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第二章
03
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「ここです」
ルドルフが案内したのは、森の奥にある大きな木の根元だった。
大きく空いた洞の中に、毛布にくるまった一羽の鳥がうずくまっていた。
「これがプティノ……?」
手のひらに収まる程の小さな身体。
鮮やかな赤い羽は黒く染まっていた。
「プティノ」
リーコスが膝をつくと鳥の身体を洞から取り出した。
「……リーコスか……久しいの」
弱々しく小さな瞳が開かれた。
「これは何があった」
「……分からぬ」
「お前でも分からないのか?」
「……我とて……全てを知る訳ではない」
「リーコスさん……プティノは助かる?」
ルドルフが不安そうにリーコスを見た。
「プティノ。実は私も少し前に突然聖力を失い、仔狼の姿になったのだ」
「……お前も?」
「その時はここにいるアルムスターの娘の魔力で元に戻ったのだが」
リーコスは視線をルドルフへ向けた。
「お前、このフリューアの力を借りてはいないのか」
「……試したが……無理だった」
プティノの言葉にルドルフは俯いた。
弱っていくプティノに何もしなかった訳ではない。
過去、代々加護を与えていたフリューアの血は聖鳥にとって相性が良く、ルドルフの魔力をプティノに注いでみたのだが、結果は出なかったのだ。
「そうか」
プティノを乗せたリーコスの手が光を帯びた。
光はプティノの身体を包み込み、やがて消えたが変化は見られなかった。
「……やはり私の力では無理だな」
ふう、と息を吐くとリーコスはルドルフを見た。
「ルドルフ。お前薬は作れるか」
「薬?」
「私が元の姿に戻ったのはカタリーナが作った薬草入りのパンを食べたからだ」
だからルドルフが薬を作ればプティノに効くかもしれない、そう思ったのだ。
「僕……薬を作ったことは……ありません」
「……ルドルフが使える魔法は火を操ること……薬は作れぬ」
プティノが言った。
「他に方法はないのでしょうか」
ヨハンが尋ねた。
「そもそもなぜ我らにこんなことが起きているのか分からぬからな」
「———薬というのは薬草に魔力を注ぐことで出来るのだな」
ハインツがカタリーナを見た。
「はい」
「ならばカタリーナがルドルフの魔力を薬草に注ぐことは出来るのか?」
「え……?」
「カタリーナ嬢の魔力を媒体にするということですか」
「ああ」
ヨハンの問いにハインツは頷いた。
「媒体……ええと……」
カタリーナは思案した。
「やったことはありませんが……出来るかもしれません」
薬草と普通の草の違いは魔力を持っているかどうかだ。
そして薬草の中にある魔力を引き出し、あるいは術者の魔力と共鳴させて薬へ変質させる。
それが魔法による薬の作り方だった。
それを応用すればルドルフの魔力を薬へ換える事は出来るかもしれない。
「本当ですか?!」
「では薬草を採りにいかないと……」
言いかけてヨハンは眉をひそめた。
「……このあたりでは採れないのでしたか」
「どんな薬草が必要ですか」
「なるべく魔力が高いものがあるといいのだけれど」
「この奥の泉に薬草が生えると前にプティノに聞きました」
ルドルフは森の奥を指さした。
「そこは泉の水も魔力を帯びているんです」
「……あそこは我の休息所。まだ枯れてはおらぬだろう」
ルドルフの言葉をプティノが継いだ。
「そこへ向かってみよう」
ルドルフの先導で一行は歩き始めた。
ルドルフが案内したのは、森の奥にある大きな木の根元だった。
大きく空いた洞の中に、毛布にくるまった一羽の鳥がうずくまっていた。
「これがプティノ……?」
手のひらに収まる程の小さな身体。
鮮やかな赤い羽は黒く染まっていた。
「プティノ」
リーコスが膝をつくと鳥の身体を洞から取り出した。
「……リーコスか……久しいの」
弱々しく小さな瞳が開かれた。
「これは何があった」
「……分からぬ」
「お前でも分からないのか?」
「……我とて……全てを知る訳ではない」
「リーコスさん……プティノは助かる?」
ルドルフが不安そうにリーコスを見た。
「プティノ。実は私も少し前に突然聖力を失い、仔狼の姿になったのだ」
「……お前も?」
「その時はここにいるアルムスターの娘の魔力で元に戻ったのだが」
リーコスは視線をルドルフへ向けた。
「お前、このフリューアの力を借りてはいないのか」
「……試したが……無理だった」
プティノの言葉にルドルフは俯いた。
弱っていくプティノに何もしなかった訳ではない。
過去、代々加護を与えていたフリューアの血は聖鳥にとって相性が良く、ルドルフの魔力をプティノに注いでみたのだが、結果は出なかったのだ。
「そうか」
プティノを乗せたリーコスの手が光を帯びた。
光はプティノの身体を包み込み、やがて消えたが変化は見られなかった。
「……やはり私の力では無理だな」
ふう、と息を吐くとリーコスはルドルフを見た。
「ルドルフ。お前薬は作れるか」
「薬?」
「私が元の姿に戻ったのはカタリーナが作った薬草入りのパンを食べたからだ」
だからルドルフが薬を作ればプティノに効くかもしれない、そう思ったのだ。
「僕……薬を作ったことは……ありません」
「……ルドルフが使える魔法は火を操ること……薬は作れぬ」
プティノが言った。
「他に方法はないのでしょうか」
ヨハンが尋ねた。
「そもそもなぜ我らにこんなことが起きているのか分からぬからな」
「———薬というのは薬草に魔力を注ぐことで出来るのだな」
ハインツがカタリーナを見た。
「はい」
「ならばカタリーナがルドルフの魔力を薬草に注ぐことは出来るのか?」
「え……?」
「カタリーナ嬢の魔力を媒体にするということですか」
「ああ」
ヨハンの問いにハインツは頷いた。
「媒体……ええと……」
カタリーナは思案した。
「やったことはありませんが……出来るかもしれません」
薬草と普通の草の違いは魔力を持っているかどうかだ。
そして薬草の中にある魔力を引き出し、あるいは術者の魔力と共鳴させて薬へ変質させる。
それが魔法による薬の作り方だった。
それを応用すればルドルフの魔力を薬へ換える事は出来るかもしれない。
「本当ですか?!」
「では薬草を採りにいかないと……」
言いかけてヨハンは眉をひそめた。
「……このあたりでは採れないのでしたか」
「どんな薬草が必要ですか」
「なるべく魔力が高いものがあるといいのだけれど」
「この奥の泉に薬草が生えると前にプティノに聞きました」
ルドルフは森の奥を指さした。
「そこは泉の水も魔力を帯びているんです」
「……あそこは我の休息所。まだ枯れてはおらぬだろう」
ルドルフの言葉をプティノが継いだ。
「そこへ向かってみよう」
ルドルフの先導で一行は歩き始めた。
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