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第56話 知らない知らない

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 何かいけないことでも言ってしまったのだろうか?

 首を少し傾けていると……何故か、緑斗リョクト様に強く両方の肩を掴まれた。


「……ミラ」

「? はい?」

「宴とか……知らないの?」

「は、はい。どのようなものでしょう?」


 もう一度、同じような言葉を繰り返すと……緑斗様は、お口を大きく開けてしまわれた。


「え、えぇ~? どんちゃん騒ぎだよ!? いっぱいご飯食べて酒も飲んだりするあれだよ!!?」

「サケ……とは?」

「そこもぉ~!?」

「……ミラの場合、しゃぁないわ」


 緑斗様が騒がれていらっしゃる、話の内容はよくわからないが……とても楽しそうなことなのは、何と無くわかってはきた。


「……ご飯、ですか?」


 そう言えば……私は大精霊に進化出来た。

 であれば……あの召喚していた、ガラクタやゴミとかは自分でも食べられるのだろうか?

 姿なども……皆様のように、いくつもあるのだろうか?

 気になり出して、何故かうずうずしてしまう。


「おや? 言葉は知らずとも……リョクらの言い方で、少しわかったえ?」

「はい、凰華オウカ様」


 その言葉に頷くと、うんうん言われていた緑斗様のご機嫌が戻られ、私にむぎゅっと抱きついて来られた。


「そうだよ~!! いっぱい、ご飯食べて……いっぱいお酒飲んで、わいわい騒ぐ楽しいこと~~!! それに、ミラのあのゴミとか出してくれれば最高~~!!」

「そ、そうですか」


 ふんわりしたお胸が、ぎゅーぎゅーと当たる感じが……とてもドキドキしてしまう。珀瑛ハクエイ様に抱きしめていただいた時よりは、穏やかな胸の高鳴りではあるけれど。


「まあ、とりあえず。ミラは今日もたくさんお仕事してくれたし……ひと休みしよう。皆ここでお昼寝しよう!!」


 龍羽リュウハ様がそうおっしゃると……私はまた首を傾げてしまった。


「おひるね?」

「ちょっとだけ寝ることだよー?」

「寝る……ですか?」

「ミラは大精霊になったばっかりだし、ここで落ち着くのもひとつの手段なんだー」

「……なるほど」


 お布団はないけれど……良い香りのする花の上で。

 龍羽様は遠慮はいらないから……と、私に寝るように指示をされると。

 とても良い香りに包まれ……私はすぐに、眠たくなってしまった。


「お休み、良い夢を」


 龍羽様から、優しく頭を撫でてくださると……私は完全に眠ってしまった。

 だけど……すぐに目が覚めてしまったと思ったら。

 とても暗くて……けど、奥にはひとつの光がある不思議な場所に立っていたのだった。


「……珀瑛様? 皆様?」


 どこだろう……ここは。

 どこなのか、不安になってはきたけれど……何故か、あの光に進まなくてはいけない気持ちはあったので。私は前に足を運ぶことにした。
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