浅い法華経 改

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浅い法華経⑥

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しかしお経と一言に言っても沢山ある。
それらは釈迦の生きている間や亡くなる少し前、亡くなった後とまちまちの時期に書かれているから内容もまちまちで、どれが本当か分からない。何より自分が広めるはめになった法華経は、褒め言葉ばかりで何が言いたいのかさっぱり分からない。
ただ、複数のお経と、法華経本体に「法華経を保つ者と法華経を侮る者には災難が降りかかる」と記されていることは分かった。日蓮はこれがどうも気になった。
侮る者への災難は分かる。でも守る者にまで災難が降りかかるってどういうことだ?
さっそく比叡山の延暦寺に聞いてみた。
「それは法華経が最高で唯一正しいお経だから、魔はそれを嫌い、法華経を保つ者に害を加えて彼らに法華経を放棄させようとするんだ。だが法華経を保つ者は必ず神仏に助けられると、その法華経にちゃんと書いてあるんだ。魔が邪魔をするということは、言い換えれそれだけ信仰が本物だと、魔が恐れているとも言えるな。神仏は魔に負けず法華経を保った者に、多大な功徳をもたらすようだ」
と、答えが返って来た。どうも日蓮、そこを飛ばしていたようだ。
「そういや、褒め言葉ばかりだからウンザリしてたしなぁ。その辺、いい加減に読んでたかもなぁ」
ということは今、自分が嫌な目に遭ってるのもそれかな?と思うと、ということは自分は法華経に認められてるのかな?とまた思い、日蓮はなんとなく嬉しくなった。
では侮る者への災いとはなんだろう?
日蓮はまた延暦寺に聞いた。
「まず飢饉、それから戦乱、そして疫病があるな。これを三災という。またこれとは別に七難と言って、やはり疫病、それから他国の侵略、国内の反乱、星々の異常、日蝕や月蝕、大風に大雨、逆に干ばつがある」
ということは戦乱に明け暮れる今の世の中そのものだと日蓮は思った。
たしかにここのところ気候が荒れ、飢饉や疫病も起こっている。なるほどこんなバチが当たるんだと感心していた日蓮は、ふと「他国の侵略?」と、まだ起こっていない災難のことに気を止めた。
今度は外国が攻めて来るのか?
日本は大丈夫なの?
「あの、やはり法華経じゃないとダメなんですかね?日本の仏教って」
日蓮は守ろうが侮ろうがが災難がやって来る法華経を自分が選んでしまったことが、だんだん怖くなってきた。今度は世界大戦だ。
「まぁよく分からんが、あんたは法華経を広めてしまったし、あんたについて来る人も増えたしなぁ。責任上、法華経しかないんじゃない?」
「はぁ」
あー、どうしよう。日蓮の頭の中にはもう、外国の船団が現れていた。
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