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気弱なハムチュターンのあまがみ② R15

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 ついに、俺の切っ先から運命の番に捧げるべき熱が出てしまうと思った。

  その時、

「ハムちゃん、元気になって良かったね~。ふふふ」

と、彼女がとても嬉しそうに言ってきた。

 ああ、元気だ。彼女のせいでとんでもなく元気になってしまった俺の象徴の奥からせりあがる衝動を解き放とうとした。

「チィ……!」

──ああ、受け止めてくれっ!

 ぞくぞくする。凄まじい快楽に腰が抜けてしまうほど。

「あ、そうだ。うーんと確かヒマワリの種があったはず~」

 彼女の指が、股間から鼻先まで密着して、まるで丸太のように産毛を撫でていた。仰向けで指を前足できゅっと握り、後ろ足で下から抱え込んでいた。

  撫でられながらこちらもスリスリ擦っていたのをぐっと切っ先を指に押し付けた瞬間、あれほどくっついていた指が離れて行ってしまう。

──待ってくれ……!

 あろうことか、机の上に降ろされてしまった。

「チ? チチッ! チ……チィ……」

 突然今までの甘いひと時に冷水をかけられたように、先ほどの股間の衝動が一瞬で治まってしまった気がする。いや、高ぶったまま完全に解き放たれずに、ピクピクしたまま放置されたのだ。

  先端からぬるりとしたものが勢いを無くしてたらりと垂れて下腹の毛を濡らした。

──そ、そんな……! ああ、お願いだ、もっと擦って……!

 俺は呆然とした。彼女に祈るように必死に懇願してしまうけれど、柔らかな指が戻って来る事はなかった。

 勢いよく彼女に付けるはずの物が俺の股間だけを濡らしてしまって気持ちが悪い。
  何よりも、俺の自慢のそこは半分ほど勃ったまま、ダラダラと雫を流し続けており、ぞくぞくするような感覚も解放されず残ったまま放置された。

「チィ~……」

 なんて酷い女の子なんだ。

 股間を遠慮なしに悪戯された上、こんな意地悪な扱いをされた事なんてない。
 故郷で15になるまでの間、俺はモテていた。世界にきっといるはずの番のために大事にとっておいたそこを、初対面の見知らぬ女の子に弄ばれて、しかも、中途半端に可愛がられたのである。

 番のための大事なここなのに、と思いつつ、なぜか、そんな風に俺を翻弄する彼女のやることなすこと全てを受け入れてしまう。
 彼女にならどんな扱いをされてもいいとさえ思った。



※※※※



 俺は、混乱したまま、解放しきれなかった股間のむず痒いような気持ち悪さをどうすることも出来ずに、旅立つ前に散々聞かされていた両親の言葉を思い出していた。

『番が現れたらすぐわかるわよ』
『どうやって?』
『まず匂いだな。とてもいい香りがしてずっと嗅ぎたくなる』
『やだわ、あなたったら。子供の前なのに。クスクス』
 
 父が母の首筋に鼻をあててスンスン吸うと、母が照れる。両親は同族内ですぐに見つかった番同士なのだ。年がら年中ラブラブで、俺には沢山の兄弟姉妹がいる。多産系だからな。
 南にある小さな国だが、ハムチュターン族は多い。食糧は、ハムチュターンの姿になってしまえば困る事がない。肥沃な大地に食料は際限なく実るから一年を通して豊穣が続く。
 やや熱いが気候は安定していて大きな災害もない住みやすい土地である。

『あとは、番の全てを無条件で受け入れられる。誓って、嫌な事をされたなど一度もないが、例え意地悪されても、何をされても許す──とも違うな。どんな事も自然と受け入れて望む通りにしたくなるんだ』
『まあ、わたくしだってあなたの全てを受け入れていますわよ?』
『わかっているよ、私の愛しい番……』
『あん。くすぐったいですわ』

 俺は、両親の怪しい雰囲気を察して、一緒に聞いていた弟妹たちを連れて部屋を出ていったのである。


※※※※



──ひょっとして、君が俺の番なのか? きっと、そうだ。やっと、やっと見つけた! 俺の番、俺の唯一、俺の愛しい人……!



「チ? チチ」


 後ろ足で立ち上がり、彼女に抱き着きたくなった。後ろ足をピンっと伸ばす。

──俺と抱き締め合おう……! …………今は小さかった……。そうだ、抱っこしてくれ!

  そして、上を向けた鼻先よりも下にしか行かないけれど、短い両腕を目一杯伸ばして彼女に差し出した。

「ん? ハムちゃんどうしたのー? あ、ヒマワリの種がわかったのかな? はいどうぞ」

 俺は、番が戸棚から出した肉厚でふっくらしたヒマワリの種を、伸ばした両手に持たされた。ちょうど、尖った先っぽが口の下にあったから、条件反射でアーンとかじる。

──ん? 滅茶苦茶うまぁ~い! ああ、これはひょっとして、憧れの、愛する人にするという給餌求愛行動というやつか? なんてことだ。俺と同じように彼女は人間だというのに、俺を番だと認識してくれているのか?

 俺は、今は完全に番だと彼女を認識している。彼女が手づからくれたヒマワリの種に彼女の香りがついていて、それが最高のスパイスになった。

 夢中で食べた。かじってごくんと少しだけ飲み込むと、残りは大切にしようと頬袋に収納する。

──俺の番は、なんて可愛くていじらしいんだ。
  きっと股間のあれこれも、照れ屋で純粋で素直で積極的な所もある彼女の決死のアプローチだったに違いない。いや、ひょっとしたら、俺の股間なんて知らない無垢で無知な子なのかも。
  うん、きっとそうだ。そうに違いない。
  だからあんな風にされたんだろうな。健気な彼女が俺への深い愛を示したのだたから、充分以上に応えるしかないだろう。でも、上手く応えられるかなぁ?

「ふふふ、私たち仲良しね!」
「チッ!」

 愛しい人が、俺がここにいるだけで、そんな風に笑ってくれるから俺も嬉しくなってしょうがない。

 長い間探し求めた番をジーっと見る。やはりぼんやりしてしまって顔が分からない。

──髪は、たぶん黒かな? 瞳の色は何色なんだ? 魔力が戻ったらすぐにでも人化して君をしっかり見て抱きしめたい……! で、でも、いきなりそんな事をして嫌われたらどうしよう……。でも、大丈夫だよな? な?

 すでに彼女に夢中だ。世界一の番を得た俺はご機嫌で、再び差し出された指先をペロペロ舐めまくったのである。





 
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