいと思う!?」
「どっちですか! もちろん血が繋がってる私に決まってますよね」
「ちが~う!! お姉ちゃんこそがネオ君のお姉ちゃんに相応しいの。お姉ちゃんからネオ君を奪わないで痴女!」
「わたしの弟を奪わないでもらえる。悪魔だけにこの悪女が」
時間が経過する度にひどくなる一方だ。
これはマズいと思い、仲介に入るが、
「どっちなの!?」
詰め寄る姉ちゃんの眼光は凄まじい。
「どっちですか!?」
腕を強く引くセレシアはもう必死だ。
こんな二人に囲まれて俺は幸せだなあ~なんて言えるか!
俺はそこまで器は大きくない。許容範囲があるんだ。この状況を打開する策は一つ。
あやふやにしてこの場から逃げる、ただそれだけだ。
でもただ一つだけ言えることがある。
セレシア、いや姉貴が無事でよかった。
でも最後に見た姉ちゃんの強烈パンチは迫力がすごかった。あんなんで殴られたら脳震盪では済まない、最悪命がなくなる。
しかし、セレシアの居場所は掴めないままか。
ものすごく寄り道をした気もするけど、どっかに手がかりがあったりしないかな。
その時だった。
セレシアとよく似た女性とすれ違ったのは。特徴も一致する。というよりほんとにあの時のままだ。
顔つきは父さん譲りでも、その美貌は母さん譲り。もう俺の実姉とは思えないほど逞しくカッコいい。男として惨めだな俺って。
「少し伺っても? このような少年をご存知で?」
「いや~すまねぇな」
「そうですか……ご協力感謝します」
でも言葉遣いが昔と全然違う?
いや、騎士として活動するたびに変わったんだろうな。それだけ成長したってことかセレシアも。
って俺は何様だよ。
けど一人ひとりに手書きの紙を見せ、ずっと聞き回っている。それも俺が赤ん坊の時の顔を見せて。
成長してから顔立ちも変わったというのに、あれじゃ見つかるわけないじゃないか。
でもずっとこんな感じでセレシアが俺のことを探し回ってくれていたと思うと、心が痛くもあり、何だか温かい。
「少しお伺いしても?」
俺がじーっと見ていたことに気づいたセレシアは、一枚の紙を俺に見せてきた。
やっぱり思った通り、赤ん坊の時の顔だった。
ていうか、俺こんな顔してたのか!?
描かれていたのは、何とも憎たらしい目つきに引きずった口、どう見ても人をバカにしている時の顔だ。
こんなにも人相が悪かったとは……。
「えっとこの赤ちゃんの顔を見て想像してみてください。もう学園に通ってる歳になってるはず。この面影が残る少年を見かけたことはないですか?」
「そんなに大切な少年なのか?」
「ええ、私にとっては……実の弟。ですけどわけがあってまだ赤ちゃんの時に……」
「でもそんな似顔絵じゃ見つからないだろ?」
「それもそうですが……ただ少しでも可能性があるなら私は探し続けます。大切な弟ですから」
俺はセレシアの手を握った。
柔らかくて温かい、それにスベスベしてる。
「応援してくれるんですか。ありがとうございます」
「そ、その俺の顔をしっかりと見てくれないか」
とセレシアに言った。
顔を上げ目が合うと、握った手を離した。俺の頬に手を持ってくると「やっと見つけた……」それだけを言って、強く抱きしめてくれたのだ。
「何かお姉ちゃんヤキモチ妬いちゃうな」
いつも通り姉ちゃんは空気を読まず茶々を入れてくる。ほんと変わらずって感じだけど、さすがにこういう時ぐらいは静かにして欲しい。
そんな願いが成就したのか、ユリアナが姉ちゃんの手を掴み、俺とセレシアとの距離を取ってくれた。
「ユリアナちゃん!」
「静かにしてください! やっとネオがお姉さんと再会したんですから」
「えぇ~でも……」
まだ駄々をこねてるみたいだ。
頼むユリアナ、姉ちゃんをそのまま抑え込んでくれ。
「えっと何て呼べばいいか……?」
「お姉ちゃん、もしくは姉貴」
「へ?」
少し毛色が姉ちゃんと似ているのは気のせいか?
それとも姉というのは、弟に「お姉ちゃん」と呼ばせてたいものなのだろうか。
「ずっと恋焦がれていましたよ。我が弟」
そっかセレシアは俺の名を知らないのか。
だったらまずは自己紹介を。
「今の俺はネオ。あそこにいる姉ちゃんが付けてくれた名前だ」
「ふ~ん……『姉ちゃん』ですか。悪魔のようですね、あの人」
「え、何でわかったの?」
「わたしはこう見えて《鑑定眼》持ちです。魔力が枯渇するから長くは使えないですけど」
姉ちゃんは人族には扱えない、そう言っていたがここに扱える人出てきたんですけど。セレシアも特殊な体質なのかもしれないな。
俺と一緒で、父さんと母さんから産まれた子供だから。
「血は繋がってない? だったらあの女狐を『姉ちゃん』と呼ぶのはやめなさい。代わりに私が――」
「待ちなさいよ! ネオ君はお姉ちゃんの家族。痴女は引っ込んでて!」
ユリアナが抑え込んでくれていたはずだったが、やはり姉ちゃんには力及ばずだったか。
それに女狐やら、痴女やらとんでもない言葉が飛び交っているが、まあこれも平和だからこそなのかもしれない。
「ねえ! ネオ君はどっちがほんとのお姉ちゃんに相応しいと思う!?」
「どっちですか! もちろん血が繋がってる私に決まってますよね」
「ちが~う!! お姉ちゃんこそがネオ君のお姉ちゃんに相応しいの。お姉ちゃんからネオ君を奪わないで痴女!」
「わたしの弟を奪わないでもらえる。悪魔だけにこの悪女が」
時間が経過する度にひどくなる一方だ。
これはマズいと思い、仲介に入るが、
「どっちなの!?」
詰め寄る姉ちゃんの眼光は凄まじい。
「どっちですか!?」
腕を強く引くセレシアはもう必死だ。
こんな二人に囲まれて俺は幸せだなあ~なんて言えるか!
俺はそこまで器は大きくない。許容範囲があるんだ。この状況を打開する策は一つ。
あやふやにしてこの場から逃げる、ただそれだけだ。
でもただ一つだけ言えることがある。
セレシア、いや姉貴が無事でよかった。
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