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47:再会

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「……マリー……」

部屋の中にはマスト一人だった。
マストはポカンと驚いた表情をしている。

"ドンドンドン!!!"

「旦那様! 大丈夫ですか!???」

マリーがキッチリと内側から鍵を閉めたドアの外は、大人数が集まっているようで騒がしい。

「旦那様、下がっていて下さい! ドアを蹴り破ります!!!」

その声を聞いたマリーは咄嗟にドアから飛び避けた。

「やめろ! 大丈夫だ! 皆、通常業務へ戻れ!」

「えっ、しかし侵入者が…」

「私の知り合いだから大丈夫だ」

マストは部屋の隅で小さくなっているマリーをジッと見ながら言う。

「わ、わかりました……。何かあればすぐにお声がけ下さい……」

渋々と言う様子で、ドアの前から人の気配が消えて行く。

「マリー?」

マリーは固まって動けなかった。
罪人のようなことをするのも、そのような扱いを受けるのも初めてのことで、動悸がおさまらない。

「マリー……母上から、自分が居ては邪魔になるからと自ら出て行ったと聞いた」

マリーは収まらない動悸に、マストからの発言に驚くも言葉が出ない。

マストはジッと狼狽えているマリーを見る。

「……マリーが子供達を置いて黙って出て行くとは思えないため、私は全く信じてはいなかったがな」

マストはポットのお茶を新しいティーカップに淹れ、マリーに差し出した。

「これを飲んで落ち着け。寝つきが良いようにと、執事が先ほどハーブティーを淹れてくれたものだ」

マリーは変わらず隅っこでそれを受け取ると、そっと一口飲んだ。
水分が全身に行き渡るのを感じる。
優しい味のハーブティーが、心も少しほぐしていく。

「……私が去ってから、何か変わったことはありましたか?」

マリーはやっとの思いで声を出す。
マリーの声を聞いたマストは、フッと微笑んだ。

「子ども達は特に変わりない。マリーはすぐに戻ると言ってある」

両手でティーカップを包み込み、座り込んで上目遣いにマストを見るマリーは、酷く幼く見えた。

「……汚れているな。一体何があった?」

マリーが言葉に詰まっていると、マストは続ける。

「先に屋敷内のことを片付けて、それから迎えに行こうと思っていた。他の屋敷で働くと言って出たと母上から聞いたが、調べればすぐに見つかると思っていた。……少なくとも母上は居場所を知っていると確信していたしな」

何も言わない……いや言葉の出ないマリーを見ながら、マストは眉を顰める。

「母上に連れ出されたのだろう? すぐに迎えに行くことが出来ずに申し訳なかった」

マストの言葉にマリーは、暖かさを感じた。

「そうですか……」

言いたいことは山ほどあるのに何からどう伝えれば良いか分からずに、マリーはそのようなありきたりな返事になってしまう。

(落ち着くのよ、マリー! やっとここまで来たのだから! いつ邪魔が入るかもわからないわ。冷静に、冷静に……)

マリーは"ふうっ"と大きく一つため息をついた。
そしてバッと勢いよく立ち上がり、マストの目前1mの距離まで歩き寄る。
マリーは"ジッ"といつもの真顔であるマストの顔を真正面から見た途端、"ドキッ"と胸が高鳴るのを感じた。
思わぬ胸の鼓動に狼狽えそうになってしまう。

(マリー、頑張るのよ……!)

マリーは胸元に手をやり自分を鼓舞しようとしたが、胸元のペンダントがないことを思い出した。

(フリージア、リリー……!!!)

マリーは"ギュッ"と奥歯を噛み締め拳を握った。
そして思い切って声を上げる。


「旦那様、どうか話を聞いてください! 私は旦那様のことを恋慕っております!!!」

















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