10歳で記憶喪失になったけど、チート従魔たちと異世界ライフを楽しみます(リメイク版)

犬社護

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2章 家族との別離(今世)

24話 スキル《原点回帰》の真価

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私とユウキさんは、猫たちの溜まり場にやってきた。そこにはミケーネを始め、合計8匹の猫たちがいる。

「みんな、事前に伝えたとは思うけど、今からスキル《原点回帰》の練習をするから、私たちから離れていてね。悪ふざけで、私かそこにいるユウキさんにくっついてしまったら、最悪大怪我を負ってしまうから」

猫たちは私の本気度が伝わったのか、『みゃ!!(了解)』と言い一斉に距離をとる。ここにいる猫たちの平均年齢は4歳前後、もし副作用が猫たちに伝わったら、分子レベルにまで分解されちゃう子だっているわ。

『咲耶、遠距離通信で聞いてはいるけど大丈夫なの?』

三毛猫のミケーネだけが、私の近くにやって来る。

「ユウキさんの身に降り掛かっている呪いを解くには、原点回帰を使うしかない。一度使っているから、制御方法に関しては問題ないよ」

『あなたもお人好しね。まあ、頑張りなさい』

フリードは私と猫たちの関係性を知っているから、私の持つスキルとその危険性を既に教えてくれている。何も知らないまま原点回帰を使い、猫たちがそれを目撃したら、状況次第で恐怖心を生んでしまうからだ。

「ありがとう」

ミケーネが、私とユウキさんから離れていく。

う~ん、私の使い方次第で、ユウキさんが死んじゃう可能性もあるのに、猫たちは興味本位でドキドキしながら、私たちを円形に囲い、彼女を見ているわ。説明して危険性を知っているはずなのに、何故誰も怖がらないの? それだけ、私のことを信用してくれているのかな?

肝心のユウキさんは猫語を理解できないので、さっきから私と猫たちを交互に見ている。

「ユウキさん、今から私のスキル《原点回帰》を使い、あなたの中にある呪縛を無かったことにします」

「その意味を理解しているが、どうやって効果を発揮させるんだ?」

ユウキさんも解析で情報を見ているのなら、矛盾点に気づくよね。

《生物の時を巻き戻す》、それって使い方次第では、不老不死と似ているから、もし世間に露呈されたら、悪用しようと誰もが私を囲ってこようとするはずだ。もしかしたら、神様はその機能を制限させるため、【魂のない無生物限定】と設定したのかもしれない。

でも、その設定には抜け穴がある。
そこを通せば、成功するはずだよ。

「指定対象をユウキさんという個ではなく、頭・胴体・両手・両足とパーツ分けして使用すれば、きちんと機能するはずです」

盲点を突かれたのか、彼女は目を見開き驚く。

「そうか……グループに区分して使えば、無生物として認定されるかもしれない。そこは、盲点だったな」

理論上、これで上手くいくはずだ。
各パーツだけで見れば、それは生物と言えないのだから。 

「11歳で契約したと聞いているので、10歳まで時を戻します。ただ、副作用として、記憶や強さも10歳に戻る可能性があります。もし、記憶を引き継ぎたいのなら、意志を強く持ってください。根拠のないことですけど、そうすればスキルや魔法の一部くらいなら引き継げるかもしれません」

これが私の感じている懸念事項、時を巻き戻す以上、肉体的強さは物理的意味合いで、絶対に弱体化する。問題は、それまでに築いてきた経験と技術だ。ユウキさんはしばらく考え込んでいたけど、覚悟を決めたのか、私をじっと見つめてきた。

「わかった、やってくれ。奴らに利用されるのは、もう嫌なんだ。もし、失敗しても、咲耶を絶対に殺さないし、恨みもしない。君は、真剣に私のことを考えてくれている。こんな優しい子を殺せないよ」

彼女は、優しい目で私を見つめてくれている。出会った当初、何処か冷淡で醒めた表情だったけど、これが、本来の彼女の表情なのかな。

偽りなのかはわからないけど、私はその言葉を信じたい。
悠太、今から初めて人に原点回帰を使うね。
どうか、副作用が出ませんように!!

神様、倫理に背く行為かもしれませんが、私はユウキさんを救いたい。
どうか、この願いが叶いますように!!

「スキル発動、10歳の誕生日まで時を戻して!! お願い、発動して!!」

その瞬間、私はスキル《原点回帰》が発動したことを感覚的に理解した。


○○○


なに、なんなの、この感覚は!?
ガブリで一度体験しているけど、何か違う。

ユウキさんの身体全体が淡く光り輝くと、フワッと宙に浮いた。彼女はそれを受け入れ、目を閉じ、成すがままの状態になっている。

それは良いんだけど、そこから私の魔力が急激に消費されていく。遡る時間が約5年という膨大な時間のせいか、身体へ掛かる負荷が少しずつ上がっていくわ。でも、ガブリの時に実施した空間指定した時の負荷よりは、まだマシかもしれない。

この負荷なら、なんとか耐えられる。
絶対倒れちゃいけない。
私が気絶した時点で、スキルがキャンセルされてしまう。
彼女を助ける、助けるんだ!!
絶対に成功させる!!

『咲耶、頑張るのよ!!』
『そうだ、頑張れ』
『あの子の身体が少しずつ小さくなってる』
『何か変な黒い靄が外に出てる』

周囲の猫たちが、私に応援のエールを贈ってくれている。そのおかげで、目を閉じて必死に制御している私にも、状況が伝わってくる。もう少し、もう少しで終わる。ずっと目を閉じて魔力制御に集中していたら、急に感覚が軽くなり、魔力の流れが止まる。

この感覚は……そうか、スキルが停止したんだ。
魔力残量は……1213!?
半分以上の魔力を消費したの!?
と、とにかく、深呼吸して目を開けよう。

「成功したのかな?」

私はゆっくり目を開け、焦点が定まってくると、小さくなったユウキさんがいて、自分の身体を確認しているところだった。背丈は、私と同じくらいだ。

「凄い…凄いぞ!! あの感覚が…自分の頭に楔が打たれているかのような不愉快な感覚が消えてる!! わ!!」

あ、歩こうとした途端、前のめりに転倒したわ。背丈が小さくなったせいで、服がぶかぶかになってる。そのせいで、足を取られたんだ。

「だ、大丈夫ですか?」

ユウキさん、冷淡な目つきで表情も乏しかったのに、それが嘘のように表情も明るくなり、同時にテンションも高くなっている。

「ああ、問題ない。衣服に関しては、裾を畳めば調整できる。それよりも、副作用の方だが、私の記憶は維持されているが、ステータスレベルが1になってる」

あ、やっぱり、副作用が出ているんだ。肉体が10歳に戻っているのなら、もしかしたらとは思ったけど、そこは防げなかったか。でも、記憶が維持されているだけでも良かったよ。

「魔力量は?」
「小さくなる前の4200を維持している。これって、凄いことだぞ!!」

ふう、ようやくふらつき感も無くなり、いつもの状態に戻ってきた。彼女の言う通り、この力を使えば、若返ることができるし、それまで鍛えてきた魔力量が継続して使えるのだから、凄いの意味も理解できる。

「成功してよかったです」
「ありがとう、咲耶」

ユウキさんが私のもとへ来ようとした時、何処からか私たちを称賛するかのような拍手音が聞こえてきた。

「見事、実に見事だ」

狭い路地の方から、1人のスーツ服を纏う男性と、4人の騎士たちが、こっちに近づいてくる。一体、誰なの? ユウキさんを見ると、かなり驚愕しているから知り合いなのかな?

「あなたは!? どうして、ここにいるんだ!!」

「君からの定期報告を聞き、娘…いや元娘に興味を持った。スキル[原点回帰]がどの程度の力を有しているのか、私自らが確認に来たのだが、素晴らしい、実に素晴らしいよ。ようやく、フェルデナンド家に相応しいスキルを入手したようだな、リリアーナ」

優しげな笑みを浮かべ、私を見つめる35歳くらいの気品のある男性。
私を娘と呼んでいるから……まさか……この男性は今世の私の父親!?

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