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第一章 リリカとウィリアム
1:リリカ
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「他の男と結婚したほうが幸せになれると思う」
16歳のある日のこと。
この物語の主人公であるリリカは、4歳年上のウィリアムから、突然こんなことを言われる。
初恋でずっと心の支えだったウィリアムのこの発言により、リリカは奈落の底に突き落とされたのだった……ーーー
時は、リリカ出生時に遡る。
「オギャーーーー!!!!!!」
「おめでとうございます!元気な女の子です!」
初雪の降った12月31日、リリカはレッドフィールド伯爵家の第一子として、2800gでこの世に誕生した。
「あれっ? もう一人います! ……出て来ました! ……あれっ? 啼かない……」
「……おぎゃー……おぎゃー……」
「ああ、よかった! 二人目も女の子です! 小さいわね……温めましょう!!!」
約30分後に産まれた二卵性双生児の妹であるキャサリンは、2200gという小ささで、弱々しい第一啼泣をあげてこの世に誕生した。
0歳の頃。
乳をよく飲み、よく寝て、よく泣き、リリカはすくすくと育った。
一方でキャサリンは、吸啜力が弱く乳を中々うまく飲めず、体重の増えが悪かった。泣き声もリリカよりもずっと小さく、首座りやお座りなどの身体的発達も全て、リリカよりもゆっくりだった。
3歳の頃。
天真爛漫に育っているリリカは、いつも屋敷内を走り回っていた。使用人も一苦労なほど目が離せずに、お転婆に育っている。
「あ、おかーしゃま!」
母のローズを見付けたリリカは、そばに駆け寄り足に抱きつく。
「ああ、リリカ。今日も元気そうね」
「いちご!」
リリカは、ローズが持っている大好物の苺を見つけて目を輝かせる。
「これはキャサリンのよ! あなたは何でもよく食べるのだから良いでしょう!」
そう言い放ち、リリカをおいてローズは去って行く。
ポカンと口を開けてローズを見ていたリリカは、見えなくなると急に泣き始めた。
苺を食べられなかったからなのか、母に冷たくされたからなのか、はたまたその両方か……
リリカは大声で泣いた。
母に聞こえて欲しかったからなのかもしれない。
母に戻って来て、優しくして欲しかったからかもしれない。
しかしローズが戻って来ることは、決してなかった。
これが、リリカの最も古い記憶である。
8歳の頃。
相変わらずすくすくと育っているリリカに対し、キャサリンは病弱なままであった。
身長はリリカの方が10㎝程高く、体重はリリカのほうが15㎏程多い。
二人が双子であることを知らない人が見れば、数歳差の姉妹に見えるだろう。
「リリカ、その苺はキャサリンにあげなさい。最近風邪がすっきりと治らずに辛そうだから。あなたはご飯をしっかり食べられてそれだけ身体も大きいのだから、必要がないでしょう?」
リリカは、今日のおやつにと貰った皿の中の5粒の苺を見つめる。
「……でも、とても楽しみにしていたのです。一粒だけ私も食べてはいけませんか?」
「"でも"ですって!? そのような口答えをする子に育てた覚えはありません! 妹が苦しんでいるというのに薄情な子ね! あなたは黙って、お母様の言う通りにしていたら良いのよ!」
ローズは、リリカから苺を取り上げて去って行ってしまう。
(……また)
リリカはそう思いながらも、母の姿が見えなくなった後も暫くその場に立ち尽くした。
このようなことは、決して珍しいことではない。
しかし何回繰り返されても、慣れることはなかった……ーーー
※2024.2.8から改稿作業のため、2話以降を非公開にしています。
読み途中の方がいらっしゃったら、申し訳ありません。
もしよろしければ、再公開後に読んでいただけたら嬉しいです^ ^
16歳のある日のこと。
この物語の主人公であるリリカは、4歳年上のウィリアムから、突然こんなことを言われる。
初恋でずっと心の支えだったウィリアムのこの発言により、リリカは奈落の底に突き落とされたのだった……ーーー
時は、リリカ出生時に遡る。
「オギャーーーー!!!!!!」
「おめでとうございます!元気な女の子です!」
初雪の降った12月31日、リリカはレッドフィールド伯爵家の第一子として、2800gでこの世に誕生した。
「あれっ? もう一人います! ……出て来ました! ……あれっ? 啼かない……」
「……おぎゃー……おぎゃー……」
「ああ、よかった! 二人目も女の子です! 小さいわね……温めましょう!!!」
約30分後に産まれた二卵性双生児の妹であるキャサリンは、2200gという小ささで、弱々しい第一啼泣をあげてこの世に誕生した。
0歳の頃。
乳をよく飲み、よく寝て、よく泣き、リリカはすくすくと育った。
一方でキャサリンは、吸啜力が弱く乳を中々うまく飲めず、体重の増えが悪かった。泣き声もリリカよりもずっと小さく、首座りやお座りなどの身体的発達も全て、リリカよりもゆっくりだった。
3歳の頃。
天真爛漫に育っているリリカは、いつも屋敷内を走り回っていた。使用人も一苦労なほど目が離せずに、お転婆に育っている。
「あ、おかーしゃま!」
母のローズを見付けたリリカは、そばに駆け寄り足に抱きつく。
「ああ、リリカ。今日も元気そうね」
「いちご!」
リリカは、ローズが持っている大好物の苺を見つけて目を輝かせる。
「これはキャサリンのよ! あなたは何でもよく食べるのだから良いでしょう!」
そう言い放ち、リリカをおいてローズは去って行く。
ポカンと口を開けてローズを見ていたリリカは、見えなくなると急に泣き始めた。
苺を食べられなかったからなのか、母に冷たくされたからなのか、はたまたその両方か……
リリカは大声で泣いた。
母に聞こえて欲しかったからなのかもしれない。
母に戻って来て、優しくして欲しかったからかもしれない。
しかしローズが戻って来ることは、決してなかった。
これが、リリカの最も古い記憶である。
8歳の頃。
相変わらずすくすくと育っているリリカに対し、キャサリンは病弱なままであった。
身長はリリカの方が10㎝程高く、体重はリリカのほうが15㎏程多い。
二人が双子であることを知らない人が見れば、数歳差の姉妹に見えるだろう。
「リリカ、その苺はキャサリンにあげなさい。最近風邪がすっきりと治らずに辛そうだから。あなたはご飯をしっかり食べられてそれだけ身体も大きいのだから、必要がないでしょう?」
リリカは、今日のおやつにと貰った皿の中の5粒の苺を見つめる。
「……でも、とても楽しみにしていたのです。一粒だけ私も食べてはいけませんか?」
「"でも"ですって!? そのような口答えをする子に育てた覚えはありません! 妹が苦しんでいるというのに薄情な子ね! あなたは黙って、お母様の言う通りにしていたら良いのよ!」
ローズは、リリカから苺を取り上げて去って行ってしまう。
(……また)
リリカはそう思いながらも、母の姿が見えなくなった後も暫くその場に立ち尽くした。
このようなことは、決して珍しいことではない。
しかし何回繰り返されても、慣れることはなかった……ーーー
※2024.2.8から改稿作業のため、2話以降を非公開にしています。
読み途中の方がいらっしゃったら、申し訳ありません。
もしよろしければ、再公開後に読んでいただけたら嬉しいです^ ^
応援ありがとうございます!
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