57 / 74
メルディ国編
53 要らないヨ!?②
しおりを挟む
「リジー様?」
突然呼び掛けられてハッとする。
え? あれ? 時間止めてたんじゃないの?
『リジーが『要らない』とか考えている間に解除されました』
何度も言うけどさぁ……そういう事はちゃんと教えてよ。あたしの不審人物度が留まる事を知らなくなっちゃう……。
『頑張って下さい』
あんた、絶対に確信犯だよねっ!? 分かってて遣ってるでしょ!?
「……リジー様?」
う~……覚えてろ。
あたしは頭の中を切り替え、こちらを不思議そうに見ているハイディアに改めて視線をやった。
「あたしの魔力量がどの程度か、知ってるの?」
「はい。カジスやルチタンで起こった事件の事は、カジスのモンド隊長やルチタンのサージット隊長より聞いております。リジー様は、特レベルですよね?」
あー……モンド隊長やサージット隊長には、あたしが特レベルの魔力保持者だって直に言っちゃったんだった……そりゃ伝わるか……。
……ん? そう言えばあの時……ああ、そうか。マルの説明を聞いて漸く分かった。モンド隊長達だけじゃなくネスも驚いたのは、あたしが『特レベル』――つまり、人類の最高魔力量を更新しちゃったからだったのか……。
そりゃあたしが『自分の常識に当て嵌めてあたしの魔法を見ても理解出来ないから』って言ったら、全員一斉に頷く訳だ。しかも返答が『我等の理解が及ばない力』だったしね……。
なんかもう、色々いろいろと納得できてしまい、あたしは溜め息を吐いた後、冷めてしまったお茶を飲む。はー……ちょっと落ち着いた。
「知ってて『Sランク』なんて提示してきたって事は、取り込む気満々って事か」
「そうなりますね」
しれっと悪びれもせずに微笑むハイディア。グーリアスはいまだに挙動不審。
……このギルド、本当に大丈夫か?
まあいい。
冒険者ギルドに登録しておかないと、妙な勧誘が要らない方面から発生しそうな気がするから、登録するのは絶対として。ランクについてはしっかり取引(?)して、あたしに有利な条件を引き出してから登録した方が得だよね。
なにより、その『Sランク特典』が、他の国の冒険者ギルドにも適用されるのか、グーリアスやハイディアの言葉から窺い知る事ができない。メルディ国限定の特典じゃ意味ないから、はっきりさせて、他の国でも適用されるようにしないと。
んー……モンド隊長に話を聞いているなら、あたしが冒険者登録しようと思った経緯も絶対に聞いているだろうから、そこを押しまくってみますか。マル創作話、予想外な所で大活躍だな。
「最初に言った通り、あたしは指名依頼や強制依頼の様な面倒そうなモノを受けたくないの。だから、Sランクなんてモノを無理矢理押し付けようとか考えるなら、あたしとしてはギルド登録なんてしなくてもいいんだよね」
「では、先程グーリアスが言いました様に、指名依頼や強制依頼、試験等を受けなくていいならSランクを受け取って頂けますか?」
「あたしさぁ……確かに、急に『世界を回ろうと思った』けど、別に身分証明書なんてなくたって問題ないんだよね。絶対に町とかに寄らなければいけないって訳じゃないから」
「それですと、食べ物等の調達が難しいのではないですか?」
「特に困らないよ? あたし、『昔から人と関わるのが嫌でずっと山暮らしをしていた』から、食料くらいなら山でいくらでも調達できる」
まあ実際は、技工神や資源神、農商工神等がトキの中に補充してくれるんだけどね……。
神の力の無駄遣いな気もするけど、助かっているのは事実だ。特に、大食らいが3人――いや4人、いるし……うん、本気でありがたいと思うよ。ただルベル曰く、毎日3食摂取する様になったから、1回当たりの食べる量は減ったそうだ。……あれで? あたしの3~10倍くらいは軽く食べてるのに?
「し、しかし! 世界を回るのでしたら、国境の砦や町に寄らない等、出来る訳――」
「え? 出来るよ? あたし、山暮らししていたから、山を越えるくらい平気だよ? しかも、一緒にいるのは神獣。必要なら空を飛べばいい」
ルベルもブラウもフォスも空を飛べる。ネスには一緒に乗ってもらえば問題なし。
なにより、山越えでの国境越えは不可能とか言われている為、山近くの国境の町や村には関所の様な物はない――マルに確認済み――から、身分証がなくても移動は簡単だ。実際、あたしってば山越えしちゃったから、問題ないのは実証済みだ。
……ちょっと邪道ではあるけどね。
『ちょっと?』「そ、それは……」
マルの疑問にハイディアの戸惑った声が重なる。
優先すべきはハイディアだろう。マルはちょっと引っ込んでて。
いい具合に狼狽えてる様だから、ちょっとだけ希望をあげよう。
「ただ、条件を飲んでくれるなら、そっちの提案に乗ってもいいよ」
「ほ、本当ですか!?」
「うん、本当」
「「どんな条件っすか!!?」でしょうか!?」
ここまできて漸くグーリアスが復活したようだ。ハイディアと共に食い気味に尋ねてくる。
「まず、ひとつ目。指名依頼や強制依頼、試験等を受けなくていい。これはメルディ国だけではなく、世界中の冒険者ギルドで適用する事」
「っ!?」
「そ、それは……」
グーリアスとハイディアが言葉に詰まる。
あ、やっぱり。あの特典が適用されるのはメルディ国だけだったんだ。
「……他のギルド長と相談してみます」
お。決意したって顔でハイディアがあたしを見ている。これなら何とかなりそうかな?
グーリアスは……また挙動不審。
ギルド長がこの調子で、本当に、このギルドは大丈夫なんだろうか……。
「ふたつ目。あたしの行動に干渉しない。どこに居るのか報告しろとか冗談じゃないから」
「それは大丈夫っす!」
「はい。冒険者の行動は全て自己責任です。その為、どこに行こうと、何を遣ろうと自由です。ただし、問題が発生した時は、己の責任で解決して頂きます」
「貴族とかが、勝手な事を言って言いがかりや難癖付けてきた時は?」
「それが本当に言いがかりならば、ギルド側が対処します」
じゃあ、これは大丈夫そう、かな?
あの小物デブとか、全身犯罪者の証だらけな国王とか、面倒そうな奴等の事、丸投げできるっぽい? 多分だけど。
いざって時は、あれは完全に言いがかりであると、モンド隊長辺りに証言して貰おう。
「みっつ目。召喚獣である神獣達もあたしと同じランクで冒険者ギルドに登録して」
「はっ!?」
「えっ!?」
またしてもビックリされた。
『普通、召喚獣を冒険者として登録する者はいません』
ん? じゃあ、召喚獣って一緒に居る時、どうしてるの?
『冒険者ギルドの証明書に召喚獣の事を記載して終わりです』
……人化して、意思疎通できるのに?
『人化し、意思疎通ができる召喚獣は数が少ないですが、それでも記載のみです』
……。
「あたしとしては、召喚獣であろうと其々個性を持つ存在なんだから、生きた1人の存在として見て欲しいんだよね」
思わずポロッと本音が零れる。
その言葉に、グーリアスとハイディアの目がますます見開かれた。
……って、おい。
「ルベル! ブラウ! フォス! なんで態々席を立って抱き付いてくる!?」
「召喚者が貴女で良かったです」
横から抱き付いてきているフォスの言葉に、正面から抱き付いてきているルベルと、背後から抱き付いてきているブラウが無言で頷く。
「何がいいんだか知らないけど、こらっ! くすぐったいから離れろっ!!」
其々の体をグイッと押す。みんな丈夫だから、この程度で怪我をする心配はない。お蔭で手加減せずにぐいぐい押せる。
なんとか離れてくれてホッと息を吐くと、横に座るフォスが満面の笑みを浮かべた。
「リジー。他の神獣とも召喚獣契約しませんか? 我としては、技工神様の神獣がお勧めです」
「お、それなら、オレは闘神様の神獣がお勧めだな!」
「いやいやいや! これ以上神獣は要らないよ!?」
妙なフラグ立てるの、やめいっ!!
突然呼び掛けられてハッとする。
え? あれ? 時間止めてたんじゃないの?
『リジーが『要らない』とか考えている間に解除されました』
何度も言うけどさぁ……そういう事はちゃんと教えてよ。あたしの不審人物度が留まる事を知らなくなっちゃう……。
『頑張って下さい』
あんた、絶対に確信犯だよねっ!? 分かってて遣ってるでしょ!?
「……リジー様?」
う~……覚えてろ。
あたしは頭の中を切り替え、こちらを不思議そうに見ているハイディアに改めて視線をやった。
「あたしの魔力量がどの程度か、知ってるの?」
「はい。カジスやルチタンで起こった事件の事は、カジスのモンド隊長やルチタンのサージット隊長より聞いております。リジー様は、特レベルですよね?」
あー……モンド隊長やサージット隊長には、あたしが特レベルの魔力保持者だって直に言っちゃったんだった……そりゃ伝わるか……。
……ん? そう言えばあの時……ああ、そうか。マルの説明を聞いて漸く分かった。モンド隊長達だけじゃなくネスも驚いたのは、あたしが『特レベル』――つまり、人類の最高魔力量を更新しちゃったからだったのか……。
そりゃあたしが『自分の常識に当て嵌めてあたしの魔法を見ても理解出来ないから』って言ったら、全員一斉に頷く訳だ。しかも返答が『我等の理解が及ばない力』だったしね……。
なんかもう、色々いろいろと納得できてしまい、あたしは溜め息を吐いた後、冷めてしまったお茶を飲む。はー……ちょっと落ち着いた。
「知ってて『Sランク』なんて提示してきたって事は、取り込む気満々って事か」
「そうなりますね」
しれっと悪びれもせずに微笑むハイディア。グーリアスはいまだに挙動不審。
……このギルド、本当に大丈夫か?
まあいい。
冒険者ギルドに登録しておかないと、妙な勧誘が要らない方面から発生しそうな気がするから、登録するのは絶対として。ランクについてはしっかり取引(?)して、あたしに有利な条件を引き出してから登録した方が得だよね。
なにより、その『Sランク特典』が、他の国の冒険者ギルドにも適用されるのか、グーリアスやハイディアの言葉から窺い知る事ができない。メルディ国限定の特典じゃ意味ないから、はっきりさせて、他の国でも適用されるようにしないと。
んー……モンド隊長に話を聞いているなら、あたしが冒険者登録しようと思った経緯も絶対に聞いているだろうから、そこを押しまくってみますか。マル創作話、予想外な所で大活躍だな。
「最初に言った通り、あたしは指名依頼や強制依頼の様な面倒そうなモノを受けたくないの。だから、Sランクなんてモノを無理矢理押し付けようとか考えるなら、あたしとしてはギルド登録なんてしなくてもいいんだよね」
「では、先程グーリアスが言いました様に、指名依頼や強制依頼、試験等を受けなくていいならSランクを受け取って頂けますか?」
「あたしさぁ……確かに、急に『世界を回ろうと思った』けど、別に身分証明書なんてなくたって問題ないんだよね。絶対に町とかに寄らなければいけないって訳じゃないから」
「それですと、食べ物等の調達が難しいのではないですか?」
「特に困らないよ? あたし、『昔から人と関わるのが嫌でずっと山暮らしをしていた』から、食料くらいなら山でいくらでも調達できる」
まあ実際は、技工神や資源神、農商工神等がトキの中に補充してくれるんだけどね……。
神の力の無駄遣いな気もするけど、助かっているのは事実だ。特に、大食らいが3人――いや4人、いるし……うん、本気でありがたいと思うよ。ただルベル曰く、毎日3食摂取する様になったから、1回当たりの食べる量は減ったそうだ。……あれで? あたしの3~10倍くらいは軽く食べてるのに?
「し、しかし! 世界を回るのでしたら、国境の砦や町に寄らない等、出来る訳――」
「え? 出来るよ? あたし、山暮らししていたから、山を越えるくらい平気だよ? しかも、一緒にいるのは神獣。必要なら空を飛べばいい」
ルベルもブラウもフォスも空を飛べる。ネスには一緒に乗ってもらえば問題なし。
なにより、山越えでの国境越えは不可能とか言われている為、山近くの国境の町や村には関所の様な物はない――マルに確認済み――から、身分証がなくても移動は簡単だ。実際、あたしってば山越えしちゃったから、問題ないのは実証済みだ。
……ちょっと邪道ではあるけどね。
『ちょっと?』「そ、それは……」
マルの疑問にハイディアの戸惑った声が重なる。
優先すべきはハイディアだろう。マルはちょっと引っ込んでて。
いい具合に狼狽えてる様だから、ちょっとだけ希望をあげよう。
「ただ、条件を飲んでくれるなら、そっちの提案に乗ってもいいよ」
「ほ、本当ですか!?」
「うん、本当」
「「どんな条件っすか!!?」でしょうか!?」
ここまできて漸くグーリアスが復活したようだ。ハイディアと共に食い気味に尋ねてくる。
「まず、ひとつ目。指名依頼や強制依頼、試験等を受けなくていい。これはメルディ国だけではなく、世界中の冒険者ギルドで適用する事」
「っ!?」
「そ、それは……」
グーリアスとハイディアが言葉に詰まる。
あ、やっぱり。あの特典が適用されるのはメルディ国だけだったんだ。
「……他のギルド長と相談してみます」
お。決意したって顔でハイディアがあたしを見ている。これなら何とかなりそうかな?
グーリアスは……また挙動不審。
ギルド長がこの調子で、本当に、このギルドは大丈夫なんだろうか……。
「ふたつ目。あたしの行動に干渉しない。どこに居るのか報告しろとか冗談じゃないから」
「それは大丈夫っす!」
「はい。冒険者の行動は全て自己責任です。その為、どこに行こうと、何を遣ろうと自由です。ただし、問題が発生した時は、己の責任で解決して頂きます」
「貴族とかが、勝手な事を言って言いがかりや難癖付けてきた時は?」
「それが本当に言いがかりならば、ギルド側が対処します」
じゃあ、これは大丈夫そう、かな?
あの小物デブとか、全身犯罪者の証だらけな国王とか、面倒そうな奴等の事、丸投げできるっぽい? 多分だけど。
いざって時は、あれは完全に言いがかりであると、モンド隊長辺りに証言して貰おう。
「みっつ目。召喚獣である神獣達もあたしと同じランクで冒険者ギルドに登録して」
「はっ!?」
「えっ!?」
またしてもビックリされた。
『普通、召喚獣を冒険者として登録する者はいません』
ん? じゃあ、召喚獣って一緒に居る時、どうしてるの?
『冒険者ギルドの証明書に召喚獣の事を記載して終わりです』
……人化して、意思疎通できるのに?
『人化し、意思疎通ができる召喚獣は数が少ないですが、それでも記載のみです』
……。
「あたしとしては、召喚獣であろうと其々個性を持つ存在なんだから、生きた1人の存在として見て欲しいんだよね」
思わずポロッと本音が零れる。
その言葉に、グーリアスとハイディアの目がますます見開かれた。
……って、おい。
「ルベル! ブラウ! フォス! なんで態々席を立って抱き付いてくる!?」
「召喚者が貴女で良かったです」
横から抱き付いてきているフォスの言葉に、正面から抱き付いてきているルベルと、背後から抱き付いてきているブラウが無言で頷く。
「何がいいんだか知らないけど、こらっ! くすぐったいから離れろっ!!」
其々の体をグイッと押す。みんな丈夫だから、この程度で怪我をする心配はない。お蔭で手加減せずにぐいぐい押せる。
なんとか離れてくれてホッと息を吐くと、横に座るフォスが満面の笑みを浮かべた。
「リジー。他の神獣とも召喚獣契約しませんか? 我としては、技工神様の神獣がお勧めです」
「お、それなら、オレは闘神様の神獣がお勧めだな!」
「いやいやいや! これ以上神獣は要らないよ!?」
妙なフラグ立てるの、やめいっ!!
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
2,114
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる