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111 ニコラスは時間にうるさいのだ

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「して、ラムシェーブル殿はどうお考えで?」

「このままウィルフィルド殿がこちらへ向かって進出してくるとわが国が併呑されるのですが?」

「……」

「ディエス殿、このトロッコ技術、わが国へ輸出してくださらぬかな?」

「……それはセイリオスに相談してください」

「間髪入れずに「ご期待に沿えず申し訳ございません」と言われたわ」

「……なら、俺から言う事はありません……」

 おかしい。アイリス領の執務室にまた人が溢れている。

「おやおや……馬車止めを増設せねばなりませんなぁ」

 執事のニコラスがずらっと並ぶ豪華な馬車群を見つめて髭を撫でている。

「ささ、お付きの方はこちらでお休みください。冷たい茶を用意してますよ」

「すみません~」

 何故か各国からの要人がウチにやってくる。

「皇帝陛下にお目通りを願うには許可が下りるまで時間がかかりますからなあ」

「……それはそうだが」

「その点この屋敷ならばそれほど待たされずに妙案を頂ける」

「そんな事はありません」

 ラムの眉間に皺が寄っている……怒ってる怒ってる……。

「いえいえ!我々を早く追い返したくてラムシェーブル殿は素晴らしい案を授けてくださる!」

「そう思っているなら早急に帰っていただきたい!」

 激おこである。いつぞやカジノでボロ負けしてパンツしか残されていない隣国の王子を保護して国まで送り届けたのが運の尽きだった。

「いやぁ~久しぶりに側妃様にお目にかかったけれど、相変わらず美人だったなあ。でもお隣にしっかり前皇帝がいて睨まれてしまいましたよ~」

 なんて国に帰って吹聴したらしい。それでこのアイリス領に俺達が住んでいる事がバレた……隠してた訳じゃないんだけど面倒くさい案件を抱えた人達が来るようになってしまった。なんでだよ!

「ディエス様、我が正妃の機嫌が悪く……」

「帝国7番通りの菓子店「アージェ」の「ふわふわ7色プリン特級品」を今すぐ予約すれば問題解決です」

「おお!妙案」

「ディエス様、側妃達が喧嘩ばかり……」
 
「2名減らせば良いです!」

 何故か知らないが俺には女性関係の困り事ばかり意見を求められる。俺だってわかんねーし!

 こんな状況でもラムがブチ切れないのには理由がある。

 からーん、ころーんと耳障りの良い鐘をニコラスが振って時間を教えてくれる。

「さあ、もうすぐで終了のお時間です。それより新規のお仕事は一切受け付けません」

「な、なんだと?!もうそんな時間か!この案件だけでも今日中に!!」

「却下でございます。これ以降は王宮へお持ちくださいませ」

 どんなに偉い人だろうと、時間厳守のニコラスは受け付けない。俺なんかだと、思わず残業してしまいそうだがニコラスガードは鉄壁だった。

「さて、夕刻でございます。皆様、お帰りくださいませ」

 そしてピシャリ!と門扉を閉めてしまう。そしてよっぽどの事がない限り、明日の10時まで門が開く事はない。

 俺達は仕事はしているが10時~17時でお昼休憩もぴったり1時間、15時にはお茶の時間も30分きっちり取られている。しかも土日は完全休日のとてもホワイトな働き方をしているのだった。

「5.5時間労働ぉ」

「十分過ぎる」

 ぴったり17時には執務室から退出しないとニコラスに怒られるのだ。ニコラス怖いよー!

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