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小話系
月刊DomDom 特集: Subからの誘惑 あなたならどうする? 1
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※吉継くんに盆暮れ正月と誕生日とクリスマスとお中元とお歳暮が同時にきました。ラッキー☆
※暑さがすべての元凶です。
※夏の最後のお遊びネタ。
ーーーーーーーー
厚木は、実家に帰省していた。滞在予定時間3時間ほどの帰省だ。先に墓参りは済ませているので、両親に挨拶をして、仏壇に手を合わせるだけなので、正直30分で済む。しかし、両親から一緒に食事をしたいとせがまれ、断れなかった。秘書である笠井の、完璧なスケジュール管理が仇となってしまった。
家政婦の出迎えを断り、広いリビングとキッチンを仕切るカウンターの椅子に座り、ふと無造作に置かれた雑誌の見出しが目に止まった。
『美しき主従関係 あなたも私も気持ちよく
~愛することに禁忌はない~』
薄ら寒いタイトルだ。
誰がこんなものを読んでいるのか。母しかいないが?
「聡実くん、いらっしゃい」
「母さん」
フリルをあしらった明るい色のワンピースを着て、厚木に近づいてくるのは、母の心和だ。小柄で、ふわふわにセットされた髪型。さすがに10代には見えないが、厚木のような息子がいるとは思えない。笑顔はまるで少女のよう。
「来てくれて嬉しいわ、ありがとう」
ハグを求めるように両手を広げる心和に、応える。
「聡実、久しぶりだな」
「父さん」
心和の後ろについてきたのは、父の聡姫だ。顔は親子だとわかるくらいには似ているが、聡姫のほうが何倍も雰囲気は柔らかい。
「忙しくしているな」
「おかげさまで」
聡姫は、若い頃に、仕事が忙しくて母に寂しい思いをさせたことを気にしており、早くに社長の座を厚木に譲り、今は母と旅行に行ったり、のんびりスローライフを満喫している。おかげで寝る間もなく毎日忙しい。ほとんど寝なくても平気なのだが。
そこで頭に浮かんだのは、厚木のSubだ。陰気そうでヌボーっとした大男。全てにおいて鈍そうに見えるが、意外と繊細だ。放っておくと拗ねるどころの騒ぎではない。人生を止めてしまうつもりか?と聞きたくなるくらい仕事にも行かず、なにもかも捨てて自室で籠城する。手口が異星人だ。厚木とは分かり合えない。海外へ旅に出ないだけマシか。
厚木には子供がいない。この先も作る予定はない。生まれた時から性的指向は男性にしか向いていないからだ。今はあの陰気そうな大男だ。「はいどうぞ」と会社を譲る相手もおらず、大男のことを思えば溜め息が出そうになるが、この忙しさはしばらく現状維持だ。両親を羨ましいと思う気持ちがないと言えば嘘になるが、仕方がないことだった。
「棘があるなぁ、僕もできる限りのサポートはしてるつもりなのに…」
「感謝はしています」
「ねえ、聡実くんはその雑誌読んでみた?」
心和が私も話に加わりたいとばかりに話題を変える。
「いや…、これは母さんの本ですか?」
「そうなの。先月号だけど、ちょうど聡実くんに会うから、置いてたの。面白かったのよ」
「はあ…」
厚木のために残しておいたみたいに言っているが、頼んだ覚えはない。
「聡実くん、パートナーができたでしょ?私も聡姫くんもダイナミクス?は持っていないから、これでちょっとお勉強を…ね」
可愛く肩をすくめて、聡姫に同意を求める。頷いた聡姫は、心和には笑顔で返し、厚木には苦笑いだ。
『月刊DomDom』は、ダイナミクスからくる第二性と、もともと持っている第一性を大いに混同させた雑誌だ。読者の『性欲』をごちゃ混ぜにして、ある部分だけを狙って刺激してくる。だから特集もストレートに『Subからの誘惑』だ。Domの飢えに向かって、「こんなの好きでしよ?なんでもお見通しですよ」と言わんばかりの内容になっているに違いない。またしても大男が頭に浮かぶ。誘惑など駆け引きめいたことが一切できないSubだ。
この雑誌を参考に色気を見せろだ誘惑して見せろだと言っても、厚木のSubは、素直に受け入れるタイプではない。とりあえずの努力すらしないだろう。人には向き不向きがある。この雑誌は厚木にとって、無用の長物だった。
テキストとしてはあまりおすすめできないが、ここから知識を得たのなら、心和の中で、DomとSubのプレイがどんなものになっているのか…、考えないほうが平和だろう。
「ねえ、聡実くんのパートナーって、どんな人かしら?」
「どんなと言われても…」
陰気そうな大男。ちょっと頭の緩いSub。厚木を”ご主人様”と言って傅く機会を虎視眈々と狙っている。浮かぶ言葉はどれもこの場には適さない。
パートナーを公言していて、素直に言えないことは嘆かわしいことだ。
「あの事件のときの人だったな」
「はい」
「元気にしているのか」
「まあ、元気です。好きなようにしています」
「私達も会いたいわ。聡実くんが選んだ人だから、きっと素敵な人に違いないわ。ねぇ、聡姫くん」
「そうだね、お母様は会ったと言っていたよ。いい子だって」
「まあ、聡実くん、お義母様だけズルいわ」
「…」
食事の間も、母からパートナーはどんな人かと根掘り葉掘り聞かれたが、厚木は、「バレーボールが好きな普通の人」と当たり障りのないことを言ったきり、貝のように口を閉ざした。
うまく情報を引き出せなかった報復なのか、帰り際、心和からあの雑誌を押し付けられた厚木だった。
※暑さがすべての元凶です。
※夏の最後のお遊びネタ。
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厚木は、実家に帰省していた。滞在予定時間3時間ほどの帰省だ。先に墓参りは済ませているので、両親に挨拶をして、仏壇に手を合わせるだけなので、正直30分で済む。しかし、両親から一緒に食事をしたいとせがまれ、断れなかった。秘書である笠井の、完璧なスケジュール管理が仇となってしまった。
家政婦の出迎えを断り、広いリビングとキッチンを仕切るカウンターの椅子に座り、ふと無造作に置かれた雑誌の見出しが目に止まった。
『美しき主従関係 あなたも私も気持ちよく
~愛することに禁忌はない~』
薄ら寒いタイトルだ。
誰がこんなものを読んでいるのか。母しかいないが?
「聡実くん、いらっしゃい」
「母さん」
フリルをあしらった明るい色のワンピースを着て、厚木に近づいてくるのは、母の心和だ。小柄で、ふわふわにセットされた髪型。さすがに10代には見えないが、厚木のような息子がいるとは思えない。笑顔はまるで少女のよう。
「来てくれて嬉しいわ、ありがとう」
ハグを求めるように両手を広げる心和に、応える。
「聡実、久しぶりだな」
「父さん」
心和の後ろについてきたのは、父の聡姫だ。顔は親子だとわかるくらいには似ているが、聡姫のほうが何倍も雰囲気は柔らかい。
「忙しくしているな」
「おかげさまで」
聡姫は、若い頃に、仕事が忙しくて母に寂しい思いをさせたことを気にしており、早くに社長の座を厚木に譲り、今は母と旅行に行ったり、のんびりスローライフを満喫している。おかげで寝る間もなく毎日忙しい。ほとんど寝なくても平気なのだが。
そこで頭に浮かんだのは、厚木のSubだ。陰気そうでヌボーっとした大男。全てにおいて鈍そうに見えるが、意外と繊細だ。放っておくと拗ねるどころの騒ぎではない。人生を止めてしまうつもりか?と聞きたくなるくらい仕事にも行かず、なにもかも捨てて自室で籠城する。手口が異星人だ。厚木とは分かり合えない。海外へ旅に出ないだけマシか。
厚木には子供がいない。この先も作る予定はない。生まれた時から性的指向は男性にしか向いていないからだ。今はあの陰気そうな大男だ。「はいどうぞ」と会社を譲る相手もおらず、大男のことを思えば溜め息が出そうになるが、この忙しさはしばらく現状維持だ。両親を羨ましいと思う気持ちがないと言えば嘘になるが、仕方がないことだった。
「棘があるなぁ、僕もできる限りのサポートはしてるつもりなのに…」
「感謝はしています」
「ねえ、聡実くんはその雑誌読んでみた?」
心和が私も話に加わりたいとばかりに話題を変える。
「いや…、これは母さんの本ですか?」
「そうなの。先月号だけど、ちょうど聡実くんに会うから、置いてたの。面白かったのよ」
「はあ…」
厚木のために残しておいたみたいに言っているが、頼んだ覚えはない。
「聡実くん、パートナーができたでしょ?私も聡姫くんもダイナミクス?は持っていないから、これでちょっとお勉強を…ね」
可愛く肩をすくめて、聡姫に同意を求める。頷いた聡姫は、心和には笑顔で返し、厚木には苦笑いだ。
『月刊DomDom』は、ダイナミクスからくる第二性と、もともと持っている第一性を大いに混同させた雑誌だ。読者の『性欲』をごちゃ混ぜにして、ある部分だけを狙って刺激してくる。だから特集もストレートに『Subからの誘惑』だ。Domの飢えに向かって、「こんなの好きでしよ?なんでもお見通しですよ」と言わんばかりの内容になっているに違いない。またしても大男が頭に浮かぶ。誘惑など駆け引きめいたことが一切できないSubだ。
この雑誌を参考に色気を見せろだ誘惑して見せろだと言っても、厚木のSubは、素直に受け入れるタイプではない。とりあえずの努力すらしないだろう。人には向き不向きがある。この雑誌は厚木にとって、無用の長物だった。
テキストとしてはあまりおすすめできないが、ここから知識を得たのなら、心和の中で、DomとSubのプレイがどんなものになっているのか…、考えないほうが平和だろう。
「ねえ、聡実くんのパートナーって、どんな人かしら?」
「どんなと言われても…」
陰気そうな大男。ちょっと頭の緩いSub。厚木を”ご主人様”と言って傅く機会を虎視眈々と狙っている。浮かぶ言葉はどれもこの場には適さない。
パートナーを公言していて、素直に言えないことは嘆かわしいことだ。
「あの事件のときの人だったな」
「はい」
「元気にしているのか」
「まあ、元気です。好きなようにしています」
「私達も会いたいわ。聡実くんが選んだ人だから、きっと素敵な人に違いないわ。ねぇ、聡姫くん」
「そうだね、お母様は会ったと言っていたよ。いい子だって」
「まあ、聡実くん、お義母様だけズルいわ」
「…」
食事の間も、母からパートナーはどんな人かと根掘り葉掘り聞かれたが、厚木は、「バレーボールが好きな普通の人」と当たり障りのないことを言ったきり、貝のように口を閉ざした。
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