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「ま、待ってください! どうして、アルが? それに、おじいちゃん、おばあちゃんまで取り押さえるなんてひどいじゃないですか! 私は、知っていることはすべて話したのにぃ。ガニアン様、約束が違います!」
愛するアルルカンや、祖父母まで騎士に囲まれてしまった。それを見たヴィクトリアはドレスの裾を膝までたくし上げ走り出し、ガニアンの襟元をつかんだ。すると、ガニアンは少々煩わしそうに彼女の手をふりほどく。
「ヴィクトリア嬢、少し黙って様子を見ているんだ。私はね、かなり怒っているんだ。宰相たちだけでなく、騙されたとはいえ手紙が家から出てきたと嘘をついた君たちにも。おかげで、その手紙の書いた人物の特定が難しくなった。それに、何よりも、君があのタイミングで出てきたせいで、大事なリアの儀式がおじゃんになったからね。これを機に、不正をしている貴族をあぶり出し一網打尽にしようという王の言葉や、大事にしたくないと、何も知らなさそうな君やあの老人たちをかばうリアの制止がなければ、とっくに保護なしで外界に放り出している。前にも伝えたが、君たちがしたことは反乱以外の何物でもない」
「……それは、その。それは申し訳ないと思っています。でも、でも、アルが、アルが……」
「ぷ、ぷぅ、ぷぅ。ぷわ『ヴィクトリアさん、お兄さまからお話は伺っているわ。大事な人たちがあんな姿になって、居てもたってもいられない気持ちはわかる気がする。でも、もう少しだけ耐えて。ほら、あなたの愛する人は、じっと耐えているじゃない。おそらくは、あなたのためよ』」
半狂乱になりつつあるヴィクトリアに、ペンギンの姿のヴィクトリアが近づいた。ガニアンに降ろされた彼女の手を、その羽でそっと撫でる。
「わたしのため?」
「ぷぷぷーぷぅ『ええ。あなたやおじいさまがたを、無関係にするために、ご自分の家の不正を告発し、羞恥や屈辱を耐えているのだと思うわ。父親のいいなりでプライドの高いアルルカンが、そんなことをするなんて、生半可な気持ちではできない。だから、あなたが愛する人を信じて。お兄様の言葉はきつかったとは思うけれど、意地悪なお兄様だけど、嘘は言わないの。だから、もう少しだけここでアルルカンと同じように、あなたもじっと堪えてみせてくれるかしら?』」
ヴィクトリアは、ガニアンの言葉に反論できる言葉がなかった。ここに来た当初は、自分が王女だと信じていたし、騙されたのだから自分も被害者のようなものだとも思う。しかし、キングペンギンの姿のままの本物の王女であるヴィクトリアが、心配そうな顔でこちらを見ていることに気づき、力なく肩を落とした。
「はい、王女様。せっかく、彼が私を守ろうとしているのに台無しにするところでした。私、王女様に酷いことばっかりしたのに……。本当にありがとうございます」
「リアは世界一やさしいからな。ほかの国では、こうはいかないから。リアに感謝することだ」
「勿論です。私、リア様のために生涯を捧げます」
「ぷぇ『いや、捧げてくれなくていいから。あ、お父様が動かれるみたいよ』」
「皆、静まれ。ことの発端は、王女がキングペンギンの姿で生まれ落ちたことに起因する。娘をまがい物だと言うことも、一理あった。だが、私は初めにこういったはずだ。【おそらく、先祖返りというものだろう】と。リア、こちらにおいで」
「ぷあ『はい、お父様』」
よちよちと、自分たちが獣化したときよりも小さなキングペンギンの彼女が王の側に行く。雛のころはあれほど大きく大人よりもどっしりとした存在感いっぱいだったというのに、成体になった彼女の姿のなんと頼りないことか。換羽したばかりの艶やかで美しい羽に、首のオレンジの羽がネックレスのように光があたってとても美しく見えた。
「リア、さあ人化した姿を、皆に見せなさい」
王と王妃の間に立ち、彼らに促され少ない魔力を使って人化を始めた。光が彼女を包み、ぼんやりとした影がどんどん大きく形を変えていく。
この場にいる全員の視線にさらされる中、光が静まると、そこには、王たちには似ていないが王が言った通りの美しい女性が立っていたのである。
愛するアルルカンや、祖父母まで騎士に囲まれてしまった。それを見たヴィクトリアはドレスの裾を膝までたくし上げ走り出し、ガニアンの襟元をつかんだ。すると、ガニアンは少々煩わしそうに彼女の手をふりほどく。
「ヴィクトリア嬢、少し黙って様子を見ているんだ。私はね、かなり怒っているんだ。宰相たちだけでなく、騙されたとはいえ手紙が家から出てきたと嘘をついた君たちにも。おかげで、その手紙の書いた人物の特定が難しくなった。それに、何よりも、君があのタイミングで出てきたせいで、大事なリアの儀式がおじゃんになったからね。これを機に、不正をしている貴族をあぶり出し一網打尽にしようという王の言葉や、大事にしたくないと、何も知らなさそうな君やあの老人たちをかばうリアの制止がなければ、とっくに保護なしで外界に放り出している。前にも伝えたが、君たちがしたことは反乱以外の何物でもない」
「……それは、その。それは申し訳ないと思っています。でも、でも、アルが、アルが……」
「ぷ、ぷぅ、ぷぅ。ぷわ『ヴィクトリアさん、お兄さまからお話は伺っているわ。大事な人たちがあんな姿になって、居てもたってもいられない気持ちはわかる気がする。でも、もう少しだけ耐えて。ほら、あなたの愛する人は、じっと耐えているじゃない。おそらくは、あなたのためよ』」
半狂乱になりつつあるヴィクトリアに、ペンギンの姿のヴィクトリアが近づいた。ガニアンに降ろされた彼女の手を、その羽でそっと撫でる。
「わたしのため?」
「ぷぷぷーぷぅ『ええ。あなたやおじいさまがたを、無関係にするために、ご自分の家の不正を告発し、羞恥や屈辱を耐えているのだと思うわ。父親のいいなりでプライドの高いアルルカンが、そんなことをするなんて、生半可な気持ちではできない。だから、あなたが愛する人を信じて。お兄様の言葉はきつかったとは思うけれど、意地悪なお兄様だけど、嘘は言わないの。だから、もう少しだけここでアルルカンと同じように、あなたもじっと堪えてみせてくれるかしら?』」
ヴィクトリアは、ガニアンの言葉に反論できる言葉がなかった。ここに来た当初は、自分が王女だと信じていたし、騙されたのだから自分も被害者のようなものだとも思う。しかし、キングペンギンの姿のままの本物の王女であるヴィクトリアが、心配そうな顔でこちらを見ていることに気づき、力なく肩を落とした。
「はい、王女様。せっかく、彼が私を守ろうとしているのに台無しにするところでした。私、王女様に酷いことばっかりしたのに……。本当にありがとうございます」
「リアは世界一やさしいからな。ほかの国では、こうはいかないから。リアに感謝することだ」
「勿論です。私、リア様のために生涯を捧げます」
「ぷぇ『いや、捧げてくれなくていいから。あ、お父様が動かれるみたいよ』」
「皆、静まれ。ことの発端は、王女がキングペンギンの姿で生まれ落ちたことに起因する。娘をまがい物だと言うことも、一理あった。だが、私は初めにこういったはずだ。【おそらく、先祖返りというものだろう】と。リア、こちらにおいで」
「ぷあ『はい、お父様』」
よちよちと、自分たちが獣化したときよりも小さなキングペンギンの彼女が王の側に行く。雛のころはあれほど大きく大人よりもどっしりとした存在感いっぱいだったというのに、成体になった彼女の姿のなんと頼りないことか。換羽したばかりの艶やかで美しい羽に、首のオレンジの羽がネックレスのように光があたってとても美しく見えた。
「リア、さあ人化した姿を、皆に見せなさい」
王と王妃の間に立ち、彼らに促され少ない魔力を使って人化を始めた。光が彼女を包み、ぼんやりとした影がどんどん大きく形を変えていく。
この場にいる全員の視線にさらされる中、光が静まると、そこには、王たちには似ていないが王が言った通りの美しい女性が立っていたのである。
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