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受け入れるもの、変わるもの
トレーニングプレイの成果 3
しおりを挟む厚木は、長い足を好きにしていた。
褒められて大人しくなった吉継の反応を楽しみながら。
「厚木さん」
「どうした」
「俺、これよかったですか」
「ああ、上出来だ」
そうか、変な下着じゃなくてもよかった。吉継が決めた下着でもよかった。だったら、厚木のいうことをもっと聞いてもいい。吉継は今まで味わったことのない、"命令をもらう"以外の充足感を感じていた。吉継のなかでは言葉にならないこの感覚をもう少し味わいたいと…。
「厚木さん、俺…」
今まで、なくても当たり前だと思っていたことだ。必要ないと…。それなのに、今は欲しくて仕方ない。
厚木を跨ぎ、ソファの背もたれに手をついて、吉継よりも小柄な体を閉じ込める。厚木は吉継のDomだ。
「なんだ」
「もっと褒めてください」
「…」
「俺は厚木さんのSubです…」
厚木の額に唇を寄せる。厚木がいつもしてくれる。吉継の好きなことだ。
「厚木さんも俺のDomなら出し惜しみしないでください」
「…ああ」
吉継は、視界が揺れたと思ったときにはソファに押し付けられていて、天井を見上げたと同時に、厚木というDomに見下されていていた。
「どうして欲しい」
厚木は吉継の喉を撫でて歯をたてる。背筋にぞくぞくとしたものが駆け上がる。厚木の力加減は絶妙で、痛いと気持ち良いのちょうど間のところで噛みつき、舌を這わせて吸い上げる。
”痛い”も”気持ち良い”もよくわからない吉継にはちょうどよかった。
「それは好きです」
「そうか」
どうして厚木は吉継のちょうどいいところがわかるのだろう。
「他にはどうして欲しい、吉継」
目を合わせる。厚木は吉継の視線を感じても逸らさず、強い視線でじいっと吉継を見ている。それも気持ちがいい。吉継には、ただの執着ではない、厚木の輪郭がやっとわかった気がした。手を伸ばせば吉継の腕にすっぽり入る厚木は細身だ。でも力は強い。そういうことをもっと知りたいと思った。
「厚木さんは、どういうのが好きですか…あの変な下着だけですか…他にも好きな下着はありますか、それよりも厚木さんは何が好きな人なんですか…」
厚木は吉継の質問攻めに笑うだけで答えない。
「俺はそれが知りたいです」
「ああ、そうだな」
今度は厚木が吉継の額にキスをする。しかしそれだけで何も答えてくれない。
やっぱり厚木は嫌なDomだとむくれる吉継を可笑しそうに見ているだけだ。
「焦るな、吉継」
「時間はたくさんある」
そう言って、吉継が好きなように触って、キスをしてくれた。
「厚木さん」
「なんだ」
「お弁当食べないと…」
「ああ」
ある程度の欲求が治まれば、周りを見る余裕も出てくるわけで。
そう言えば厚木はまだ仕事中で、夕飯もまだだと思い出した。
吉継は枕にしていた厚木の股から起き上がる。
厚木は返事をするが、一向に吉継から手を離さない。
「仕事しないと笠井さんに怒られます」
先日笠井に怒られたことが気になって仕方ない吉継だ。
「ふん、怒らせておけばいい、あいつはいつもああだ」
「…」
厚木の強心臓には引くしかなかった。
気づいてしまうと気になってしまうものだ。吉継の集中が切れたのを見て取り、厚木も諦めた。
「ほら、よこせ…」
「はい」
下着しか穿いていない大男が弁当とお茶を運ぶ。
厚木は、わざわざ指摘しない。面白がるように見ているだけだ。
吉継は下着しか穿いていないことなどすっかり忘れている。
「お前も座れ」
「はい」
言われるまま隣に座るが、弁当もお茶も受け取らない厚木に、なにかしたかと不安になったが、厚木の言葉にそんなことはどうでもよくなった。
「食べさせろ」
「は」
「食べさせろと言った」
「…」
以前も、手ずから食べさせたことはあったが…。
「厚木さん」
「早くしろ」
「これ好きですか」
「まあ、そうだな。早くしろ」
どうして厚木はそんなことを堂々と言えるのだろう。そこまで自信満々に言われては、吉継もよくわからない力に圧されるまま、大人しく包み紙を剥くしかなかった。
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