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「――! あぁ、勿論だ」


 セリュシスは目を細めて笑うと、彼女の顔に自分のそれを近付け、そっと唇を重ねた。
 彼女の唇はとても柔らかく、温かかった。喜びと嬉しさが、彼の心にしんしんと降り積もり埋まっていく。

(好きな女とのキスが、こんなにも気持ち良くて嬉しいものだったなんてな……)

 気分が向上していることを悟られないように冷静を装い、彼女の頬に手を添え、もう片方は触り心地の良い髪を撫でながら、少しずつキスを深くしていく。
 舌を忍び込ませ、彼女の舌を見つけ出し絡ませると、彼女も恐る恐るといった感じで答えてくれる。その初々しさが無性に可愛らしく愛らしかった。
 ずっと口付けをしていたかったが、彼女がトントンと胸を叩いてきたので、不思議に思い少しだけ唇をずらすと、目の前で熱い息が大きく吐かれた。

「……もしかして、息……止めてたのか?」
「……あ、は、えっと……。こ、呼吸の仕方が分からなくて……」

 はぁはぁと息をして涙目になっているだろう彼女に、セリュシスは思い切り吹き出してしまう。

「す、すみません、初心者で……。そ……その、他にも、色々とご迷惑を掛けてしまうやもしれませんが……」
「いや気にすんな。寧ろ可愛くて堪んねぇから」
「えっ」

 女に対し、こんな風に思ったことは一度も無かった。美人だ、キレイだと思ったことはあるが、ただそれだけで、こんなにも心苦しいほど愛しいと思える女は、今まで誰一人いなかった。


「わりぃな、俺も余裕がねぇかも。けど極力優しくすっから。怖かったりイヤになったら言ってくれ」


 セリュシスはそう彼女の耳元で囁くと、毛布の上に静かに彼女を押し倒した。そして着ている服を脱がせ、全裸にする。彼女は全く抵抗しなかった。
 所々にある痣が痛々しかったが、それを上回るほど月の光に照らされた彼女の裸体はとても美しくて、セリュシスは知らずに大きく生唾を呑み込んでいた。
 彼女の身体がフルリと震えたのに気が付くと、セリュシスはすぐに行動を開始した。

「大丈夫だ。すぐに熱くなってくるから――」

 彼女の頬にある赤い痣に唇を寄せると、そこをペロリと何度も舐める。まるで、痣がすぐに消えてなくなるおまじないのように。

「ん、くすぐったい……。大丈夫ですよ、もう痛くないから……」

(『もう』、か。じゃあさっきまでは――)

 セリュシスの中でグツグツと腸が煮えたぎってきたが、何とか抑える。今は彼女を気持ち良くさせることに集中しよう――
 頬から顔を離すと首筋に唇を這わし、小さな赤い痕を付けていく。いちいちピクピクと動く身体が愛しい。
 鎖骨にも赤い痕を散りばせ、適度に膨らんだ胸にある桃色の乳首を口に含むと、彼女の身体が一層跳ねた。
 赤ん坊のように乳首を強く吸い、口の中で転がしながら、もう片方の胸は乳首ごと手と指で弄くると、彼女の口から何度も腰に響く嬌声が洩れる。

 声を出しても、ここは階段を結構降りた先の地下で、場所も一番奥だ。問題ないだろう。
 そう判断し、セリュシスはもっと彼女の声が聞きたくて、胸の攻めを激しくさせる。
 二本の指で乳首をグリュグリュと擦り、もう片方の乳首は舐め回し何度も甘咬みすると、彼女は甲高く叫び、その身体がビクビクッと大きく痙攣した。

(イッたみたいだな……)

 セリュシスはそっと笑い、彼女の顔を覗き見る。
 顔をフルフルと振っていた所為か、前髪があちこちに飛び跳ね彼女の表情が見えるようになっており、キレイに輝くアメジスト色の瞳を潤ませ、扇情的な表情で自分を見てくる彼女に、下半身がズクンと大きく疼いたのを感じた。

「……気持ち、良かったか? イヤだったらすぐに言えよ」

 ボンヤリとしている彼女に、セリュシスは訊いてみた。今までずっと痛い思いをしてきた彼女に、少しでも辛い思いはさせたくない。
 彼女はすぐに顔を赤くさせると、恥ずかしさの余りか両手で顔を覆った。

「き、気持ち良過ぎてどうにかなりそうでした……。リュス、経験豊富ですね……?」

 その返答にホッとし、最後の質問は、彼女に嘘をつきたくないので正直に答える。

「……まぁ、それなりにはな」

 そう言った後、この回答はマズかったか、と後悔する。
 以前、キッパリと断ったのに恋人気取りの女がいて、「アタシ以外の他の女を抱くなんて最低! この性欲男!」と散々文句を言われたことがあったのだ。

(コイツも不満を言うか……? いや、コイツになら何を言われても俺は――)


「ひ、避妊と性の病気だけは気を付けて下さいねっ?」
「…………へ?」


 予想外の返答がきて、セリュシスは思わず間抜けな声を出してしまった。



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