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39話 俺、覚悟を決める
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父さん、母さんの様子も見に行きたい。
もしかしたら今回の件に巻き込んでしまうかもしれないからだ。しかし王国に従軍を命じられ、徴収されている可能性だってある。
だったら急いで向かうべきか。
姉ちゃんは別として、幸い俺とユリアナはもう魔国に戸籍を置いている形になる。
でも姉貴の方はそろそろ徴収されてもおかしくない、はずなんだが。
「姉貴、徴収の方は?」
「あれ? 知らないのですか?」
「何が?」
「王国の制度のことです。大々的に徴収と言ってはいますが、実際は年齢制限が設けられていて三十代以上の男女、もしくは学園に準ずる者です」
「ということは、姉貴は対象外ってことか。だったら父さんと母さんは?」
「母上は魔道士として、父上は当主としての従軍になりますね」
てっきり姉貴も従軍するのかと思ったが、そうではなかった。が、しかし代わりに父さんと母さんが戦に行くとなると俺からしてみればもう他人事ではない。
それにサラのことだって心配だ。
今は俺が裏切ったのだと信じているみたいだし、ああ強く見せてはいたが、かなりショックを受けたはずだ。またやるべきことが増えたって感じだな。
だが、どうやったらこの戦を止められる?
父さん母さんはもちろん、サラには傷ついて欲しくない。
だったら覚悟を決めるしか……脅威となりうる対象の敵ができれば両国も手を結び争わずに済むかもしれない。
そして俺は姉ちゃんにとある提案をした。
「姉ちゃん、俺を魔国に連れて行ってくれ」
「そんなに行きたいの。ああ~そういうことなのね。お姉ちゃんの結婚する決心が――」
「父さんと母さん、サラも救える方法を探すため」
「ダメ!! お姉ちゃんは学園を卒業してから就職させてあげるって言っただけ」
「やっぱりそうだよな……だったら俺は今からアズルレーンまで一人で行く」
「それもダメよ。ネオ君ケガしちゃうじゃない」
「だったらどうしろっていうんだ!!」
「よく考えてみて。ネオ君は魔王の力を手にした。いわば勇者をも超える存在。答えはわかるよね」
姉ちゃんが何を言わんとしているかはわかる。
その魔王の力を使って大切な人を守れ、と言いたいのだろう。しかし現にもう開戦している状態だ。
決着をつけようにも、両国の最高権威者を討たなければ収集はつかない。
そうか……いいこと思いついたぞ。
ここはイザベル教団と勇者をせいぜい役に立ってもらうとするか。
「姉貴、アズルレーンは俺と姉ちゃんが殺したヤクモ以外に勇者を召喚したのか?」
「そのようですね。不確かな情報ではありますが、前勇者よりも強大な力を持っていると報告が上がっていたような」
「アトランティアには他の勇者の存在は?」
「隣国のことまではさすがに……」
「ユリアナはどうだ?」
「残念だけど、わたしも情報は持ってないわ」
なのだとしたら、どうやって勇者に対抗しようと?
そこが疑問で仕方がない。一般兵やこの世界に住む人間では、あの強大な力に対抗するのはほぼほぼ不可能といえるだろう。
なぜなら、あの魔術の才を持つユリアナでさえ、あっさりと敗北したんだからな。というより、勇者は魔術というこの世界の概念を崩す異能と呼ばれる独自の力を持ち合わせている。
ヤクモでいう大蛇の召喚。
ケントの圧倒的な身体能力向上。あの化け物ケントのような。
「姉ちゃん聞きたいんだが、イザベル教団は関与してくるかな?」
「してくるでしょうね、間違いなく。だってエリスはもともと戦の女神だから」
「そうだとしたら自ら顕現して勇者を始末するなんてことは?」
「ないかな。一時的に信者に人智を超えた力を授けるくらいはすると思うけど」
俺の考えは決まった。
今すぐに戦場へと出向き、まずは転生者とそのイザベル信者をぶつける。
そして弱ったところで俺が叩きのめす。
はい、それですべてが解決。
この戦犯は勇者ってことにもできるし、この際イザベル教団のせいにしてしまうのもアリだ。
死人に口なし、とはこのことだ。
まあ、俺、何も悪いことしてないけど。
でも問題はどう衝突させるかだが……ここは二手に分かれて行動するか。
「姉貴とユリアナはどんな方法でもいい。戦場の前線に勇者を誘導して欲しい」
「なぜ、私が?」
姉貴はどうやら不満のようだ。
そりゃ再開してすぐ俺の都合に振り回されてるからそう思うのも当然のことだ。けど、今は姉貴しか頼れる人がいない。
そこそこ顔が広くて、色々と融通が効く人物。
仮にユリアナがオブリージュ家にまだ跡取りとして行動していたとしたら、間違いなくユリアナに頼んでいただろう。なんたって彼女は公爵家で四大貴族の一つ、そのご息女だからな。
だが、今は違う。
身分も立場も平民と変わらない。
結局というか、だったらといううのか頼れるのは姉貴しかいないわけだ。
もしかしたら今回の件に巻き込んでしまうかもしれないからだ。しかし王国に従軍を命じられ、徴収されている可能性だってある。
だったら急いで向かうべきか。
姉ちゃんは別として、幸い俺とユリアナはもう魔国に戸籍を置いている形になる。
でも姉貴の方はそろそろ徴収されてもおかしくない、はずなんだが。
「姉貴、徴収の方は?」
「あれ? 知らないのですか?」
「何が?」
「王国の制度のことです。大々的に徴収と言ってはいますが、実際は年齢制限が設けられていて三十代以上の男女、もしくは学園に準ずる者です」
「ということは、姉貴は対象外ってことか。だったら父さんと母さんは?」
「母上は魔道士として、父上は当主としての従軍になりますね」
てっきり姉貴も従軍するのかと思ったが、そうではなかった。が、しかし代わりに父さんと母さんが戦に行くとなると俺からしてみればもう他人事ではない。
それにサラのことだって心配だ。
今は俺が裏切ったのだと信じているみたいだし、ああ強く見せてはいたが、かなりショックを受けたはずだ。またやるべきことが増えたって感じだな。
だが、どうやったらこの戦を止められる?
父さん母さんはもちろん、サラには傷ついて欲しくない。
だったら覚悟を決めるしか……脅威となりうる対象の敵ができれば両国も手を結び争わずに済むかもしれない。
そして俺は姉ちゃんにとある提案をした。
「姉ちゃん、俺を魔国に連れて行ってくれ」
「そんなに行きたいの。ああ~そういうことなのね。お姉ちゃんの結婚する決心が――」
「父さんと母さん、サラも救える方法を探すため」
「ダメ!! お姉ちゃんは学園を卒業してから就職させてあげるって言っただけ」
「やっぱりそうだよな……だったら俺は今からアズルレーンまで一人で行く」
「それもダメよ。ネオ君ケガしちゃうじゃない」
「だったらどうしろっていうんだ!!」
「よく考えてみて。ネオ君は魔王の力を手にした。いわば勇者をも超える存在。答えはわかるよね」
姉ちゃんが何を言わんとしているかはわかる。
その魔王の力を使って大切な人を守れ、と言いたいのだろう。しかし現にもう開戦している状態だ。
決着をつけようにも、両国の最高権威者を討たなければ収集はつかない。
そうか……いいこと思いついたぞ。
ここはイザベル教団と勇者をせいぜい役に立ってもらうとするか。
「姉貴、アズルレーンは俺と姉ちゃんが殺したヤクモ以外に勇者を召喚したのか?」
「そのようですね。不確かな情報ではありますが、前勇者よりも強大な力を持っていると報告が上がっていたような」
「アトランティアには他の勇者の存在は?」
「隣国のことまではさすがに……」
「ユリアナはどうだ?」
「残念だけど、わたしも情報は持ってないわ」
なのだとしたら、どうやって勇者に対抗しようと?
そこが疑問で仕方がない。一般兵やこの世界に住む人間では、あの強大な力に対抗するのはほぼほぼ不可能といえるだろう。
なぜなら、あの魔術の才を持つユリアナでさえ、あっさりと敗北したんだからな。というより、勇者は魔術というこの世界の概念を崩す異能と呼ばれる独自の力を持ち合わせている。
ヤクモでいう大蛇の召喚。
ケントの圧倒的な身体能力向上。あの化け物ケントのような。
「姉ちゃん聞きたいんだが、イザベル教団は関与してくるかな?」
「してくるでしょうね、間違いなく。だってエリスはもともと戦の女神だから」
「そうだとしたら自ら顕現して勇者を始末するなんてことは?」
「ないかな。一時的に信者に人智を超えた力を授けるくらいはすると思うけど」
俺の考えは決まった。
今すぐに戦場へと出向き、まずは転生者とそのイザベル信者をぶつける。
そして弱ったところで俺が叩きのめす。
はい、それですべてが解決。
この戦犯は勇者ってことにもできるし、この際イザベル教団のせいにしてしまうのもアリだ。
死人に口なし、とはこのことだ。
まあ、俺、何も悪いことしてないけど。
でも問題はどう衝突させるかだが……ここは二手に分かれて行動するか。
「姉貴とユリアナはどんな方法でもいい。戦場の前線に勇者を誘導して欲しい」
「なぜ、私が?」
姉貴はどうやら不満のようだ。
そりゃ再開してすぐ俺の都合に振り回されてるからそう思うのも当然のことだ。けど、今は姉貴しか頼れる人がいない。
そこそこ顔が広くて、色々と融通が効く人物。
仮にユリアナがオブリージュ家にまだ跡取りとして行動していたとしたら、間違いなくユリアナに頼んでいただろう。なんたって彼女は公爵家で四大貴族の一つ、そのご息女だからな。
だが、今は違う。
身分も立場も平民と変わらない。
結局というか、だったらといううのか頼れるのは姉貴しかいないわけだ。
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