【完結】高級男娼の俺を一週間買った男は不能でした

華抹茶

文字の大きさ
7 / 9

7

しおりを挟む

 それからはゆっくりお風呂に入ってご飯を食べて。それから夜にまたテオ様の後ろを開発して。

 翌日には挿入までやった。

「あっ…く…んうっ!」

「はっはっ…テオ様、気持ち、いいです、か?」

「あ…気持ち、いいっ…んあっ」

 パンっパンっと音が響くぐらい腰を打ち付ける。何度も何度も。テオ様もすっかり快感を拾えているようですごく気持ちよくなっている。今回は初めての挿入で辛くならないよう後ろから突いている。顔は見えないけど、きっととろんとした顔をしているんだろう。

 俺よりもデカい人なのに、俺に組み敷かれてあんあん言ってるこの状況。やばい…俺もなんかハマりそう。でも本当は嵌めて貰う方が好きだからテオ様にガンガンやってほしいけど。不能だって言うのが残念だよほんと。

 後ろから突きながら前もちゃんと弄ってあげる。不能だって言うのが信じられないくらいガッチガチだ。

「あ、もう、ダメ、だっ…イクっ! イクっ! イ、クぅっ…!」

「俺もっ…うっ…!」

 テオ様がイってからすぐ俺もイッた。びゅるびゅるっと白濁液を噴き出している。体をびくんびくんと震わせて、精子を出し切ったらくたりと倒れこんだ。

「テオ様、今日も上手にイケましたね。よくできました」

 後ろから抱きしめながら頭を撫でてあげる。本当なら不敬かもしれないけど、テオ様も嬉しそうだし大丈夫だよな。


 それから残された日数、こうやってテオ様を突いて突いて突きまくって後ろの練習を終えた。本番は、将来の結婚相手だろう。その時にちゃんと上手く出来たらいいな。


「イルミリオ、今日まで世話になった。ありがとう」

「いいえテオ様。この一週間とても楽しかったです。こちらこそありがとうございました」

「ああ、俺も楽しかった。まさかああなるとは思いもしなかったが…。だが、君のお陰で悩みも無くなった。本当に礼を言う。名残惜しいが、国に帰らねば。では元気でな」

「はい。テオ様もどうぞお元気で。これからの活躍をここからお祈りしています」

 最後に軽くハグをして別れた。もう二度と会うことはないだろう。本当にこの一週間がとても楽しくてずっとこうだったらいいのに、なんてあり得ないことを考えたりもした。

 でも時間は無情にも過ぎていく。テオ様が去った後も俺はしばらくそこから動けなかった。

「…あれ? なんで…」

 気が付けばぽろぽろと涙を流していた。

「はは…寂しいなんてこの俺が思うなんて…」

 俺を育ててくれたここの主人以外で、初めて俺を認めてくれた人だった。褒めてくれた人だった。
 俺を大切にしてくれた人だった。優しくしてくれた人だった。

 でももう二度と会うことは出来ない。俺もここから出るつもりもない。

 テオ様との思い出は忘れることはないだろう。



 そしていつもの日常へと戻った。


「あんっ、あ…もっとっ…そこ、いいっ! あっあっ、やん!」

 今日も俺に客が付く。いつものように好きに抱かれて、客を満足させてやる。

「ほらよっ! もっと締まりをよくしろっ!」

 バチンっ! と尻を思いきり叩かれかなり痛い。

「ああっ! 良い! 気持ちいいっ!」

 本当は叩かれるなんてただ痛いだけで大嫌いだ。だけど、それが良いと思わせなきゃいけない。

「ははっ! 叩かれて感じるなんてとんだ変態だなっ! だが締まりが良くなったぞっ! おらっ!」

 そしてまた叩かれる。後でかなり腫れるだろう。ちゃんと冷やしておかなきゃ…。


 苦痛の時間を過ごし、その客を見送る。「今日もよかったぞ。また来る」そう言って満足そうに帰っていった。

 もう二度と来んな、ばーか。


 そしていつものように小間使いを呼び部屋の掃除をさせ、俺は風呂へと向かう。

「くっそ…。痛ぇ…。あのジジイ何度も何度も叩きやがって…。俺の可愛いお尻が腫れてら」


 風呂から上がり軽く食事をして、綺麗になったベッドで横になる。そして思い出すのはテオ様のこと。

『イルミリオは化け物なんかじゃない。この髪も、その瞳もとても綺麗だと思う』

『君は賢いな。男娼だなんて勿体ない。…でもそのお陰で俺は救われた』

『この出会いに感謝しなければな。そう思えば俺の過去も意味があったのかもしれない』

 あの低くて優しい声。頭を撫でてくれる大きな手。包み込んでくれる俺よりも大きな体。温かい言葉。

『イルミリオの淹れる茶は美味いな。これからもずっと飲みたいくらいだ』

『ほう。良く知っているな。流石だ』

『君は優しいな。心が温かくて癒される。…きっと痛みを知っているからこそ、人の痛みにも気づけて労われるのだろうな』

 好きに抱かれるための男娼なのに。欲を満たすだけの存在なのに。そんな俺を1人の人間として扱ってくれる優しい言葉。

「テオ様…」

 俺は客に恋をした。テオ様に恋をしてしまった。ただの男娼なのに。ただの客なのに。

 そして今日も枕を濡らしてテオ様を想う。もう二度と会えないあの人を想って。



 そしてあの日から8か月ほど経ったある日。ここの主人が部屋に飛び込んできた。

「ミリオ! 起きてるかっ!?」

「…んあ? 何? まだ寝てたわ…。今何時…って寝てから3時間しかたってねぇじゃん。なんだよ…俺疲れてんのに…」

「馬鹿野郎! 急いで起きろ! お前に客だ!」

「…はぁ? 客ぅ? つーかまだ店開いてねーだろうが。誰だよ、そんな非常識な客は…」

「イルミリオ、久しいな。非常識で済まない。だが早く会いたくて無理を言った」

「……嘘。なんで…」

 そこにはもう二度と会えないテオ様が立っていた。俺の大好きな綺麗な顔で微笑みながら。

 慌てて起きて身支度を整え、テオ様のところへ向かう。

「イルミリオ。元気そうで何よりだ」

「テ、テオ様もお元気そうで良かったです。お久し、ぶりです…」

 夢じゃない。会いたいと思っていたテオ様が、目の前にいる。でもなんで? あの件はもう解決したはずじゃ…。

 「じゃ、後は2人でごゆっくり」そう言い残してここの主人は部屋を出ていった。

 お茶を淹れてテオ様へ差し出す。

「ああ、久しぶりのイルミリオのお茶だ。…うむ、相変らずいい香りだな。美味い」

「あの…テオ様。なぜここに? あ、あの事が上手くいった報告ですか? それともまさか…」

「落ち着いてくれ。…そうだな。結論を言えば上手くいかなかった」

「え…。嘘…。」

 なんで? テオ様が子供を産めば万事解決するのになんで失敗したんだ?

「実は――」

 テオ様は帰ってからの事を全部話してくれた。

 まず家に帰って事情を説明。テオ様が子供を産む選択をしたことを伝えた。それでちょっとだけ揉めたが、そうしなければお家断絶になると説得し受け入れられた。

 それから本当にテオ様が抱かれることが出来るのかを確認するため、閨教育の時の講師を呼び実践。
 だが、結果は惨敗。なんとテオ様が気持ち悪くなって吐いたらしい。

 相手が悪かったのかも、と他の人を呼んでみたが全て惨敗。相手が誰であっても気持ち悪くて吐いてしまった。

 しかも指を入れている段階で。実践どころか準備の段階でダメだった。

「なんでですか? 俺との時は問題なかったのに…」

「…その事なんだが、どうやら俺は君じゃなければ無理らしい」

「え?」

 ちょっと待って。幻聴か? 凄く自分に都合のいい言葉が聞こえたんだが。

「それを確かめるために、今日ここへ来た。疲れているところ悪いが、相手をしてくれるか?」

 テオ様に求めてもらえるなら、疲れていようが寝不足だろうがなんだって構わない。

 二つ返事ですぐに準備した。

しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました

あと
BL
「お兄ちゃん!人肌脱ぎます!」 完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け 可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…? 攻め:ヴィクター・ローレンツ 受け:リアム・グレイソン 弟:リチャード・グレイソン  pixivにも投稿しています。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。

批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。

アプリで都合のいい男になろうとした結果、彼氏がバグりました

あと
BL
「目指せ!都合のいい男!」 穏やか完璧モテ男(理性で執着を押さえつけてる)×親しみやすい人たらし可愛い系イケメン 攻めの両親からの別れろと圧力をかけられた受け。関係は秘密なので、友達に相談もできない。悩んでいる中、どうしても別れたくないため、愛人として、「都合のいい男」になることを決意。人生相談アプリを手に入れ、努力することにする。しかし、攻めに約束を破ったと言われ……?   攻め:深海霧矢 受け:清水奏 前にアンケート取ったら、すれ違い・勘違いものが1位だったのでそれ系です。 ハピエンです。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。 自己判断で消しますので、悪しからず。

「自由に生きていい」と言われたので冒険者になりましたが、なぜか旦那様が激怒して連れ戻しに来ました。

キノア9g
BL
「君に義務は求めない」=ニート生活推奨!? ポジティブ転生者と、言葉足らずで愛が重い氷の伯爵様の、全力すれ違い新婚ラブコメディ! あらすじ 「君に求める義務はない。屋敷で自由に過ごしていい」 貧乏男爵家の次男・ルシアン(前世は男子高校生)は、政略結婚した若き天才当主・オルドリンからそう告げられた。 冷徹で無表情な旦那様の言葉を、「俺に興味がないんだな! ラッキー、衣食住保証付きのニート生活だ!」とポジティブに解釈したルシアン。 彼はこっそり屋敷を抜け出し、偽名を使って憧れの冒険者ライフを満喫し始める。 「旦那様は俺に無関心」 そう信じて、半年間ものんきに遊び回っていたルシアンだったが、ある日クエスト中に怪我をしてしまう。 バレたら怒られるかな……とビクビクしていた彼の元に現れたのは、顔面蒼白で息を切らした旦那様で――!? 「君が怪我をしたと聞いて、気が狂いそうだった……!」 怒鳴られるかと思いきや、折れるほど強く抱きしめられて困惑。 えっ、放置してたんじゃなかったの? なんでそんなに必死なの? 実は旦那様は冷徹なのではなく、ルシアンが好きすぎて「嫌われないように」と身を引いていただけの、超・奥手な心配性スパダリだった! 「君を守れるなら、森ごと消し飛ばすが?」 「過保護すぎて冒険になりません!!」 Fランク冒険者ののんきな妻(夫)×国宝級魔法使いの激重旦那様。 すれ違っていた二人が、甘々な「週末冒険者夫婦」になるまでの、勘違いと溺愛のハッピーエンドBL。

「役立たず」と追放された神官を拾ったのは、不眠に悩む最強の騎士団長。彼の唯一の癒やし手になった俺は、その重すぎる独占欲に溺愛される

水凪しおん
BL
聖なる力を持たず、「穢れを祓う」ことしかできない神官ルカ。治癒の奇跡も起こせない彼は、聖域から「役立たず」の烙印を押され、無一文で追放されてしまう。 絶望の淵で倒れていた彼を拾ったのは、「氷の鬼神」と恐れられる最強の竜騎士団長、エヴァン・ライオネルだった。 長年の不眠と悪夢に苦しむエヴァンは、ルカの側にいるだけで不思議な安らぎを得られることに気づく。 「お前は今日から俺専用の癒やし手だ。異論は認めん」 有無を言わさず騎士団に連れ去られたルカの、無能と蔑まれた力。それは、戦場で瘴気に蝕まれる騎士たちにとって、そして孤独な鬼神の心を救う唯一の光となる奇跡だった。 追放された役立たず神官が、最強騎士団長の独占欲と溺愛に包まれ、かけがえのない居場所を見つける異世界BLファンタジー!

婚約破棄で追放された悪役令息の俺、実はオメガだと隠していたら辺境で出会った無骨な傭兵が隣国の皇太子で運命の番でした

水凪しおん
BL
「今この時をもって、貴様との婚約を破棄する!」 公爵令息レオンは、王子アルベルトとその寵愛する聖女リリアによって、身に覚えのない罪で断罪され、全てを奪われた。 婚約、地位、家族からの愛――そして、痩せ衰えた最果ての辺境地へと追放される。 しかし、それは新たな人生の始まりだった。 前世の知識というチート能力を秘めたレオンは、絶望の地を希望の楽園へと変えていく。 そんな彼の前に現れたのは、ミステリアスな傭兵カイ。 共に困難を乗り越えるうち、二人の間には強い絆が芽生え始める。 だがレオンには、誰にも言えない秘密があった。 彼は、この世界で蔑まれる存在――「オメガ」なのだ。 一方、レオンを追放した王国は、彼の不在によって崩壊の一途を辿っていた。 これは、どん底から這い上がる悪役令息が、運命の番と出会い、真実の愛と幸福を手に入れるまでの物語。 痛快な逆転劇と、とろけるほど甘い溺愛が織りなす、異世界やり直しロマンス!

本当に悪役なんですか?

メカラウロ子
BL
気づいたら乙女ゲームのモブに転生していた主人公は悪役の取り巻きとしてモブらしからぬ行動を取ってしまう。 状況が掴めないまま戸惑う主人公に、悪役令息のアルフレッドが意外な行動を取ってきて… ムーンライトノベルズ にも掲載中です。

俺は北国の王子の失脚を狙う悪の側近に転生したらしいが、寒いのは苦手なのでトンズラします

椿谷あずる
BL
ここはとある北の国。綺麗な金髪碧眼のイケメン王子様の側近に転生した俺は、どうやら彼を失脚させようと陰謀を張り巡らせていたらしい……。いやいや一切興味がないし!寒いところ嫌いだし!よし、やめよう! こうして俺は逃亡することに決めた。

「婚約を破棄する!」から始まる話は大抵名作だと聞いたので書いてみたら現実に婚約破棄されたんだが

ivy
BL
俺の名前はユビイ・ウォーク 王弟殿下の許嫁として城に住む伯爵家の次男だ。 余談だが趣味で小説を書いている。 そんな俺に友人のセインが「皇太子的な人があざとい美人を片手で抱き寄せながら主人公を指差してお前との婚約は解消だ!から始まる小説は大抵面白い」と言うものだから書き始めて見たらなんとそれが現実になって婚約破棄されたんだが? 全8話完結

処理中です...