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ソンドールの満足
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リーリルハとソンドールの婚約パーティーは、シューリンヒ侯爵家にて付き合いのある家門を中心に開かれた。
ジュルガーとの破談後なので、家格からすると小規模のものだが、貴族家との社交経験が少ないコイント子爵家にとっては都合のよいものであり、また病み上がりで足元が覚束ないパートルム公爵モリーズにとっても、気のおけない人々の集まりに顔を出すのはよいリハビリとなった。
招待客たちはコイント子爵令息ソンドールと紹介されたとき、あまりにもモリーズとメイガーに瓜二つのソンドールに息を呑んだが、メイガーがジュルガーと双子なのだと説明してまわり、皆の頭に浮かんでいたモリーズの庶子ではないかという疑問はすぐに霧散した。
「そうか、昔のことだから忘れていたが、そういえば生まれたときは双子だったな」
モリーズと親しかったトマー侯爵アインスが、うんうんと納得したように頷いている。
「しかし、なにやら知らぬ間にいろいろと変わっていて驚いたぞ!何一つ漏らすことなく、突然のこれは水くさいぞモリーズ」
「ああ、すまないな。とても人に話せるようなことではなかったのだ」
「事情を聞けばそれはわかるのだが、言ってくれたら手を貸してやれたことがあったと思うぞ。次になにかあったら、ちゃんと相談しろよ」
そう諭されている父を見たソンドールは、醜聞に飲まれていても手を差し伸べる友がいる父には、自分の知らない良いところがあるのだろうと思った。
「おお、君がソンドールくんか!モリーズそっくりになったな。私は赤子のときに会ったことがあるぞ。覚えてないだろうがな」
ガハハと笑うアインスに既視感を覚えた。
騎士団に多いタイプだ。
「今は騎士団にいると聞いたぞ、その年で正騎士なのに、結婚したら辞めてしまうのは惜しいな。ジルスに引き留められなかったかね?」
「ジ、ジルス様!」
騎士を目指すすべての少年たちの憧れ、騎士団長である。
「私も若い頃、騎士団にいたんだよ。兄が亡くなって侯爵を継ぐことになったが、ジルスは同期なんだ」
ソンドールの目の色が、一気に変わる。
「本当はモリーズも騎士になりたかったんだ。しかし公爵家ではそれを許さなくてな。ソンドールくんが騎士になったことをきっと自慢に思ってるだろう」
「え?いやそんなことは」
「この状況では表立っては言えまいて。でも心中では思ってる。間違いない。家門の危機を救うだけでなく、父の夢をも叶えているとは、たいしたものだ。シューリンヒとパートルムの後ろ盾があれば十分とは思うが、何かあれば騎士団の先輩として、モリーズの親友として、私も喜んで力を貸すと約束しよう。
何かあれば訪ねてくれよ」
正直なところソンドールは、パートルム公爵家の生まれでよかったのはリーリルハとの出会いだけだと思っていたが、アインスに目をかけられ、自分の血筋に価値を見出すことが出来た気がした。
父に自慢に思われたとしても何ともないと思っていたが、それを騎士団の先輩に言われたことで胸が輝いたのだ。
「ソンドール様、何か良いことがあった?」
その様子にリーリルハは敏感に気づく。
婚約者は自分をよく見ていてくれているのだ。
以前、同僚が婚約者に世話を焼かれているのを見て鬱陶しそうだと思っていたのが嘘のように、リーリルハの視線に見守られていることが幸せに思える。
半年後には自分の家となるシューリンヒ侯爵を見渡したソンドールは、体中にビリビリするほど力が漲るのを感じていた。
ジュルガーとの破談後なので、家格からすると小規模のものだが、貴族家との社交経験が少ないコイント子爵家にとっては都合のよいものであり、また病み上がりで足元が覚束ないパートルム公爵モリーズにとっても、気のおけない人々の集まりに顔を出すのはよいリハビリとなった。
招待客たちはコイント子爵令息ソンドールと紹介されたとき、あまりにもモリーズとメイガーに瓜二つのソンドールに息を呑んだが、メイガーがジュルガーと双子なのだと説明してまわり、皆の頭に浮かんでいたモリーズの庶子ではないかという疑問はすぐに霧散した。
「そうか、昔のことだから忘れていたが、そういえば生まれたときは双子だったな」
モリーズと親しかったトマー侯爵アインスが、うんうんと納得したように頷いている。
「しかし、なにやら知らぬ間にいろいろと変わっていて驚いたぞ!何一つ漏らすことなく、突然のこれは水くさいぞモリーズ」
「ああ、すまないな。とても人に話せるようなことではなかったのだ」
「事情を聞けばそれはわかるのだが、言ってくれたら手を貸してやれたことがあったと思うぞ。次になにかあったら、ちゃんと相談しろよ」
そう諭されている父を見たソンドールは、醜聞に飲まれていても手を差し伸べる友がいる父には、自分の知らない良いところがあるのだろうと思った。
「おお、君がソンドールくんか!モリーズそっくりになったな。私は赤子のときに会ったことがあるぞ。覚えてないだろうがな」
ガハハと笑うアインスに既視感を覚えた。
騎士団に多いタイプだ。
「今は騎士団にいると聞いたぞ、その年で正騎士なのに、結婚したら辞めてしまうのは惜しいな。ジルスに引き留められなかったかね?」
「ジ、ジルス様!」
騎士を目指すすべての少年たちの憧れ、騎士団長である。
「私も若い頃、騎士団にいたんだよ。兄が亡くなって侯爵を継ぐことになったが、ジルスは同期なんだ」
ソンドールの目の色が、一気に変わる。
「本当はモリーズも騎士になりたかったんだ。しかし公爵家ではそれを許さなくてな。ソンドールくんが騎士になったことをきっと自慢に思ってるだろう」
「え?いやそんなことは」
「この状況では表立っては言えまいて。でも心中では思ってる。間違いない。家門の危機を救うだけでなく、父の夢をも叶えているとは、たいしたものだ。シューリンヒとパートルムの後ろ盾があれば十分とは思うが、何かあれば騎士団の先輩として、モリーズの親友として、私も喜んで力を貸すと約束しよう。
何かあれば訪ねてくれよ」
正直なところソンドールは、パートルム公爵家の生まれでよかったのはリーリルハとの出会いだけだと思っていたが、アインスに目をかけられ、自分の血筋に価値を見出すことが出来た気がした。
父に自慢に思われたとしても何ともないと思っていたが、それを騎士団の先輩に言われたことで胸が輝いたのだ。
「ソンドール様、何か良いことがあった?」
その様子にリーリルハは敏感に気づく。
婚約者は自分をよく見ていてくれているのだ。
以前、同僚が婚約者に世話を焼かれているのを見て鬱陶しそうだと思っていたのが嘘のように、リーリルハの視線に見守られていることが幸せに思える。
半年後には自分の家となるシューリンヒ侯爵を見渡したソンドールは、体中にビリビリするほど力が漲るのを感じていた。
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