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「……大丈夫か、セレン……?」
「はい……。その、とても気持ち良かったです……。ありがとうございます……リュス。私、今日のこと、一生忘れません。胸に深く刻み付けておきます……」
「はは、大袈裟だな。そりゃ良かった……。俺も、その……すっげー良かった。今までで一番サイコーだった……」
「ふふっ。それは良かったです」
「……何か、身体に変化はあるか……?」

 セリュシスの問い掛けに、セレンは胸に手を当てると小さく微笑んだ。


「私の中の“聖女の力”は、完全に失くなりました。――もう、回復魔法は使えないと思います」
「……! そうか……。じゃあ、出られるんだな……ここから」
「……はい。本当にありがとうございます、リュス」


 セリュシスは、微笑むセレンを強く抱きしめる。


「なぁ、ここを出たら俺と一緒に暮らさないか? ……いや、俺と一緒に暮らして欲しい。ダメか……?」
「……! ダメなわけないじゃないですか。すごく……すごく嬉しいですよ……リュス……。ありがとう……。二人で暮らしたら、毎日がとても楽しそうです……」


 そう言ってポロポロと綺麗な涙を零すセレンを嬉し涙と察し、更に深くセリュシスは彼女を抱きしめる。

「今度はこんな牢獄じゃなくて、暖かい部屋のベッドの上で……しような?」
「……ふふっ。それは……今も幸せだけど、もっと幸せな気持ちになれそうですね。――リュス、今日はもう……戻って下さい。あまり遅くなると、怪しまれると思いますから……」
「あぁ……分かった」

 セリュシスはまだ彼女といたかったが、確かにいつもより時間が遅くなっているので、名残惜しそうに彼女を離す。
 自身を抜き、彼女に服を着させると立ち上がる。そして、視界の隅で冷めてしまった晩ご飯があることに気が付いた。


「すまねぇ。晩飯、すっかり冷めちまった……」
「ふふっ。そんなの、全然気にしないで下さい。冷めても美味しいから大丈夫ですよ。――さぁ、行って下さい。本当にありがとうございます、リュス。大好きですよ。ずっと、ずっと――」
「セレン――」


 泣き笑いを浮かべる彼女を、堪らずセリュシスはグイッと引き寄せると抱きしめ、唇を重ねる。
 思うがままにお互いが貪り合う激しい口付けをし、どちらともなくそっと唇を離した。
 上目遣いで、潤んだ紫の瞳をこちらに向けてジッと見てくるセレンを、セリュシスは無性に愛おしく感じ強く抱きしめる。

「……ちっ、離したくねぇな……」
「ふふっ。私も離れたくないですが、もう本当に行かないと……ね?」
「……分かった。明日の朝、迎えに行くから」
「ありがとうございます、リュス……」

 セリュシスはゆっくりとセレンを離すと、牢獄から出て、鍵を閉める。

 この作業も、今日までだ――


「毛布沢山掛けて、暖かくして寝ろよ」
「ふふっ、ありがとうございます。おやすみなさい、リュス」
「あぁ、おやすみ。――俺も、大好きだ……愛してる、セレン」
「……っ! ありがとう――」


 言った直後に一気に気恥ずかしくなったセリュシスは、足早にそこを離れ、大股で階段を駆け上がっていく。


「リュス、どうか幸せになって。私のことなんか、スッパリ忘れて下さいね――」


 ポツリと呟かれたセレンの言葉を聞かないまま――



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