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気弱なハムチュターンのラブラブ初デート③

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 俺たちは、そのあと仲良く沢山の人が行き交う商店街にやってきた。大きな道路の左右に、思い思いの店が連なっていて、歩きながら興味深く観察する。

 俺の住む南の国とちがって、食料だけでなく雑貨なども随分違う。この地方で暮らしていた番によく似合いそうなアクセサリーを置いている店をチェックした。人化したらなんでも買ってあげよう。
 それに、南の国の装飾品だって君だけのためにあつらえたかのように似合うに違いない。俺の国の衣装に身を包んだ番の姿を想像してニマニマしていた。

──結婚式はどんな風にする? この間参加したご令嬢の所のような教会式がいい? 俺の国でパレードする? それとも二人と近しい身内だけでどこかの国でするのもいいなあ?

 その時、中年男性の明るい声が二人の仲を切り裂くかごとく、ラブラブの雰囲気を台無しにした。

「らっしゃーい。そこの可愛いお姉さん、カルヤランピーラッカはどうだい? 出来立てだよ~」
「わぁ。美味しそう~。一つ貰っていい?」
「はい、毎度あり! お、そいつはハムチュターン族かい?」

 ライ麦粉で作った生地をしっかり形成した後、そのくぼみでミルク粥を包み、こんがり焼いたものを番は一つ購入した。
  俺は、大切な俺だけの番に求愛給餌行動をした見知らぬおっさんに威嚇する。

「ジー! ジー!」

  ところが、おっさんは俺の必死の攻撃に対して笑った。


「ははは、やきもちか?  おっちゃんには愛する妻がいるし、この子には売り物を売っただけだ。別に君から彼女を奪おうとするつもりはないから、そんなに怒るなよ~。まあ、べっぴんさんだから、にいちゃんは心配がつきねえだろうな!  そうだ、小さすぎて売り物にならないクルミがあるんだ。食べるか?」

 俺は、おっさんのその言葉を聞き、この世で一番美しい俺の番に本当に一目ぼれをしていないか少し怪しむけれど、差し出されたクルミを有難くちょうだいした。

「チ、チチ!」

「なあに、大した事はしてねえさ」

 俺の礼を理解してくれただろうおっさんが、にかっと笑った。すると、番が、きょとんとしておっさんに訊ねたのである。

「あの、おじさん? ハムチュターン族って?  この子の言葉がわかるんですか?」

「なんだ? お姉ちゃん、知らずに連れていたのか? こんだけ懐いているし、お姉ちゃんに声をかけた男にヤキモチやいて威嚇してくるんだ。獣人のハムチュターン族だろう? しかも、その様子だと番だと思うぞ? 俺にも言葉はわっかんねぇが、そいつが何を言いたがってるのか想像つくな。滅茶苦茶愛されているじゃねーか! ははは、お幸せにな!」

「は……? 何言って……」

「チ……チゥ……」

──そんな、こんな人通りの多い所で相思相愛のお似合いカップルだと大声で言うなんて……! ちょっと恥ずかしいじゃないか!  けど、おっさん、わかってるな!

 俺は、クルミを頬張りながら、おっさんがニヤニヤと俺たち恋人のラブラブっぷりを褒めたたえるように世界一だなんて言うから照れてしまう。(※おっさんは、誓って上記の言葉しか言っていません)


 ハムチュターン族という獣人だという事は、ロマンチックに二人きりの場所で自ら明かしたかった。
  他人とはいえ、こうしてバレてしまっては仕方がない。
 俺は、番の手のひらに頬ずりをしながら、全身で甘えた。

「チチッ! チ……チィ……」

 彼女は、俺の正体を知らずして、瀕死の俺を助けた上、一緒に風呂に入ってくれた。さらに、給餌求愛行動以外にも、純粋無垢だけどちょっぴりエロくって、色々なコトをすでに積極的にしてくれたんだ。

  得難い、俺だけの愛し愛される最高の妻の手のひらは史上最高の場所。

 番の表情は、やはり近眼のせいでよく見えない。きっと、俺の正体を知って感激で止まってしまったのだろう。その気持ちはよくわかる。

  俺も、君が番だとわかった時もそうだったから。

──愛しているよ、ハニー……





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